不器用な画家 第14話「虚しさ」

クラブイベントでのライブペイントの誘いを受けた(クラブイベントとライブペイント、語呂が似てて紛らわしいが、ついてきてくれ!)

またクラブイベントかあ…

純粋にクラブイベントというものが苦手で、楽しむことができない、あの空間に自分の居場所を見いだせない…、どうしたもんか…

いや、まて

ライブペイントで出るのか?

だとしたらだ、ライブペイントをしてれいばいいのなら、それが僕の居場所だ(多分)、クラブイベントを楽しまなくてもライブペイントを楽しめばいいのだ 、と思い

これは挑戦だ、と、オッケーを出した


クラブイベントの日だ

もちろん、緊張でゲロが出そうだった

折りたたみのイーゼルを持っていき、ライブペイントの準備をした

始まりの時間になった

アルコールを入れて、iPodを回し、そして描き始めた

んをんをんをんをー!!!!!!

これこれー!!これだー!!

やっぱり描き始めたら、こっちのもんだ!

完全にクラブイベントだということを、ぶっ飛ばして、ライブペイントという自分の居場所を楽み始めた

クラブイベントもライブペイントをしてれば、なんとかなるし、自動的に絵を見てもらえてるし、悪くないのかもなあと思い、絵を描き続けた


がしかし

がしかしだ

それは起きた

酔っ払って騒いで走り回ってる客達がいて、ウゼエなあと思っていたら、なんと、そいつらが近づいてきて、イーゼルにぶつかった

イーゼルは倒れた、もちろん、描いていた絵も倒れた

一気に現実に引き戻された気分であった

酔った客達は、何も言わず走ってどこかへ消えてった

クッソ!!!!!と心の中で叫んだ

腹が立った

が、きっと、そいつらがそこに居たままだとしても、僕は何も言えなかっただろうなあと思った…、チキンだからだ

悔しかった、というか虚しかった

でも、近くにいたお客さんに
「大丈夫?」と言われ

そんな優しさに救われて

僕はライブペイントを再開した…


がしかし

がしかしだ

もうひとつ、それは起きた

僕はライブペイントしてる傍に普段はこういう絵を描いてますというポートフォリオ(作品集ファイル)みたいなものを置いていたのだが

酔った出演者(DJ)が、近寄ってきて、ポートフォリオをフワーっと見てから、ステッカーみたいなものをポケットから取り出し

「コレ、俺のステッカーなんだけど、このファイルに貼っていい?」と聞いてきた


僕「え?(ダメだろ)」

DJ「この裏でいいよ」

僕「いやあ…ちょっと…(ふざけんな)」

DJ「よろしくね~、ペタッ」

ステッカーを貼りやがった、そしてどこかに消えてった

クッソ!!!!!と心の中で叫んだ

腹が立った

が、きっと、そいつがそこに居たままだとしても、僕は何も言えなかっただろうなあと思った…、チキンだからだ

デジャブかよ

なんだよこれ

このクラブイベントなんなんだよ

こういうものなのか?

これが普通なのか?

そうか…

ちんちん!!!!


僕は適当に切り上げて、帰った

クラブイベントにますます悪い印象を持ってしまった

もちろん全てのクラブイベントが、こんなだとは思っちゃいないけど、経験してしまったこの気持ちは忘れないと思うし、そもそもの向き不向きはあっただろう…

そして家に帰り

ふざけんなつって、ファイルに貼られたステッカーを剥がした


夏が終わっていた



つづく

第14話「虚しさ」




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