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七月雑記 蓄光キーホルダーを探して

近所の百均で買い物をしていて、ふと、

「蓄光のキーホルダーが欲しいな」

と思った。

光を貯めて暗いところで黄緑色に光る、あの、ぼんやりとした光が欲しくなった。

キーホルダーのコーナーへ。上から一段ずつ見た。見つからなかった。もう一度隅々まで見た。無かった。

「じゃあ蓄光シールでもいいや」と思い直した。実家の天井に星型の蓄光シールが貼ってあるのを思い出した。親に抱え上げられて北斗七星を描くように貼ったのは私だったか妹弟だったか。

シールのコーナーへ。上から一段ずつ見た。見つからなかった。もう一度隅々まで見た。ぷくぷくシールに心を奪われかけた。無かった。

「蓄光ビーズだったらあるだろう」と閃いた。子供の頃、丸みを帯びた星型の蓄光ビーズで作ったブレスレットをしていたのを思い出した。あの光だ。あの光が欲しいんだ。

ビーズのコーナーへ。遠目にざっと見ただけで蓄光っぽいものがちらほらあった。上から一段ずつ見た。蓄光っぽいものは蓄光っぽいだけで蓄光ではなかった。無かった。

蓄光のものは無かった。

……おい嘘だろ?蓄光のものが無いなんてことがあるのかよ?子供の憧れだろ蓄光は!!暗いところで光るんだぞ!?……電池式で押したら光るものとかパキッと折って光るブレスレットはあったさ。でもその光じゃないだろ?あの不思議な!不思議な力を帯びているような光が!両手でつくった小さな暗やみで光るあの光が!!宝ものだっただろう!?

泣きそうになった。気を抜いたら涙がじわりと出てきそう、ではなく、これ泣くほうに気持ち持ってったら涙出るぞ、の泣きそうになった。

大人なので、泣かなかった。

大人なので、ゴミ袋を買って店を出た。

大人なので、ネットで探した。

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買った。ナイグローの蓄光キーホルダー(クリスタルクリア)。透明な筒に砂状の蓄光材が入っている。

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ネットには思い描いていた通りの蓄光ビーズもあったけれど、かっこいいほうを選んだ。子供の頃の私でもこっちを欲しがっただろう。

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これよこれ!

この、魅力というか魔力というか。

手のひらで軽く転がして眺める。わくわく。冒険の旅をしているような。枕元に置いて眺める。寝ているあいだはこれが身を護ってくれる。私がまだ姿を見ることの出来ない妖精が、周りを楽しげに飛んでいるような気がする。

あの光を手に入れた。

涙がじわりと出てきた。

富乃宝山お湯割りを呑んでいて涙腺が緩んでいたというのもある。どこが子供だ。「焼酎のおすすめの割り方でお湯割りに◎がついているのは少ないような気がするけれど一番好きな呑み方がお湯割りなんだよなぁ」じゃないのよ。


光を貯めて強く光ってゆっくりと消えていく


そこから何かの教訓を得ようとはしない。ただ暗いところでぼんやりと光ってくれればいい。


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