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『ミラベルと魔法だらけの家』によっていじけた私の魂の行方
※ネタバレあり
思うに、この作品には二つの物語がある。一つは「特別なチカラ(=GIFT)を持つ者の物語」で、もう一つは「特別なチカラを持たない者の物語」だ。
このうち私は、前者にまつわるメッセージには強く共感する一方で、後者にまつわるメッセージについては、なんだか腑に落ちないというか、モノ足りないというか、もやもやしたものを感じた。
以下、自分のこのもやもやがどこから来るのか、考えを整理し
最新クレしん映画の豊かすぎるメッセージと自己批評性
『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』(7月30日公開)を観ました。
その理由は、〈今年のしんちゃんは泣ける!〉〈遂に『オトナ帝国』『アッパレ戦国』を超える怪作が誕生!〉などという絶賛レビューがいくつか漏れ聞こえ、興味をもったからです。
特別泣きたい気分だったわけではありません。また、過去作『オトナ帝国』は奇跡が生んだ無二の作品だと思っているので、私の構えはあくまで半信半疑です。
ぜんぶ、アシタカのせい ~なぜ私は『もののけ姫』を愛せないのか~
『もののけ姫』を愛せないのはアシタカのせい1997年に公開された映画『もののけ姫』は、当時としては日本最高の興行収入を記録した大ヒット作であるけれど、その物語に対する国内の評価は必ずしも高いものではなかったらしい。私の周囲に話を限っても、『ラピュタ』最高だよね、とか、『魔女宅』泣けるよね、などという感想は聞くものの、『もののけ姫』に対する好評はあまり聞いたことがない。
私たちは、どうして『ものの
最高すぎる『水は海に向かって流れる』の壮大なタイトル回収
田島列島さんの『水は海に向かって流れる』が、最高の終わり方で堂々完結した。
最終巻を購入して以来、私は毎日、さいごの数ページをめくってはその都度心をふるわせているのだけれど、なぜこんなにも心がふるえるのかといえば、それはきっと、この物語が「止まっていた榊さんの時間が再び流れはじめるまで」を丁寧に描いていて、しかもその変化がアクロバティックであると同時に強い説得力をもつという奇跡のバランスで描かれ
【発売22周年記念】HOT LIMITとは何だったのか
かつて時代の先端にあったものは、往々にして嘲笑とともに振り返られるものであり、90年代の女性に見られる太い眉毛やシャツをパンツインする男性のファッション、たけのこ族からなめ猫まで、無限の事実がこれを例証している。
しかし、ことHOT LIMITについて言えば、この法則を当てはめることはできない。僕らは決して回顧的にHOT LIMITを笑うのではないし、嘲けりよりは畏敬の念をこめてこれを愛するの
【ネタバレあり】映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』の結末に納得のいかなかった私は、しかしその物語上の巧みな仕掛けに気づいて戦慄、手のひらを返して傑作であることを確信するにいたる
久しぶりに映画館で映画を観た。『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』である。
私ははじめ、この作品の結末に納得がいかず憮然としていたのだが、のちにその仕掛けに気づくとともに戦慄し、今では傑作であることを確信している。
なぜこのような心持ちにいたったか、その軌跡を、ここに簡潔に記そう。
この作品には、とにかく魅力的な人物が多く登場する。この作品でアカデミー主演女優賞にノミネー