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DVにギャンブル、私が彼らと付き合うのは私が選んでいるから?

介護職 38歳 愛美(仮名)の告白。

 友人にも、
「あなたはダメンズウオーカーだね」
 とあきれ果てられています。
 私、仕事はできる方です。
 大きな施設の介護保養所のケアマネージャーとして、責任ある仕事をまかされ、働いています。
 一番最初に男性と付き合ったのは、学生時代。
 同じ英語研究会にいた芳雄(仮名)です。
 お互いバイトしていたんですが、デート代は、
「愛美の方が稼いでいるから出してくれよ」
 と言われて、いつも私が支払って食べさせていました。
 あげく、彼は同じ英語研究会の後輩のルナと付き合いだし、私はルナと芳雄に呼び出され、芳雄から、
「ルナと付き合う、お前とは別れるから」
 と告げられたのです。
 横にいるルナの誇らしげで満足そうな顔。
 ルナに言わされていたんでしょう、芳雄は去り際小さな声で、
「ごめんな」
 と私に呟きました。
 次に付き合ったのは、劇団員の省吾でした。
 居酒屋の隣の席に、彼のグループが座っていて、ナンパされたんです。
 彼の劇に招待され、見に行ってかっこいいな、と思って付き合い始めました。
 2ヶ月もしないうちに、彼は私の部屋に住み着いたんです。
 だんだんと彼の洋服や身の回りのものが増えていって、一緒に暮らしていました。
 そりゃあ彼は楽だったと思います。
 ご飯は全部私が作るし、家事だっていっさい彼はやりませんでしたから。
 いつの間にか彼はバイトを辞めていて、無収入。
 私は彼に毎日小遣いを渡し、家でご飯を作れないときは、夕食代として2千円を渡していました。
 金を渡すと、彼は、
「サンキュー」
 と照れたように呟く。
 その表情を見るのが嬉しかったんです。
 彼はパチンコ三昧になりました。
 私が仕事でくたくたに疲れて帰ってきても、彼は、
「おかえり~おつかれさま」
 と言葉をかけてくれますが、家の中はぐちゃぐちゃです。
 そのうち彼は、朝帰りをするようになりました。
 パチンコで知り合ったおばさんと、付き合うようになったらしい。
 泣いて怒ると、
「悪かった。女とは付き合わない」
 と謝るのですが、一ヶ月もするとまた、別の女性と付き合い始めます。
 その彼女がパチンコで作った借金、100万円を私に用立ててくれ、と彼が言った時には切れましたけどね。
 だけど、100万円はつごうして渡しましたよ。
 そのくらいの金は持っていたんで。
 そのうち彼は車に懲りだして、高級外車を乗り回すようになったんです。
 ローンの名義人も、駐車場の支払いも、全部私です。
 その車に女を乗せ、ドライブにしょっちゅう行っていたらしい。
 一度、スーパーの駐車場で彼が女といるところに出くわして、女同士つかみあいの喧嘩になったことがあります。
 彼はその場から逃げました。
 彼は、私から金に換えるからと取り上げたダイヤとプラチナの指輪を、彼女にさせていたんですよ!
 最後には私が部屋の鍵をかけかえて、彼が部屋に入れないようにしたんです。
 
 次に知り合ったのは、大嘘つきの茂男です。
 嘘つきというより、詐欺師に近いかな。
 彼は、私が街のカフエでパソコンを打っていたら、
「いいパソコンですね」
 となれなれしく近づいて来たんです。
(変な人)
 と思って相手にしなかったんですが、茂男は名刺を差し出して、
「いつでも連絡ください。あなたの好きなところにお連れしますよ。僕におごらせてください。恥ずかしいんですが…一目惚れなんです」
 と言うんです。
 名詞には、あるアジアの国の大使館の名前と住所とが書いてありました。
「僕は二世で、父親がその国の人間です。今は日本にいて、大使館の仕事をお手伝いしています」
 と言うんです。
 そう言われれば、エキゾッチクな顔つきにも見えました。
 名詞のことなど忘れていたんですが、仕事上のことを同僚に上司に告げ口され、すごく理不尽な理由で責められ怒られて心がへこんでいたとき、ふっと思い出したんです。
 それで、XXXXの食事をおごってくれたら、逢ってもいい、とメールしたんです。
「もちろん、あなたと逢えるなら、お安いごようです!」
 彼からは喜び勇んだメールが来て、その店の食事をおごってくれました。
 
 彼は話題が豊富で、とても楽しい人なんです。
 それに、
「あなたは美しい」
「あなたのような人を35年間捜し求めていて、やっと今めぐり会えた」
「神がいることを信じます。あなたに逢わせてくれたから」
「あなたの美は、私に生きる喜びとパワーを与えてくれます」
「あなたといることが無上の喜び!」
 私の心を浮き立たせる言葉を絶え間なく囁いてくれるのです。
 結局、彼が支払ってくれたのは、最初のデートのその一回だけでした。
 一週間後、私が帰宅するとドアの前に彼が立っていて、
「あぶないことになった。当分かくまってくれ!」
 切羽詰った様子で私に懇願するのです。
 混乱していると、
「はやくはやく」
 彼は私をせかして部屋のドアをあけさせ、中に入ってしまいました。
 その日から彼は私の部屋に入り浸ったのです。
「重要な仕事をしている」
「機密だから答えられない」
 と言うのが彼の口癖で、
「活動費がいるんだ」
 と称して私から、50万、80万、とお金を引き出しました。
 私は仕事で家を留守にしますので、彼一人です。
 私の宝石や時計や美術品が消えていきます。
 彼に貢いだ金額が総額1千万円近くに達した頃、彼はこつぜんと姿を消しました。
 しばらくして私は、彼が何人もの女性から婚約不履行で訴えられている男性だと、テレビのニュースで知ったのです。
 もちろん大使館勤めも真っ赤な嘘で、彼は日本人でした。
 
 ダメンズでは3人目の洋一がさいたる人かも知れません。
 私は彼と二回結婚し、二回離婚しました。
 最初は、同じ会社が経営する、別の施設の施設のケアマネさんとして、知り合ったのです。
 洋一は、すらっとしたイケ面で、態度も男らしく爽やか。
 今までの男性と違って、仕事もばりばりこなす、有能で頼りになる男性でした。
(ステキな人だなあ)
 初めて逢った時から、好意を抱いていました。 
 明朗快活でイケ面の彼は、施設の職員にも慕われていたと思います。
 その彼と、合同の夏祭りの催しでチームを組み、仕事をするうちに親しくなって、
「今の君は、どこか寂しそうに見える。ちらっと噂で聞いたんだけど、苦労しているらしいね。僕が力になれることがあったら言って」
 と囁かれたとき、私は、
「なんてやさしい、いい人なんだろう」
 ぽっとなってしまったんです。
 だから、交際を申し込まれた時は、天にも登る気持ちでした。
「今度こそ幸せになりたい! 彼をはなしたくない!」
 と決意したんです。

 生まれてはじめて結婚式を上げ、ハワイに新婚旅行に行き、彼との結婚生活が始まりました。
 新婚旅行から帰り、3週間がたったころです。
 チャイムがなったので、玄関に行くと、覗き窓の向こうには、30代くらいの女性が立っていたのです。
 ドアを開けると、その女性はいきなり、
「洋一の妻です」
 と名乗るのです。
「えっ、でも私、彼と結婚していますけど」
「私が本妻です。あなたとは籍がはいっていないはずです」
 そう言えば、結婚届は彼が出すと言って彼が持っていった…。
 結婚式には彼の親族は出席していなかった。
 おかしなことばかりでした。
 彼に問いただすと、
「妻に借金があるので、離婚届に判を押してくれない。俺はお前と結婚したい、だから妻への借金300万をなんとか用立ててくれないか、頼む」
 頭を下げ、涙を流すのです。
 私は彼と一緒になれるのならと、親に泣きついて借金して、300万円を用立てたのです。
「本当にこれで、奥さんと別れられるのね?」
「すまない、一生恩にきる。お前を一生愛しぬくから」
 洋一はその金を妻の所に持っていき、正式に私と婚姻届を出してくれたのです。
 しばらくは蜜月が続きました。
 彼は甘い言葉を囁き、毎夜私を抱き、愛を誓います。
 幸せだった…その言葉が偽りだったとしても。
 彼は給料を家に入れませんでした。
 すべてギャンブルに使ってしまう。
 ギャンブル依存症だったのです。
 私は借金のかたに、彼の友人に売られました。
 ある日、私が仕事から帰ってくると、洋一がいつも一緒に遊んでいる友達のヒロシと一緒にいるのです。
 私はヒロシがきらいでした。
 いつもねちっこい目で私を見つめて、舌なめずりしているような感じでしたから。
 酒の用意をして、私もしかたなく加わり、3人で飲んでいたのですが、いつの間にか洋一の姿が消えているのです。
 ヒロシが酒臭い息で私に襲い掛かりました。
「何するの! やめて!」
 抵抗する私に、
「あいつが借金返せなくて、借金のかたにお前を俺に売ったんだ。洋一の承諾済みなんだ」
 せせら笑うのです。
 なんと言うことでしょうか!
 私は彼を突き飛ばして逃げましたが、怒りと悔し涙がとまりませんでした。
 でも洋一に、
「今度のことは本当に俺が悪かった。ヒロシに脅されてついうんと言ってしまった」
「俺はなんて言う男だろう。これからは心を入れ変える。お前を傷つけるようなことは決してしないと誓う。許してくれ!」
 謝られて、許してしまったんです。
 でも、私が彼と別れたのは、
「どうしても金がいる。一週間後に50万円用意してくれ、でないと俺の命が危ない」
 と言われて、私はもう自分のクレジットカードは使えませんから、闇金で金利の高いお金を借りて、彼に渡したんです。
 闇金は、マンションの一室で、紫のスーツや黒のスーツを着た人たちに取り囲まれました。
 法廷外の高い金利に、いけだかで高圧的な態度。
 怖かったけど、借りなくてはしかたなかったんです。

 でもその50万円の使い道が、実は別れたと言っていた前妻ともまだ関係が続いていて、その前妻のために用立てたお金だと言うことが、彼の携帯のメールからわかって、私のなにかがプツンと切れました。
 彼の留守の時を見計らって、持ち出せる物だけ持って、違う土地に逃げたんです。
 友達はあきれかえります。
(よりにもよって、どうしてそんなにダメな人ばかりと付き合うの?)
 と。
 私が彼らを選んでいるのでしょうか?

 ※ ※

 愛しすぎる女性たちは、
(私自身がそう言う男性ばかりを選んでしまうのだろうか?)
(だとしたらなぜなんだろう?)
 そんな疑問を時として口にします。

 なぜかそう言う人とばかり付き合ってしまう…。
 でもこの地球上には、実に多くの人がすみ、多くの異性が相手を求めている。
 それこそ、星の数ほど男はいるのです!
 そのなかで、よりによってと言うか、必ず自分を裏切ると言うか、貢がせると言うか、そう言う男性ばかりと交際するとしたら、それは不運ではなく、自らがそう言うタイプの男性を選んでいるのです。
 どうしてでしょう?
 本人もわかりません。
 だって、騙されたいとは思っていない。
 他の女性に心を移してほしいと思っていない。
 私だけを愛してくれる心温かい男性の愛情に包まれることを、心の底から願っているのに…。
 なぜそれが、手に入らないんでしょう?
(私なんか、一生かけて手に入りませんでしたから)
 いえ、これは自慢でなくて、自嘲です。(笑

 どうやら、そのひどい彼が、時として、
「本当に今まで悪かった。許してくれ。深く反省して後悔している。こんなにもステキな君を傷つけてしまったことを」
「君だけを愛する男になるよ」
「心を入れ替えて真人間になる」
「君を傷つけるようなことはもう決してしない」
「君のためだけに生きる人間になる」
 と謝ってくれる時に口にする言葉に、隠されたヒントがありそうです。
 DVD被害者の女性は、彼は暴力を振るった後は、泣いて謝り、もうけっしてこんな事はしないと約束してくれて、打って変ったようなやさしい態度で接してくれる。
 そうすると、私も嬉しくて許してしまう。
 そんな言葉をよく口にします。
 耳に甘い彼の言葉を聞くとき、彼が喧嘩や暴力の後、打って変った優しい態度で接してくれる時、しおらしく泣いて反省したり心の底からと思える態度で謝ってくれる時、愛し過ぎろ女たちは嬉しさや喜びを感じるのですね。 やっぱり彼はいい人。
 きっと生まれ変わったように私を愛してくれる…と思うのではないでしょうか。
 その期待は、度々たがえられるのですが。
 彼は口にする。それを信じたいから許す。
 また彼からの被害にあう。
 でもまた謝られて許す。
 男性から逃れられない人は、それを繰り返している人が多いのです。
 そんな甘い期待をなぜ抱いてしまうのでしょうか?
 愛しすぎる女達は、自分が愛されたいと深く切望しています。
 それは強力な願いですから、自分を犠牲にしてでも、男性のために無理をしてしまうのです。

人はなぜ愛しすぎるか。その謎を解く連載は続きます。マガジンなら過去の記事も読めます。



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