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四月雑記 単語カツアゲ

よく、人から単語をもらっている。

作家の仕事のひとつで、毎月30〜45個のショートコントのような案を出している。

考えること自体はとても楽しく苦ではなく、故に「後になっても大丈夫」と〆切ぎりぎりになってしまう。毎日1個ずつ出すのが理想だけれど、月末に十数個出す『つくる数日』を設ける現実になっている。それでも楽しい。

その数日にライブが入っているときは、楽屋にいる芸人(主に同期)にメモ帳片手に近づき「何かてきとうに単語3つちょうだい。固有名詞以外で」と話しかける。単語カツアゲ。

後輩に頼むときはもう少し丁寧になる。側で見ていた後輩に「注文取ってるみたいですね」と言われて、そこから居酒屋の雰囲気のミニコント混じりでラストオーダーを取るように単語をもらったりした。楽しかった。

葬式、旅行、鍋。習字、秋服、船。ペットボトル、スーツ、トート。ドライヤー、夏、キャッチボール。春巻き、初雪、エビシュウマイ、焼きうどん。

そうして巻き上げた単語ひとつひとつに向き合うと、あら不思議。するするっと案が出てくる。

ランダムに単語を出してくれるサイトがある。次々と単語が出てきて、自分の思考の歯車とカチッと合うと量産出来る。

人からもらった単語は「せっかくもらったから使いたい」「この人が出した単語だから噛めば旨味が出てくるはずだ」と単語をしがむ時間が長くなり、過去の案とは違う角度の案が出る確率が高い。先輩からいただいた単語は考えるギアがぐっと上がる。ありがたい。私は先輩にもカツアゲをする。

どちらの方法も利点がある。

人から単語をもらう一番の目的は「ちょっとだけかまってほしいから」かもしれない。

支援していただけると嬉しいです。 きらきらの物を触って手にきらきらが付いたときくらい嬉しいです。