蕗谷虹児記念館「乙女たちの夢とあこがれ 蕗谷虹児・中原淳一・松本かつぢ展」

~藍色茜色のおそろいベレー帽 June 13 [Tue], 2017, 20:53~

新潟県新発田市 蕗谷虹児記念館で開催中の「乙女たちの夢とあこがれ 蕗谷虹児・中原淳一・松本かつぢ展」へ行ってきました。
普段は新発田市出身の蕗谷虹児の作品および功績を紹介するこちらの記念館。
本展は、新発田市市制70周年事業のひとつとして企画されたものです。
蕗谷虹児・中原淳一・松本かつぢの3人展は意外にも史上初とのこと。
昭和の少女文化を牽引した3人の作品を、こーんな地方都市で(!)一同に観ることができます。

*中原淳一の展示について
『少女の友』『ひまわり』『それいゆ』、そしてその繊細な付録の数々と表紙原画を中心とした展示。
中原淳一を語る上で欠かせないベーシックな作品群ではありますが、やはり何度見ても素敵です。
東京・日本橋での生誕100周年記念の中原淳一展を「まあ、懐かしいわあ」と鑑賞した都会的なおばあちゃま達に対し、
新潟県北の農作業に勤しんだおばあちゃま達は「まあ、憧れの!」という感激の仕方をするのかしら。
会場ではおばあちゃま世代の方とは出会えなかったので、勝手な想像です。
せっかくのまたとない機会なのだから、その層への広報をもっとしてくれたらいいのになー、と思いつつ。
初公開の蕗谷虹児への書簡は、病床に伏した淳一の元へ虹児がお見舞いに訪れたお礼をするもの。
自らの作風に虹児の影響が色濃くあることを改めて伝える内容となっています。

*松本かつぢの展示について
「くるくるクルミちゃん」のアニメーション制作プロジェクトでも話題の松本かつぢ。
かの有名なコンビ社のベビー食器の実物や、アニメーションの不思議の国のアリスの原画(メアリー・ブレアのようなパステルカラーの世界観がとっても可愛らしい!)、ロマンチックな少女雑誌の挿絵など、商業作家としてのかつぢの作風の幅広さに触れることができます。
蕗谷虹児の妻・龍子は松本かつぢの妹であり、その馴れ初めや家族写真等が虹児との繋がりとして展示されていました。
なお、クルミちゃんパネルは写真撮影可です、とお声がけ頂いたので息子と記念に収まるなどしました。

*蕗谷虹児の作品について
常設している虹児の主だった作品群は、記念館入ってすぐの小部屋や階段を登ったさきの2階に展示されています。
入場してすぐのところで迎えてくれる「花嫁人形」の美しさはやはり一線を画すもの。この存在感が記念館そのものを牽引しています。
少年期の作品や、東映動画のアニメーション「酒呑童子」、魯迅や三島由紀夫らとの交流も紹介されています。
中原淳一・松本かつぢの作品と対比すると、蕗谷虹児はやはり日本画の人だなあと。
流線の美しさ、そして流し目。
デザイナーとしても大変優秀です。詩集『花嫁人形』の復刻版、やはり買えばよかった…。
アールヌーヴォー的なモノクロームの作品も素敵ですし、「虹児」のサインがいちいち凝っているのでそこも見どころです。

*新発田市と蕗谷虹児
さて、そもそもこのブログ記事を執筆したのは、わざわざ観に行きたい、とおっしゃる新潟県外の方がいらっしゃったから。
史上初の3人展!偉大な3人の作品がたくさん観られる!と思って勇んでやってくると、少し拍子抜けしてしまうかもしれません。
あくまで美術館ではなく、記念館なので。そのこじんまりとした雰囲気を味わっていただきたく存じます。
とはいえ、記念館そのものも可愛らしく建築物として見応えがあります。
外観はすこし暗い印象ですが、中に入るとまるで教会のような静謐なうつくしさ。
ここでコンサート等も開かれているようなので、ぜひ聴いてみたいです。
記念館以外では、新発田市内を走る蕗谷虹児のラッピングバスがあります。
また、月岡温泉ホテル摩周では蕗谷虹児デザインの浴衣を借りることができ、こちらは企画展で展示もされていました。

それにしても、ある日消えて無くなった蕗谷虹児記念館の公式ホームページはもう復活しないのかしら…。
展示の情報だけでなく、作品も観ることができる立派なものだったのだけれど。
このような事情でなかなか情報が得にくい企画展ではありますが、乙女の皆様にも、そうでない皆様にもぜひご覧になってもらいたいものです。

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