結局ゲキドルはどういう作品だったのかーゲキドルの魅力とラストについて【ネタバレ有】

 ゲキドル、やばいですわ。

 ということで、こちらの記事では今期放映されていたアニメ「ゲキドル」について、どうしても私の中で何かアウトプットしとかないと、胸の中のもやもやが収まらなさそうだったので、簡単な考察を書こうかと思います。
 ゲキドルのネタバレを多大に含む内容となっておりますので、ご了承ください。

1.結局ゲキドルは面白い作品だったのか。

 まず、この作品は万人受けする作品ではありません。そのため、万人にお勧めできるものではありません。
 その注釈をしたうえで、私はこの作品を「めちゃくちゃ面白かった」と思います。ゲキドルにどうしようもなく惹きこまれました。友人に「やべーやつが出てくるアニメがある」と教えられて、試しに見てみたらドはまりしました。放映当時は毎週のゲキドルが楽しみすぎて、dアニメストアの更新とほぼ同時に視聴してますし、なんならBDBOXを予約して発売日に最終回まで見て、クソデカ感情で一人でうがーとなっていた、くらいにはハマりました。

 なぜこんなに面白かったのか、それは、この作品にしかない「やばさ」があったからだと思います。ゲキドルのゲキは劇薬のゲキって、それ一番言われてるから。
 「やばい」作品、というと、皆様も様々な作品を思い浮かべるかと思います。ゲキドルのやばさは、物語の主要な部分を占めるストーリー、キャラクターが全く予想だにしないもので、見ている側が全くもって理解できない、もとい飽きさせない部分にあります。
 まず、ゲキドルのメインビジュアル、イントロダクションはこんな感じです。

謎の災害・世界同時都市消失から5年
世界は混乱の中にありながらも、少しずつ復興を遂げようとしていた

そんな世界で
3Dホログラムを用いた「シアトリカルマテリアルシステム」を使った演劇
に魅せられ、光り輝くステージを目指す少女たちがいた

それぞれの思いを胸に
今、ステージの幕が上がる

 
 まず、ここから想像するゲキドルというアニメの中身はどんなものでしょうか。
 おおよそ、「主人公がなんかアイドルになって成長していく作品なんやろうな、よくあるアイドルものやろな」みたいな印象を受けました。劇ってのも大事そうなので、某スタァライトの下位互換みたいな作品かもなぁとか思いながら見はじめました。
 そして1話を視聴後、「やっぱりただのテンプレによったアイドルものじゃん」と思いました。この時点では、まさかこの先にこんなハマると思っていませんでした。


 しかし、2話あたりから「おや?」という要素が増え、3話で「おいおいおいおいおい」となり、回を重ねるごとに話とキャラクターが全く予想だにしない方向に動きだし、「もしかしてこれはアイドルものではないのでは?」ということを理解してから、つまり、この作品の楽しみ方を理解してからは、全く格段に面白く感じ、そのままずるずると引き込まれるようになった、というわけです。

 ゲキドル視聴済みの方であれば、ゲキドルが大きく以下3要素で構成されている、ということはご理解いただけるかと思います。
・演劇
・SF
・百合
 この3つの要素は、物語の途中ではそれぞれが全くとっ散らかった状態で存在するわけです。あるシーンでかなり濃厚な百合描写をした後に、ほとんど説明がなく視聴者を置いてけぼりにするSF要素のパートがあったかと思えば、何食わぬ顔でアリスインの演劇の話になったりするわけです。まさに次回どうなるか、とかではなく、次のシーンでなにが起こるのか、すら予想することが難しく、ほぼ常にはらはらとしながら視聴することになります。
 私は最近、良作といわれるアニメをよく見ていたような気がします。主人公たちキャラクターに魅力があり、しっかりとした脚本によって視聴者にとって優しくも面白い、万人受けするようなこぎれいな作品です。そのため、例えばトリガー作品にあるような「この先の展開がわかっていてもドキドキしちゃう」ような面白さや、「完成度が高くて唸らせられる」ようなことはかなり多かったです。しかし、一方で、「え、大丈夫??この先こんな感じにしちゃって大丈夫???」と、こちらが不安になるようなドキドキを提供してくれる作品には出会ってなかったかもしれないな、と思いました。
 これだけ聞くと、まるでクオリティの低いアニメのような印象を受けるかもしれませんが、ゲキドルは「間違いなく何かをやろうとしている」ということが伝わってきて、加えてキャラクターが刺激的であったために、むしろそのとっちらかった展開を楽しめたのだと思います。かなり絶妙でかつ奇跡的なバランスで、物語と呼べるかすら怪しい「何かの筋」が見いだせたのです。だからこそ、不安になりつつも目が離せず、最後まで駆け抜けて視聴できました。

2.各キャラクターのやばさを端的に語る。

 先ほど、ストーリーのやばさについては簡単に説明しました。ラストシーンとオチについては最後に説明するとして、先にそんな繊細で奇妙なストーリーに登場するやべーやつらを私の視点で紹介していこうと思います。あくまで個人の感想です。

守野せりあ
 主人公。一目見たステージに惚れて演劇を始める。
 やべーやつ。最初没個性みたいな顔をしていたが、妹関連でクソデカ感情を見せつけてからは真価発揮し始めた。6話の守野さん見てて終始爆笑していた。地味に諸悪の根源。

各務あいり
 守野さんの先輩ポジションでいろいろ教えてくれるはずだった人。
 この作品で最もやべーやつ。大好き。
 何を話しかけてもキレ散らかす姿は脳による理解を放棄せざるを得なかった。最後のほうは各務さんがキレてるだけで爆笑していた。一生キレててほしい。
 依存癖がありキレやすいので典型的なメンヘラってこんな感じなんかなと思った。

雛咲いずみ
 守野さんの憧れの対象であり、元強キャラ。
 かなりまともより。守野さんの憧れであり演劇が大好き。SMTへの移籍の理由が彼女が語る通りなら終始被害者。かわいそう。彼女には幸せになってほしい。

榊原かをる
 守野さんが演劇やるきっかけを作った座長。
 全編通してみるとまあなんか仕方なかったかな、となる。被害者より。ただ彼女のエゴもなくはなかったと思うので完全に被害者ともいえん。

ドール
 アリスインにもともといた演劇用に動くドール。
 やべーやつではあるんですが、彼女はあくまでプログラムされたことに忠実に動いただけなのでは、という思いもあり、そういった意味では被害者寄り。道具は使い手によって善にも悪にもなるんやなって。

浅葱晃
 いわゆるイケメン枠。
 後半の方はしっかりものの一面を見せたため、おおよそ常識人より。ただし常識人は飲食店の椅子を振り上げたりしない。

藤田愛美
 アイドル枠。
 ゲキドルの数少ないアイドル要素。アイドル要素がないとタイトルがゲキになっていたので、必要なキャラだったと思う。多分作中一番常識人。

山本和春
 空気枠。
 こういう人って突然でかい声出すよねと思ったら出した。ただそれ以外のシーンではあまりにも空気。

中村繭璃
 一般枠からの応募。
 9話でちゃんと見せ場を作ったので偉いと思いました。

樋口真琴
 この作品唯一にして至高の癒し。
 まじで樋口さんしか勝たん。守野さんへのクソデカ感情をファンという形でちゃんと発散できており本人はとても幸せそう。まじで唯一の清涼剤なので、彼女がいなかったら相当息苦しい作品になっていたと思われる。

竹崎宏和
 アリスインと対立しているSMTのオーナー。
 最後まで見ると、やっぱり彼もまた被害者なんだなと思う。仕方なかったんやろな。

3.結局この作品は「オチ」たのか。

 ここからは今まで以上に多分にネタバレを含みます。全部見てから読むことをお勧めします。

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 最終的には、分裂した世界戦をもとに戻す、ということをクロノゲイザーの舞台に重ねて行います。
 SF要素そのものがかなり唐突なように見えますが、節々で引いた要素を11話時点まででまとめると以下の通りになるかと思います。(あくまで私の考察です)

 ここから12話につながるわけです。つまり、イノヴェイターのエンリヴィアンノが果たすべき目的を竹崎が代行しようとし、ドールがそれを応援しています。目的を遂行するために行われるのが、全人類に劇を見せる、という行為です。最も、目的を達成するための手段が、エンリヴィアンノと竹崎でたまたま一致しただけで、目的は、エンリヴィアンノが時空改変、竹崎が「エンターテインメントを通してすべての人の心を一つにする」という違いがあります。まあありていに言えば、人格データしか持たないエンリヴィアンノ側が竹崎を利用した、という形になります。
 そして、12話では、かをるがやらかしたことにより、それが結果的に実行に移されるわけです。そして、全世界がつながるステージとして、エンリヴィアンノは、クロノゲイザーの演目を見せて、つまり、5年前を再現することによって、本流の時空を再現し、支流としてのゲキドル世界をなきものにしようとしていました。
 しかし、せりあ、あいり、いずみが演じた演目は、あの頃の再現ではなく、せりあ、あいり、いずみそれぞれの感情のトロ、そして、未来へのメッセージでした。そのため、結果的に支流は滅び、5年前の本流の世界にはなったものの、せりあのメッセージ通り、未来人などがいない、世界同時消失のない、普通の世界を取り戻した、というのがラストのオチなわけです。
 SF要素にうまいこと区切りをつけつつ、中盤マジで空気だった演劇要素をラストのオチの仕掛けに使う、ということで、これ以上ないくらい綺麗なオチだったかな、というのが、個人的な感想です。
 エンリヴィアンノとゲイザーの話は、結局どっちが正義でどっちが悪か、みたいな話にはせず、それぞれにはそれぞれの話があるんやなぁ、というのを、すべて「結果的になかったことにして」たたんだのも、個人で期には好きです。結局どっちかが勝つとかじゃなく、全部消失しているのが、まさにこの作品のオチっぽくてよかったなと思っています。


 ということでゲキドルの感想と、簡単な考察でした。
 私個人としてはとても面白い作品だったので、一人でも多くの人に一人でも多くの人にこの作品の魅力が伝わったり、感想を共有できればと思います。

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