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世紀末のように襤褸な財布を買い換えよう

先週の金曜日、夜から新しい会社の懇親会へ向かう。3、4人くらい的な感じと思いきや、到着するとそこにあらっしゃられる方々は皆知らない人ばかりで、俄然どっきりテレビかと思った。会社名をもじもじと発声したところ、此処で合ってますヨ的な唇だったのでおずおずと座ってみる。4、5人いらっしゃる中で、わたしが会ったことがある人はひとりもおらず、得意のアルカイックスマイルを浮かべながら、嗚呼しゃちょさん早く来てくださいなーと思う。そうこうしているうちに、ちょっとずつ自己紹介したりなんかして、なんとなくどんな仕事をする方々なのかを把握していく。そして次第に知っている人も到着し、徐々に宴は始まっていく。いきなり10人くらいの名前とご担当のお仕事を覚えることは、わたしの知能指数80の灰色の脳細胞を以てしてもなかなかタフだったが、終わりも近くなるとなんとなく覚えられているような気がした。飲み会が進む中「どうして転職しようと思ったのですか?」と質問され、どうしてだっけ…?と考えた。でも会社を選ぶときにあまり迷いはなく、面接をしてくだすったしゃちょーさんの人柄に惚れたからと思いますと答えた。言葉にすると、自分の気持ちに驚いたけれど、確かにそうだったなと思った。なんだか気持ちの良い方々ばかりだったので、これからが楽しみになった。

そして土曜日、まずは午前中に1時間ほどランニングで平和島あたりへ、家の方に戻り、肉の小川総本店で良いお肉を買い、お風呂に入って料理の支度を始める。今日は牛すじカレーとレンコン炒めと胸肉をやいた奴と烏賊を焼いた奴とキノコと牛肉を炒めたやつをなんとなく作る。その後、新しい会社のSlackに招待してもらったので、ひとつひとつ読み込む。極めて難解で絶望したが、まぁ仕方ないことであるので、一つ一つ勉強していこうと思う。

日曜日は俺自身の鞄を買いにandu amet|アンドゥアメットに行き、ずっと買うかどうか迷い続けていた鞄を転職のお祝いにこうてもらった。大変ラッキーな出来事であったが、それまでの道のりは絶望の繰り返しで何度も気絶しそうになった。その日はそう、どうしても冷たいおそばが食べたかった。目黒から中目黒までの道すがら、そば屋が2軒あったが、1軒目は営業してたけどせっかくなので表参道で食べようとSTAY、2軒目は支度中で残念。3軒目は青山あたり、多少お客さんが並んでいるし、まじでそばだけ(板わさやビールなどがなさそう)なのでSTAY、4軒目は表参道の新潟のアンテナショップ「新潟食楽園」でへぎそばを食べようとするも休業中、5軒目福井県のアンテナショップ「ふくい291」でそばとソースカツ丼を食べようとするも休業。空を見上げ、空腹による絶望を持て余した。もうファミチキとかを道ばたで食べると思った。しかしながら最後の精神力を振り絞り、ほうほうの体で青山から表参道に移動、6軒目「しろう」に到着。どうせ休業か満員かそばがなくなっているだろうと期待値低めに店舗に接近したが、営業中で行列もなく(もうお昼ピークを過ぎていたので)見事、そばが食べられる運びとなった。そば屋でそばを食べられる幸福をかみしめ、満腹になり、豊かな気持ちでandu ametに行き、見事憧れていた鞄をプレゼントしていただいた。

その後、返礼品として同行者の財布を探しに行く。というのも、返礼すべき方の財布は世紀末のように襤褸で、まるで「お金と一切ご縁要りません」と言っているようなひどい状態だったので、ここはひとつ今風の小さめの財布を買おうと色々なお店を物色する。途中のお店で「今日は一粒万倍デーやで」ということをご教示いただき、その頃にはもうそばの件の疲れも出ていて、財布を買うのを諦めようとしていたが、そういことであれば俄然今日買うべきとの流れになる。そこで入ったcoachには、ちょうどよい大きさのシンプルで素敵な財布があった。お勧めしてくれるお兄さんも非常に感じが良く、的確なレコメンドをくだすったので、いっちょここで買おうぜということになる。お席に座ったところ、お兄さんが同行者のレザーの鞄をじっと見つめ「…すみませんがこちら、ちょっと見せてもらってもいいですか?」と宣う。こちらのお品は先週品川の食肉市場まつりで購入した旨を伝えると、大変いい皮でいい製品だと非常にほめてくだすったので、同行者は大変気を良くする。俺も褒めてもらいたかったので「当方、こういう鞄を買ったのですが、こちらも鑑定してもらえますか?」と先ほど買い与えられた鞄を出すと「これもまた面白い…!!」と鞄をナデナデしてくれた。そしてシープスキンは非常に繊細であり、部位によって乾燥具合も変わってくるので、しっかりお手入れを頑張ってほしい旨ご教示いただく。聞いてみるとお兄さんは世界のcoachでも数人しかいないレザークラフトマンとのこと。なんとまぁ、一粒万倍デーにこんな希有な才能をもった方からちょうど良い財布を買えるなんて、今世紀最大のラッキーマンではないか。もう宝くじなども絶対当たる気がしたし、俺も絶賛財布がほしいと思った。

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