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あの子は世界を救えないーー選ばれなかった女の子が陰から照らす物語について。

「きみには世界を救うための力がある!」
ということは、
「世界を救うための力がない子がすぐ近くにもいる」
ということ。

物語における選ばれた女の子は、世界を救うために戦います。
あなたが数々の物語から学んできたように、それはとても長く辛い道のり。自分を賭して、なにかを失いながら、平和な世界みたいな大きなもののために文字通り戦い続ける。

でもでも、選ばれた女の子だって普通の女の子なんだもん、そんなのやってられない。強大な敵と対峙して、くじけそうに、負けそうになってしまうときもあります。
そんなときに彼女を支えるのは、そう、お友達。選ばれた女の子だって普通の女の子なんだから、お友達がいる。彼女は彼女を助け、奮い立たせてくれる。ありがとう、あの子のおかげでわたしはがんばれる。

ここにおいて、「わたし」は戦う力を持つ選ばれた女の子である一方、「あの子」であるお友達は戦う力を持たない選ばれなかった女の子です。戦う力があるのなら、精神的に励ますだけじゃない、物理的に共闘できる。でもできない。あの子はその力を持たない。「選ばれた女の子」の影には、いつだって選ばれなかった女の子がいる。

選ばれた女の子のおとなりに居続ける、選ばれなかった女の子。そんな女の子が担う切ないあたたかさに惹かれます。
ふたりだから乗り越えられる。でも、ふたりだから陰陽がうまれてしまう。その鏡映しの光と影を、優劣つけずにそっくりそのまま1つの現象として愛したい。

世界を救う魔法少女じゃなくたっていいの。
特別な才能を持つあの子のお隣には才覚のないあの子がいる。デビューできたあの子のお隣には予選落ちのあの子がいる。それでも、だからこそ、支え合える関係性がある。

たとえば、美少女戦士セーラームーンの、月野うさぎちゃんのおとなりにいる大阪なるちゃん。

たとえば、少女革命ウテナの、天上ウテナのおとなりにいる篠原若葉(ウテナの世界にちゃん付けは似合わないですよね)。

たとえば、Go!プリンセスプリキュアの春野はるかちゃんのおとなりにいる七瀬ゆいちゃん。

たとえば、プリパラの真中らぁらちゃんのおとなりにいる愛媛なおちゃん。

そして、鬼滅の刃の栗花落カナヲちゃんのおとなりにいる神崎アオイちゃん。
鬼殺隊士としての技量を認められており、「蟲柱・胡蝶しのぶの継子」として一目置かれるカナヲちゃんに対し、同じ蝶屋敷で暮らす女の子のアオイちゃんは、隊士でありながらも戦うことができません。
でも、だからこそ、ふたりは支え合うことができる。
刀をぶつけて赫くするだけが共闘ではないのです。

このほかにもきっとたくさんの女の子がいます。
選ばれなかった女の子たちは今日も戦わない。でも、彼女たちは彼女たちの方法で物語を照らす。
これもまた1つの少女鏡像のかたち。



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