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奇怪建築にドハマリ

2019年10月26日のドハマリというイベントで話したものを画像少なめ、プレゼンシートバージョンを載せてみました。その代わりリンクと参考文献をつけてあります。


自己紹介はこちら。

Chapter 2 奇怪建築とは?

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奇怪建築をいって何を思い浮かべますか?

奇怪とは明らかに並外れていて予想外であるさま、目立って珍しくて型破りなことをいいますが、あくまでも建築士であり、建築の歴史マニアの私が奇怪だなーと思った建築のお話をしていきたいと思います。

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一般的に頭に思い浮かべる奇怪建築ではないので、それを期待している方はググってください。


Chapter 3 世界の宗教建築編

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ゴシック建築

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ゴシック建築。
好きな人多いですよね。
西洋に行くとあちらこちらあります。
ゴシック建築のどこがおかしいの?と思った人はかなり毒されています。

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ゴシック建築が幅を利かせるまでの時代の建築はロマネスク建築と呼ばれている様式です。札幌で見る事が出来るロマネスク建築は「日本基督教団札幌教会」。こういう低くこじんまりした牧歌的な教会がごろごろしていました。バラ窓のところはゴシック様式ですが、全体的にはロマネスク様式です。

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そんな中いきなりこのようなゴシック建築が建ち始めるのです。
因みにこれは今年火災で話題になったノートルダム大聖堂です。
何だ!あのでかい建物は?となるのが普通だと思います。
その当時の人にとって見慣れない規模の建物です。

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後の時代にイタリアの知識人はこのような建物を見て「ゴート族風の野蛮な」建物を表現します。それが「ゴシック」と言う言葉です。それでは野蛮な建築の特徴を見ていきましょう。

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装飾的な特徴1つ目として、バラ窓。細かく彫刻されています。施工した人凄いですね。

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2つ目がガーゴイル。魔除けと思われがちですが、雨水吐き出す雨樋ですが、こういう装飾をしようとした人の発想素晴らしいですね。


次に構造的な特徴1つ目として尖塔アーチ。丸かったのが、少し尖ります。

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2つ目の特徴としてリブ・ヴォールト天井。高い建物をつくるために木の枝のようにうじゃうじゃ広がったデザインです。構造好きな人がみるとテンションが上がるらしいです。そんなデザインです。

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3 つ目の特徴としてフライング・バットレス。建物が高くなると重さで建物が広がっていきます。それを外側に広がらないように押し込める梁のことをいいます。
私はフライング・バットレスを見るとテンションが上がります。
私の中でフライング・バットレスは声に出して言いたい建築用語です。

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ちなみにこの写真は、私がミラノに行った時にミラノ大聖堂です。屋上にのぼれたので、屋上からテンション高く写真を撮りました。
実はイタリアにはゴシック建築が少ないのです。
それはローマ人のプライドによるものではないかと思っています。
野蛮な建築があってはならないとの美意識があったに違いありません。
しかし、このミラノ大聖堂はゴシック建築の集大成と言われています。完成までに 500 年かかりました。
完成させたのはミラノを征服したナポレオンです。
イタリアにゴシック建築の集大成が出来るというイタリア人にとっての屈辱的なゴシック大聖堂。
今ではそんな風に思っていないでしょうが・・・。美術や文化の主導権がイタリアからフランスに移った象徴的な出来事だったのではないかと思います。こういうところで歴史に萌えます。

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これらの大聖堂はフランスにあります。着々と技術を向上して高く美しくなっていきます。サンス大聖堂が24mでしたが、100年後にはポーヴェー大聖堂が48mの高さを記録します。2倍の高い大聖堂を作れるようになりました。

そして、

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1回壊れて再挑戦するって素晴らしいですね。ちなみに大聖堂は未完成のままです。

ゴシック建築は建物の大きさへの追及、装飾の細かさだけではなく、建築の歴史的に見ても奇怪で魅力的な建物が多いです。
ゴシック建築が好きすぎて時間を取ってしまったので、ここからさくさくいきます。


古代出雲大社本殿

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下のように「古代出雲大社」で検索すると魅力的な画像がたくさん出てきます。

その中でも、面白いと思ったCGは友森工業さんのHPにあります。

そして、凄い記録が残っていました。

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古代出雲大社御本殿は平安後期から鎌倉時代までの約200年間で7回倒壊しています!


ここで復習です。

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材料の調達や政治的な問題もあるでしょうが、日本人メンタル強い!

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そこで、私は思いました。

当時の神との境界線は48mなのでは???

このように古代の妄想をすると幸せな気分になります。


泥のモスク

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正確にはスーダン様式ですが、イスラム建築と分類されることがあります。

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場所はアフリカのマリ共和国ジュンネ市街地にあります。

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尖塔は「生命と創造」の象徴のダチョウの卵をイメージしています。
突き出しているヤシの木は雨季の前にメンテナンスに使う足場です。

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柱の存在感がある内観です。

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地球の温暖化の影響により、ユネスコ世界遺産では100年後に見られる可能性が高い世界遺産と言う不名誉なモノに選定されています。
日干し煉瓦で巨大な建物をつくることが奇怪な発想力と行動力です。
柱の太さも数も何かがおかしい。この辺での建築の材料がそれしかなかったのでしょうが、そのチャレンジ精神に感動しちゃいます。

世界の宗教建築編はここまでにしておきます。

次は日本の宗教建築編です。

Chapter 4 日本の宗教建築編

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お話したい建築はたくさんありますが、今回は2つ紹介します。

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鳥取県の三朝町(みささちょう)にあります。鳥取県において2番目に大きな町だそうです。

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平安後期に建てられたと言われています。清水寺で有名な懸造。ジャングルジムみたいな形ですね。仏堂を法力で投げ入れられた伝説でこの名前がついています。

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この建物のポイントは

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次行きます。


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もう一つは旧正宗寺円通三匝堂。通称会津さざえ堂。

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福島県会津若松市の白虎隊で有名な飯盛山のふもとにあります。ここの山の凄いポイントとしては有料の動く歩道で山に登れることです。こちらは障害を持つ方にやさしい。

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かつては、2重螺旋のスロープに沿って西国三十三観音像が安置され、参拝者はこのお堂をお参りすることで三十三観音参りができるといわれていました。正面から時計回りのらせん状のスロープをのぼり最上階の太鼓橋を渡って、反時計回りのらせん状のスロープを降りて出口という動線です。2重らせんスロープ構造は、レオナルド・ダ・ビンチもスケッチに残してあるという記録とフランスの世界遺産であるシャンボール城の内部の二重螺旋階段があるだけです。木造2重らせんスロープ構造は会津さざえ堂だけです。

厨子の下側にはお賽銭を入れる小さな入れ物があります。33か所の賽銭(さいせん)箱をわざわざ回収しなくていいように、ここに小銭や米を入れると木樋(もくひ)を伝って縁の下の大きな賽銭箱にすべて集まるシェルター形式になっている。さすが住職が考案しただけあって、合理的に考えられています。

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技術的にもスロープの角度的にも、これが壊れたら再建できないのではと思っています。再建できたとして、カオスな空間までは表現できないと思います。

最上階の太鼓橋にいると、建物に呑み込まれそうな不思議な感覚を覚えました。日本で一番好きな建築を挙げるとすると、私は断然、会津さざえ堂です。
構造、デザイン、仕組みにおいてすべてが奇怪すぎます。


Chapter 5 セルフビルド編

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フランスのシュヴァルの理想郷、アメリカのワッツ・タワー、高知県にある沢田マンションを紹介します。

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フランス南部ドローム県オートリーブにあります。フランスのかなりな田舎です。パリでの観光のついでに行けるところではないようです。車を借りるかツアーに入るかしないといってもバスが少なさ過ぎて帰れないという大変な目に遭うようです。

シュヴァルの理想郷とは郵便配達員だったシュヴァルが43歳の時に石に躓きます。これがきっかけとなって石の収集を趣味とするようになりました。昼間に石を集めて、夜に積み上げという生活を33年かけます。

これがシュヴァルのつまずいた石です。

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この魅力的な石につまずいいたそうです。奇怪な形をした石ですね。この石に憑りつかれる気持ちはわかるような気がします。

フランスの公式サイトシュヴァルの理想郷に魅力的な画像があります。

この冬公開予定の「シュヴァルの理想郷」の予告編や書籍により作り続けたのは娘さんをなくしたことも理由の一つのようです。


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アメリカのロサンゼルスの治安が悪いワッツにあります。

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ワッツ・タワーは下のリンクに画像がたくさんあります。

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作りたいから作るという単純明快な答えが私は気持ちよくて好きです。


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沢田嘉農さんが幼少時に雑誌で見たハイカラなアパートに感動。集合住宅の建築・経営を一生の仕事にすると決めたそうです。
建設開始にあたり、建築確認は取っていません。役所も「強度に文句は言わないが、手数料の用意が出来たら許可は取るように」という程度の非常に大らかな時代でした。
設計図は嘉農さんの頭にしかなく、本などに載っている図面はこの建物に興味を持った学生の調査によるものです。

この建物の一番のポイントは

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というところです。

法律よりも上をいく行動力や人望って最強だなと思いました。今後どのように維持されていくのか興味深く見守っています。

沢田マンションの画像は下のリンクから見ていただけます。

最後に

奇怪建築いかがでしたでしょうか?
解りやすい奇怪な建築を紹介していくつもりでしたが、私の頭の中の奇怪さをあらわにするというオチに至ってしまいました。でも、ドハマリ的にはOKなのかなと思っています。
建築に宿る魅力は人それぞれだと思います。
私は人の願望や欲求や願いがこめられている純粋な建物に魅力を感じます。

歴史や時代背景を知るといろんな角度で妄想が豊かになります。すなわち、生活が豊かになるのでオススメします。こんなにも幸せ気分になれる奇怪な建築に私はありがとうと心から言いたいです。そして、これからもストレスを溜めて蔵書を増やしていきたいです。
 
建築の歴史は、建築を学んでいた時ですら、建築史の先生かフィールドワークの先生しか話が合わなかったマニアックな分野です。一般の人に建築をつくる事よりも、歴史や面白い建築について調べる方が好きと話しをすると大体聞いてくれませんでしたし、めんどうくさい奴だと思われていました。今回、私が好きな建築の歴史について語る機会に恵まれてとても嬉しかったです。






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