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「Night Light(ナイトライト)」について調べてみた

ミステリの中のキャンドルや灯りが気になる私

私はミステリを読むのが大好きです。
中でも、イギリスのクラシックミステリが一番好きなのですが、
それは、その時代の雰囲気…例えば、室内のインテリア、食事やティータイムのシーン等にも魅力を感じるからです。
中でも、やはり キャンドルが使われる場面や灯りに関する記述は
気になるところです。
クラシックミステリの時代は、キャンドルを 現代のように趣味やインテリア的にではなく、日常生活の中の明かりとして使っていた頃です。

ろうそく・オイルランプから ガス灯・電気へ

クラシックミステリというと、おおよそ20世紀前半あたりが舞台になることが多いかと思います。シャーロック・ホームズ等、19世紀・ビクトリア朝の薫り漂う作品も有名ですね。
19~20世紀にかけては、明かりが、キャンドル=蝋燭や オイルランプから
ガス灯、そして電気へ…と切り替わる時代です。
例えば、有名な探偵2人を挙げますと…
ホームズの時代は、馬車やガス灯、獣脂蝋燭などがまだ物語に出てきますが、エルキュール・ポアロの頃になると、自動車が登場し、デスクの上には電気スタンドが置かれています。
2人の活躍した期間には、数十年の幅がありますが、その間、生活にかなり大きな変化があったことが分かります。
そんな過渡期に、キャンドルはどのように人々の暮らしに関わっていたのか?
今回は、「ナイトライト」について自分なりに調べてみました。

「Night Light」とは

「ナイトライト」をご存じでしょうか?
直訳すれば”夜の明かり”、つまり「常夜灯」のことなのですが、19世紀~20世紀初頭は、キャンドルが使われていました。寝室、子どものベッドルームでも使われ、専用のキャンドルやキャンドルホルダーも販売されていました。
19世紀半ばに、パラフィンワックスが精製できるようになり、以前より安くて質の良いキャンドルが作れるようになりました。パームオイルやココナッツオイルが原料に使われることもあったようです。

さて、調べてみると、ナイトライトには種類があり、5時間燃焼、8時間燃焼などときちんとパッケージに記載されていました。形は、現在でもよく見かける平たい円型(ティーライトキャンドルと呼ばれるものと同じ形)です。
*余談ですが、ティーライトはおよそ4時間燃焼。お茶を温めるのに使われたことから、この名で呼ばれます*
以前は、細長く背の高いキャンドルが一般的でしたが、持ち運びにくいし、倒れると危ないため、徐々に平たい形のキャンドルのニーズが増えたのだと思います。
ナイトライトは、安全のため 皿に少し水を張った中に置いて灯したり、子ども部屋用には、かわいいデザインのナイトライト専用ホルダーを使ったりしていたようです。
当時の夜は、現代よりも暗いですから、明かりとして、また防犯上の観点から、常夜灯として灯しておくのが定番だったようです。

キャンドルを寝室で灯し、そのまま寝てしまう…?

現在では、危ないので、寝る前には必ず火を消しますよね。キャンドルの使用上の注意にも、必ず記載があります。
でも、当時はそのまま灯して寝ていたようなので、ナイトライトキャンドルは、設定した時間で完全燃焼する(ロウがなくなり、燃え尽きて自然に消える)ように、ロウの分量などを設計して作られたキャンドルだったと思われます。
当時のナイトライトの商品パッケージにも、ベッドで眠っている人の
横のサイドテーブルに キャンドルが灯っている様子が描かれている物があります。


ガスが怖かった…

キャンドルは、いくら安全といっても、火事になる恐れがありますし(実際、火災は多かったらしい)、そろそろ一般の中流家庭でガスの灯りが普及した頃でも、なぜ「寝室にはキャンドル」なのだろう?という疑問が湧きます。
それは、ミステリの中にも出てくる、あることを恐れてのことだったのです。。

そう、「ガス中毒」です。当時は、今と違って、家庭用のガスにも 石炭ガスが使われ、熱も匂いも強く、ガス栓の閉め忘れや不具合でガス中毒・爆発の恐れがあるなど、場合によっては死につながる危険も伴っていたそうです。ガスの匂いがきつくて頭痛になったり、銀食器が変色したりしたらしいですし…
寝室で、もし就寝中に 不完全燃焼やガス漏れが起こったら?
…恐ろしいですね。。。事故も数々あったんでしょうね…ガス中毒死事件が起こるミステリもある…ような…。
おちおち寝てもいられません。
つまり、キャンドルの方が安心だったんですね。

ただ、上記のような理由もありますが、そもそもガスの灯りは 当時の人には明るすぎて、寝室の灯りにはふさわしくないということで、昔ながらの蝋燭が使われ続けた とも言われます。

「キャンドルの灯りにリラックス効果がある」と当時の人が知っていたか
どうかは分かりませんが、ガスや電気の 便利で新しい明かりが登場しても、蝋燭の灯りは好まれた…
そして、現代の私たちも、キャンドルの灯りを引き継いで楽しんでいるのだなぁ、と感慨深い気持ちにもなりました。

( 2021年6月11日 )

〔 参考文献 〕
◇ヴィクトリア朝百科事典 谷田博幸・著(河出書房新社)
◇Candles   Jon Newman・著(PARKGATE BOOKS)

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