Pinkを映すBlack―シックスハートプリンセス

~藍色茜色のおそろいベレー帽 November 21 [Thu], 2013, 12:12~

光と闇、陽と陰。
古来から白と黒という色は対になって世界を形作ってきました。
おひさまが登っては沈む空のように、オセロ・ゲームのように、くるくる回って世界を変える反対色。

「Pink or Black」の選択肢は、そんな秩序を少しだけずらして見せます。
少女文化の世界では、黒の反対色がピンクとなりえるのだということ。
村上隆×シュウウエムラ「6Princess――6HP」について書きます。

はじまりは、2010年にベルサイユ宮殿でひらかれた村上隆の個展で発表されたアニメ、「シックスハートプリンセス」。

明確なプリキュアシリーズのパロディであることがわかりますね。
造形は特にハートキャッチプリキュアに近く、それでいながら性格・内面的特徴はハトプリのキャラクターたちと鏡合わせ(おバカなつぼみ、かっこいいえりか、内気ないつき)。
現在公式公開されているこちらの映像では、そんなキュートなプリンセスたちに残酷な運命を課す意図が見えます。

この企画の続編として今回のコラボレーション・ムービーがあります。

ピンク・プリンセスは先にも言及したように、プリキュアシリーズのピンク色を与えられた主人公たちの特徴を寄せ集めたよう。
ブラック・プリンセスは、プリキュアシリーズに限らず黒を宿すキャラクターの寄せ集め。
過度な露出は少女文化的文脈のみならず男性向けエロティシズムからの引用でもあることを示します。

さて、そもそも黒のプリキュアといえば、10年続いたシリーズのなかでも2人しかいません。
ひとりは、第一作目の「ふたりはプリキュア」より、キュアブラック。

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連綿と続いているプリキュアシリーズ、はじまりの主人公色は白と黒なのです。
それ以降はプリキュアの数も増え、色もカラフルになり、ペアというよりもチームとしての物語へと変貌。
そんななかで「ハートキャッチプリキュア」に悪役として登場したのがダークプリキュアでした。

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「おまえはわたしだ」――ダークプリキュアは、紫色のお姉様、キュアムーンライトの片割れになる存在です。

そう、プリキュアシリーズにおける黒は、白と黒、光と闇として対になるかたちで描かれていたのでした。
ところが、6HPは当たり前のように「Pink or Brack」という選択肢を提示します。
ここでのBrackは、白とも光とも対にならず、鏡の向こうにPinkを映します。
ファンシーでカワイイあの子と、ダークでワルイあの子、どっちになりたい?と。
「Pink or Black」、その二択に全く違和感はありません。
それは、ピンクという色が、少女文化において常に主役であるからです。

そしてPinkとBlackは陰陽のように対立するがゆえに片方ずつしか表出されません。
甘ロリとゴスロリをミックスできないのと同じです。
ピンクと黒が同居するファショングッズがギャルっぽくなってしまうのとも同じです(LOVEBORTの鏡!)。
彼女たちのように幼さと悪さを一度に抱え込めないわたしたちの前には、「Pink or Black」の選択肢があらわれました。
そして、ピンク色を選択したあの子も、黒色を選択したあの子も、いっしょにおとなになりました。
するとどうでしょう、魔法の呪文「シュウウエムラノクリスマスコスメ」でピンクにも黒にも軽やかに変身できるようになったのです。
だってわたしたち、魔法少女にはなれなかったけれど、魔法のアイテムを買えるようになったのだから。

人間の二面性、というなら白黒でいい。
でも女の子の二面性だから、桃色黒色(ももクロ?)なのです。

Pink or Black, which do you like?
鏡の中のあなたに、聴いてみてね。

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