スクールガール・コンプレックスは、意地悪

~藍色茜色のおそろいベレー帽 August 30 [Fri], 2013, 21:52~

「男の子の憧れの女子校」なんていうけど、女の子だって女子校に憧れたり、するのよ。
スクールガール・コンプレックスをみました。


***わたしによるあらすじ***

放送部の部長をしているわたし。
もうすぐ部活の最後の行事、文化祭での朗読のステージがあります。
そんな時期だけど、問題を起こしてバスケ部を退部になったというあの子が放送部に入部することに。
当たり前だけどあまりいい気分ではない部員たち。
(一番の仲良しの彼女はいつだってわたしの味方をしてくれるのだけど)
あの子はなぜ放送部に?わたしが見てしまった秘密って?文化祭のステージは誰が読むの?
全てはきっと、あの子が読んでる『女生徒』ちゃんが知っている。

***わたしによるあらすじおわり***

と、思い入れたっぷりに紹介してしまうくらいにはすきです、この映画。
放送部の部長をしていた自分自身の経験もあって、いたるところがノスタルジックでした。

青山裕企の写真集『スクールガール・コンプレックス』シリーズを原案としている、ということでしたが、あのフェティッシュさは冒頭と最後のシーンのイメージ・カットに凝縮されていました。
さよポニちゃんのPVみたいなかんじ。


本編は爽やかな女子映画です。
岩井俊二の傑作「花とアリス」をもう一度みたくなる。文化部物語のなかでもあれは落研でしたね。
女生徒ちゃんが御茶ノ水の女学校に電車通学するのに対し、彼女たちは自然豊かな東京のはじっこにいる。
「東京のどこにいるか、ご存知ですか?」と聞かれても、探すのは難しそう。

女の子ひとりひとりについて書きたいところだけど、特筆すべきは副部長であり主人公の親友・アイちゃんを演じた近藤真彩ちゃんのナチュラルさ!
すごく良い子、良い子だから泣ける。
その切なさとか、でも切ない雰囲気にしたくなくて明るく振る舞う不器用な器用さとか、とても上手に表現されていたと思います。
部室の話し声がスタジオのヘッドホンから聞こえる距離感とか、プール掃除とシャワーの水しぶきの美しさとか、時折挟み込まれるたい焼き屋さんでの一幕とか。
ふたりの思い出はきらきらとせつない。
イメージビジュアルからも女の子二人っぽさを醸し出していますが実は三角関係の物語なのです。
寿美菜子嬢演じる顧問教師が大事な大事なシーンで発する一言「やっぱり!」が救い。
ああ、わたしも百合レーダーが敏感な女子校教師になりたい…。

本作は放送部映画としても素晴らしい。
ここまで細やかに放送部を描いた映画って今までなかったのではないかしら。
運動部並みの規律に沿った練習風景。
「Nコンのときは」なんていう何気ない台詞。
マイクの風防のつけかた。
お昼の放送のCDを取り換えるタイミング。
全てが懐かしくて切なくてしょうがないです。
汗と涙!っぽくもあるのだけれど、やっぱり運動部じゃないから、優雅さもあって。
桐朋女子放送部(強豪だった記憶)に取材したそうなのだけど、大変綿密な取材だったのだろうなあと想像できちゃう。
毎日毎日屋上の青空の下で発声する彼女たちの健やかさ。
それに対比されるからこそ、謎の新入部員・チユキちゃんの危うさが際立つというもの。

『女生徒』は、年上男性から「お前っぽいぜ」と手渡されてはなりません。
かといって、あんな男になぜ!と憤りながらもスクリーンを見つめるしかできない男性の手元にあっても本来の力は発揮されません。
こんなにフェティッシュなところからスタートしたのに、どうしてこうも少女のための映画になっちゃったのかしら。
『スクールガール・コンプレックス』に意地悪さを覚えたあなたにこそ見つけてほしい。
そう、王子様のいないシンデレラ姫を。

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