エース・トラッポラについての妄想(捏造過多)

 毎日毎日毎日、寝ても覚めてもエースのことを考え、トラッポラ家のことを考えてついに何か見えないものが見え始めて、それが点と点で線となって「あ、これ、いったんまとめないとだめだわ」となり始めました。
 どうも、はじめましての方は初めまして、すでにお見知りおきの方はこんにちは、こんばんは。エース推し(※最推しではない)の遊覧です。

 このたび自分のエースについてのツイートがざっと2000を超えまして、これいったん全部整理しないとだめだ……となって本腰をあげた次第です。
 これまで考えてきたエースのモチーフやら、そこに関係ありそうなものやらを色々集めて詰め込んだので、文字数がすさまじいことになってます。ますが、はい、気にしないでください。
 あと整合性とか考えず、思ったことを思っただけ書き連ねているだけなので、この考えは筋が通ってないとかこじつけすぎるとか思う方もいるかもしれません。はい。
 ですが、これはあくまで私のメモなので……当たっているとかどうとかについては一切を責任を負いません!! 私は楽しいからしているだけです。

それを理解した上でお読みくださいませ。では問題ないという方のみお進みください!


*エース・トラッポラとアリスの関係性

 エースとアリスは酷似している……というのはすでにさんざん考察されているのですが、それでも私のツイートのほとんどがここから派生しているので、改めて重要な前提として確認します。
 なぜエースがアリスモチーフのキャラと考えたのか、その大きな理由は以下のとおりです。

『夢のアリス、汝は汝の養父の目に何者として映るであろうか。 彼は汝をどのように描いたらよいだろうか。
 第一に愛らしさ、愛らしさと優しさだ。犬のように愛らしく(散文的な比喩を許してほしい。私はこれほどに純粋で完全なこの世の愛を知らないのだ)、そして仔鹿のように優しい。
 それから礼儀正しさ。あらゆるものに対して、上のものにも下のものにも、偉容を誇るものにもグロテスクなものにも、王にも芋虫にも、たとえ彼女自身が王女であり、黄金を身にまとっているようなときでさえ、礼儀正しい。
 それに信じやすさ。もっとも狂気じみた不可能事を、夢想家だけが持つあの完全な信頼を持って受け入れる。
 そして最後に好奇心だ。子供時代の幸せな一時期にのみやってくる、この世界を愉しむことへの熱望を伴った激しい好奇心。その幸せな子供時代には、罪も悲しみもただの名前であり、まだ何も意味を持たない空の言葉に過ぎないのだ!』
 このような愛らしさ、優しさ、礼儀正しさと好奇心に加えて、両作中では自分が習い覚えていることを進んで披露しようとしたりする優等生らしい面や(彼女は自分の知っている教訓詩を暗誦しようとするが、不思議の国や鏡の国では決まっておかしな内容になってしまう)、一人二役を演じて自分自身を叱ったり諭したり、子猫を相手にごっこ遊びに興じる空想好きな側面も描かれている。そして不思議な世界の奇妙なキャラクターたちの不条理なふるまいに動じない、気の強さを持ち合わせた少女でもある。

アリス(不思議の国のアリス)/wiki

 また彼女はキャロル曰く「若さ」「勇敢さ」「健康さ」、そして「目的に対する迷いのなさ」を兼ね備えているようだ。
 さてエースですが。

 愛らしさ:先輩たちから可愛がられる。
 優しさ:1章でリドルを殴ってする必要もない説教をしたり、5章、エペルを無理やり引きずっていくヴィルを止めようとする、ノベライズ…(そのほか多数)
 信じやすさ:トレイのオイスターソースに騙される
 楽しむことへの好奇心:「この学園って娯楽がなさすぎじゃね? 遊ぶ場所が全然ないじゃん! カフェはー? ライブはー?」という発言や、VDCに参加しようとする。
 若さ・勇敢さ・健康さ・目的に対する迷いのなさ:即断即決及び誰に対しても一歩も引かない。

 以上の条件を満たしています。
 また唯一当てはまっていない「礼儀正しさ」ですが、キャロルのいうアリスの礼儀正しさとは【誰であっても態度が変わらない】ことに起因するため、誰は相手でも一貫した態度のエースはある意味で“礼儀正しい人物”と捉えることが出来ます。

 またこれ以外にもエースとアリスの共通要素は多々存在します。
 例えば、戦闘開始ボイス「オッケー、すぐに摘んでやるよ」は、劇中で、小さくなって花たちにいじめられたアリスが「一本残らず摘んでやるわ!」と憤慨するシーンの台詞に似ていて
 1章では、映画のアリスと同じように、魔法を使わず白薔薇を手で赤く塗ったり、寮服SSRイラストのクロッケーのフラミンゴの色がアリスと同じピンクだったり、「こんなワガママな暴君こっちから願い下げだ!」とハートの女王に反逆したり。
 またハーツラビュルで唯一の兄持ちの彼は、兄と七歳差です。
 エースの入学時の年齢は16歳なので7つ年上の兄は23歳、そして原作映画のアリスは7歳で16歳年上の姉がいて、姉の年齢は23歳になります
 これらの要素を総合するに、エースはどうもアリスを意識して作劇されたキャラであると言えそうです。

 なお、元ヤン時代に金髪碧眼であることから、アリスでは? と言われているデュースもいますが……、彼はラビフェスで白うさぎの衣装を着ました
 まら、リドルの名前は、アリスの元ネタ:アリス・プレザンス・リデル(英語ではリドルと発音)に似ています。
 (なおエンドロールで確認したが、ディズニー映画において、アリスの名字は記載されていない。wikiではなぜかリデルと表記されているが……?)
 また、リドルの愛馬の名前が、実写映画でアリスが振るっていた剣:ヴォーパル・ソード由来と思われる「ヴォーパル」だったり
 アリスは迷子になったときに「言われたことを聞けばいいのに無視して」と後悔するのですが、リドルも同じようにタルトを食べなければ・言いつけを守っていればと後悔しました。
 加えて、原作映画の冒頭の台詞をオマージュしたと思わしき「そんなやつらはボクの世界にいらない」「ボクの世界はボクこそが法律」というセリフも述べています。
 
 これらを見るに、エース、デュース、リドルの全員にアリスのモチーフが含まれているのでは? と考えられます
 しかしやはりその中でもエースのアリス要素はほか二名と比べても、やはりやけに多いように思われます。これはなぜか?
 次項目を踏まえてさらに詳しく考えていきたい。

*エースとジョーカー、キャロルの関係性

 さて、まずハーツラビュルの特性として、スートによる親の職業の決定というのがある。そもそも、スートごとに職業やら四季やらの特性が存在するが……。
 ここで改めてスートの意味について確認する。

 第一に、トランプ、あるいはタロットの小アルカナに書かれているマークのことをスートと呼ぶ。
 スートはフランス式やラテン式、ドイツ式などいくつか種類がある。
 もっとも有名なのは日本のトランプでも使われているフランス式(英米式)であろう。この場合のスートは【スペード/ハート/ダイヤ/クローバー】の4つになる。
 一方、小アルカナタロットで使われるのはラテン式といい、スートの種類は【剣/聖杯/硬貨/棍棒】の4つになる。このうち、エースの名前にもなっている”トラッポラ”はラテン式スートに対応している。
 さてそれを踏まえたうえで、それぞれの意味と対応表を見てみる。

 スペード(→ソード/剣):死(意味):王侯貴族・騎士・軍人(職業階級):冬(季節):風(星座・四大元素)
 ハート(→カップ/聖杯):愛(意味):聖職者・僧侶(職業階級):秋(季節):水(星座・四大元素)
 ダイヤ(→コイン/硬貨):貨幣(意味):商人(職業階級):夏(季節):地(星座・四大元素)
 クローバー(→クラブ・ワンド/杖・棒):知恵(意味):農民・労働者(職業階級):春(季節):火(星座・四大元素)

 大きく気にかかる点として、エースは「風魔法」が得意である。
 しかし風が対応するスートはスペードである。また、デュースが召喚するコルドロン(大釜)は聖杯の近似値である。(詳しい説明はエースと聖杯の段にて)
 このため、エースとデュースで何らかのスート交換が起きているようだが……。実は原典でもスートの意味交換が起きている。
 原典小説『不思議の国のアリス』では、トランプのスートが意味する職業とキャラクターたちの職業階級がずれている。
 例えば、剣・王侯貴族・騎士・軍人を意味するスペードのカードが庭師
 棍棒・農民・労働階級を意味しているクラブのカードが兵士
 貨幣・商人を意味しているダイヤのカードが廷臣
 聖職者・僧侶を意味しているハートのカードが王子や王女
 見てのとおり、少しずつだがずれている。エースとデュースのスートが交換しているのはこれが理由だったのかもしれない。
 閑話休題。
 さて、まだ不透明な部分が多いエースを除いた、ハーツラビュルの親と職業の関係性は以下のとおりである。

 デュース=騎士=警察(将来の夢)
 リドル(ハート)=僧侶・聖職者=医者
 トレイ=農民=ケーキ屋(労働階級)
 ケイト=商人・貨幣=銀行員


 デュースの職業階級だけが親ではないが、彼のモチーフの一つに『トレジャー・プラネット』の主人公ジム(ジェームズ・プレアデス・ホーキンス)の存在があるのではないかと私は考えている。
 ジムは血のつながらない男:シルバーを親のように慕う。この法則に則り、デュースの尊敬する人間【警察官】が疑似的な父と考えると、スートと職業の関係性に一本筋が通る。
 そしてこの法則に基づくと、エースの親の職業、あるいは特性もまたスートから算出されると考えられる。
 エースの父親の大きな特徴は『手品ができる』こと。そこから職業を派生すると手品師、エンターテイナー……宮廷道化師になり、対応札がジョーカーとなる。
 * * *
 ここからは捏造多めだが、現在風に宮廷道化師をアレンジするならば、小説家になるのではないかとは思ってる。
 というのも、宮廷道化師の役目は歌や音楽、奇術などの芸を披露するエンターテイナーである、と同時に当時の出来事・人物を風刺した歌や話を作る創作家でもあった。
 そしてアリスの作者:ルイス・キャロルの小説は、ユーモラスだがたびたび風刺的であり、当時の女王に気に入られていた。
 また、アリスとマジックには、とあるつながりがある。
 「ルイス・キャロルの図形マジック」だ。
 数学が苦手なので詳細は省くが、これは図形のパラドックスの一種であり、図形消滅パズルと面積消滅パズルを組み合わせている。これはルイス・キャロルが創案したものとも、パズル作家で有名なサム・ロイドが創案したとも言われている。
 加えてルイス・キャロルは手品が得意であったという文章も見つかった(ソース不明)。
 これらを総合して、私はエースの父親はルイス・キャロルがモチーフなのではないかと考え……。
 そこで私がたびたび提唱している「エース養子説」が出てくる。
 「舞台の上のアリス」においてキャロルは自らをアリスの養父と記している→dream-Alice, in thy foster-father’s eyes?
 アリスと彼が親子関係であったことはないが、彼の気持ちとしてはアリスを実の娘の如くいとおしんでいたのだろう(キャロルは職業の都合上、妻子を持てなかった)。
 キャロルモチーフの父、アリスモチーフの息子、こう仮定したとき、二人の関係は「養父―養子」という図式になる。つまりエースはなんらかの理由で親を亡くして今の父親に引き取られた養子ではないだろうか……?
 そういう妄想も出来る。

 ただ一方で、ルイス・キャロル(本名:チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン)の先祖は、軍人か聖職者という英国の上層中産階級における2つの伝統的職業に従事していた。
 父親もまた例外にもれず、聖職者として出世した人物であった。
 しかしキャロルは父と違い、数学および論理学の大学講師の職についた。
 この職は結婚すると退職を余儀なくされる職業であり、つまるところ、キャロルは生涯独身であった。
 ……もっとも独身ではあれど、浮名を流さなかったわけではないらしい。
 しかしキャロルは聖職者でもあったので、女性と浮名を流すのはまずいということで噂を一つ一つもみ消されたところ、アリスのような少女たちとの親交関係しか残らず、ロリコンという不名誉な噂が流されるに至ったようだ。かわいそう。

 エースの得意科目は魔法解析学であり、5章での暗算は中々にはやかった。そしてスートのハートの特性的に、親が宮廷道化師ではなく”聖職者”とも考えられる。
 これらを総合すると、エースにキャロルモチーフとも考えられるかもしれない。
 だとすると、IFのフェアリーガラで、エースはレオナに「リクガメのよう」と称されたのは、たまたまではなく脚本の作為なものかもしれない。

 Dアニメ映画版にカメは出てこない。しかし原作小説『不思議の国のアリス』には出てくる。といってもリクガメのキャラクターが出てくるのではない。
 アリスはハートの女王に命令されてニセウミガメに会いに行く。彼は幼いころに受けた授業の話をアリスに聞かせるのだが、その時の教師であった老いたウミガメを”リクガメ”と呼んでいた。(詳しい理由は原作で)
 先述したようにキャロルは大学講師であるため、もしもエースが、「これからさき教師になりたい」と言及すれば、エースにキャロルモチーフが含まれている可能性が高くなるのだが…?


*エースと聖杯、ツイステと聖遺物

 さて、先に言い訳しておくが、私は聖書に詳しくない。
 『旧約聖書』と『新約聖書』の大まかな流れは知っているが、新旧どっちがどっちかもよく覚えてない。『罪と罰』に書かれているところは覚えてる。そんな知識皆無の女である。
 それを踏まえたうえで見ていただきたい。

 エースのスートはハートである。しかし彼は他のハーツラビュルキャラ(出身地:薔薇、又は輝石)と違って”トラッポラ”である。
 トラッポラとはヴェネツィアで生まれたカードゲームであり、使用されたカードはトラッポラ専用のものがあった。この専用カードのスートはポーカーや大富豪のフランス式(英米式)とは違い、ラテン式スート/イタリアタイプにのっとっている。
 そして専用カードの構成は、スートは4種類【剣/杖/カップ/貨幣】、絵札は【王・R/騎士・C/歩兵・F】、数札は【1(A)・2・7・8・9・10】で、フランス式の52枚(+α)に比べて合計36枚である。
 ここでエースと、他のハーツラビュル寮生の間に明確な違いがあることがわかる。
 ラテン式とフランス式という大きな違い。そしてラテン式のカップのエースと、フランス式のハートのエースには明確な違いがある。
 それはラテン式のカップのエースに、聖杯が描かれている点である。
 四大元素の水を司り、聖遺物の聖杯をかたどったカップのエース。今回はタロットのなかでも特に有名なウェイト版の寓意画に則って考える。

 さて、ウェイト版のカップのエースは以下の通りだ。
 描かれているのは雲から伸びる手、その手のひらの上にのっている、水が噴水のように噴き出た聖杯(逆さのMが刻まれている)。
 そして、その聖杯に向けて十字架が刻まれたパンを咥えた白い鳥が飛翔しており、水面には睡蓮が浮かんでいる図である。

 まずカップ全般に共通することとして、水は人間の感情の揺らぎや生命の豊かさの象徴である。それが聖杯からあふれている。
 このあふれた水は自己の外に向けての感情であり、タロット占いにおいてカップのエースの正位置は「慈愛」「見返りを求めない真実の愛情」「幸福」「満ち足りた状態」を意味することが多い。
 次に、逆さのMはヘブライ語のメム(水を意味する)の暗喩。
 そして、白い鳥と十字架とパン。完全にキリスト教である。
 パンはミサで使われる聖体を意味する。
 『新約聖書』で、最後の晩餐が行われた。その際にキリストはパンを「これがわたしのからだである」といい、杯に注がれたワインを「これがわたしの血である」といって弟子たちに与えた。

 また、パンを運ぶのは愛と平和を象徴する白い鳥の鳩だが、『旧約聖書』「ノアの箱舟」にて活躍している。
 ノアは地上から水が引くとまず鴉を放った。しかし鴉は戻らなかった。なので7日後に鳩を放つと、鳩はオリーブを咥えて舞い戻ってきた。さらに7日後に鳩を放つと今度はもう戻ってこなかった。ノアは安心して地上に降りた。なおD社はこれをもとにしたアニメを『ファンタジア2000』うちの「威風堂々」で手掛けており、白い鳥がオリーブの木を運んできている。
 十字架は…言うまでもないだろう。

 しかしと皆様思うだろう。いやいやエースのモチーフ元がいくら聖杯と関係していようと、別にエース自身が聖杯と関係する余地はなくない? と。
 実際その通りである。
 だが面白いことに、聖書、または聖杯とツイステを結びつけるキャラと作品が揃っている。その人物は以下の通りだ。

*デュース・スペード:「いでよ、大釜!」→コルドロン
 「ブラック・コルドロン」の元ネタになったと思われるのは、シェイクスピアの「マクベス」に登場する三人の魔女と、ケルト神話の伝説の宝:ダグザの大釜である。
 前者は魔女たちが未来視の力を持つが、後者のダグザの大釜は、無限に食料が湧く豊穣の証であり、一部伝承ではこの釜で死者を煮ると死人が蘇るという。「コルドロン」ではまさしく、不死身の戦士を作るためにこの大釜を利用されていた。
 しかし映画「コルドロン」でこの大釜を起動するために命を擲つ必要があり、実際にガーギがその命を擲ったのだが…。大釜の起動に命が必要という伝承は見当たらなかった。考えるにこれはアーサー王でも有名な「聖杯伝説」と融合したからではないだろうか。以下、RSAの項目で触れる。

*RSA:王様の剣
 「王様の剣」はウォルトが最後に見た自作アニメ映画であり、作中に出てくる魔法使いの名前がマーリンであることから分かるように、アーサー王伝説をもとにした作品である。
 さて先に述べるが「王様の剣」に、聖杯伝説は一切出てこない。
 あるのは魚への変身と、リスの求婚と、マダム・ミムとの決闘と、謎の選定の剣である。それを承知の上で続けるが、アーサー王伝説の多くは聖杯探求物語である。
 聖杯にはいくつか種類がある。
 ひとつは儀式(聖餐)に用いられるただの杯/カリス。
 ひとつはキリスト教の聖遺物のひとつ。最後の晩餐に使われたとされる杯/ホーリーカリス。そして最後の一つが聖杯伝説に登場する杯/グレイル、またはホーリーグレイル。
 下二つはほぼ同じものとされている。
 さてキリストや聖母マリアの遺品、また諸聖人の遺骸や遺品などを聖遺物と呼ぶが、これらは神の恩寵を授け、奇跡を起こすと考えられていた。
 聖杯もそのひとつであり、病気やケガの治癒、死者をよみがえらせるなどの奇跡をもたらすほかに、通り過ぎると音楽が鳴る、美味かつ大量の食事をもたらすなどの伝説があった。
 これらの元ネタになったのが先ほど挙げたダグザの大釜の存在だ。アーサー王伝説はケルト神話の要素を取り入れていたので、その影響とみられる。
 さて、この聖杯発見に成功する騎士にはガウェイン、パーシヴァルなどいろいろいるが、一つ絶対にクリアしなければいけない条件がある。それは聖杯を手に入れるものは清らなものでなければいけない――つまり童貞なのである。
 なので聖杯発見の騎士にはブレがある。なにせ絶対に童貞でいないといけないのに、書籍によっては普通に子供を作ってるものもいるので。
 しかしその中でも聖杯といえば、という騎士がいる。

 その名前はガラハッド。ランスロットの息子である。
 今回参考にするのはマロリー版のガラハッドの出生だが、
 実の娘:カーボネックのエレイン姫とランスロットがどちらもアリマタヤのヨセフの末裔と知ったペレス王(エレインの父)。二人をくっつけようと画策するも、ギネヴィア一筋のランスロットは全くエレイン姫に振りむかず。
 ついに王は最終手段としてワインに薬を盛って、ランスロットとエレインを結ばせる。結果生まれたのがガラハッドなのだが……。
 ここに出てくるアリマタヤのヨセフは『新約聖書』に登場し、イエスの遺体を引き取った人物である。彼は後に出てくる聖杯伝説と結び付けられ、イエスの血を受けた聖杯を持って英国に渡ったとされた。
 ガラハッドはまさに、聖杯を手にするよう望まれて生まれた子なのである。そして母のもとで養育され、修道院で騎士として訓練された彼は、アーサー王に仕える騎士を志願。
 裏切り者が出ないようにと呪われた円卓の十三番目:災厄の席に見事に座ってみせたことで、聖杯探索を命じられる。
 その後、ガラハッドは見事に聖杯を持ち帰るも「世界でもっとも偉大な騎士」にして「もっとも穢れのない騎士」であったため、アリマタヤのヨセフを目撃し、昇天を望む。ヨセフはその願いを叶え、ガラハッドは天使によって昇天された。
 「コルドロン」においてガーギが大釜に命を擲つのは、この部分に符合しているからではないだろうか? さてあともうひとつ、ツイステと聖杯を結び付ける存在がある。

*リリア・ヴァンルージュ:『新約聖書』「最後の晩餐」とマリア
  たびたびいわれていることではあるが、リリアはそのモチーフにチェルナボーグがいる可能性が高いと思われる。
 知らない人のために補足を入れると、チェルナボーグとはスラヴ神話の死神である。しかしその実態は杳として知れず、その名は「黒い神」を意味しているのでは? ということだけが伝わった全く謎の神様である。
 そんなチェルナボーグだが、「ファンタジア」のヴィランズとして、ちゃっかり名前を連ねている。以下リリアと彼の共通点。

*長編Dアニメにおいて、コウモリで名前のついたヴィランは「オリビアちゃんの大冒険」のフィジットのみ。「眠れる森の美女」にも蝙蝠はいるが、チェルナボーグは蝙蝠を使役していると思わしき描写がある。

*マレウスのスケアリードレスPS2話にて
 はげ山で魔族を支配する王、漆黒の巨大な体、大きな翼、鋭い眼光と述べられており、”高尚な存在”と明言されている

*「ファンタジア」八曲収録
 チェルナボーグが出てくるのは7番目の「はげ山の一夜」であり、8番目の「アヴェ・マリア」とアニメーションとして繋がっている。チェルナボーグは闇を好み、その後、日の光によってその姿を消す。→リリアはなぜか日光を嫌っている描写がある。

 さてこれを踏まえたうえでもう一歩踏み込む。まずリリアはその名前からして、聖書がモチーフに含まれていそうなキャラである。

*ヴァンルージュ(Vanrouge)
 →バンルージュ(仏語:Vin rouge)……赤葡萄酒・ワイン=イエス・キリストの血。”聖杯”に注がれるもの

*リリア→リリー(白百合)+マリア?
 白百合は聖母マリアの象徴として描かれ、受胎告知する際の天使ガブリエルは、絵画において度々この花を携えているという。ところで聖書で有名なのは聖母マリアだが、もう一人のマリアが存在する。
 マグダラのマリア。
 イエスによって七つの悪霊を追い出され、彼の死と復活を見届けた証人である。聖母マリアが真実を意味する青や紺色の衣をまとっているのに対して、彼女は緑色の下衣、朱色のマントを身につける事が多いという。
※ルーマニア語でコウモリは【Liliac】といったり、オーロラ姫の母…王妃の名前が【リア】であるため、こちらが由来の可能性の方が高い

 また、リリアが嫌いなものはマシュマロである。
 マシュマロの語源「マーシュマロウ(marsh mallow)」は日本語に変換すると、薄紅立葵という花になる。
 立葵は別名「ホーリーホック」とも呼ばれた。このholly hockの由来は、キリスト教徒の聖地パレスチナの花から持ち帰った「聖地の花」として十字軍がヨーロッパに持ち込んだから、らしい。

 …ここまでくると少し示唆的なものを感じざるを得ない。
 名前の由来が赤ワイン+マリアを連想させる白百合/リリーとマリアの組み合わせ+聖地の華に関係あるマシュマロ。
 
 さてそんなリリアだが、実はエースと一つ異様な共通点がある。
 おめかしグルーヴィーイラスト、どのイラストにも誕生日の主役以外の人物の服、手、あるいは顔などが映りこんでいる。デュースならエース、ケイトならエース、レオナならラギー、アズールならジェイドのように、誰かしらが誰かしらのイラストに入ってきている。
 しかしその中で、エースとリリアはおめかしグルビ絵に誰も映り込んでいないのである。誰も、うつりこんで、いないのである!!!
 これはなぜか。現時点ではっきりとした理由は分かっていない。

 私はエースもリリアも、いざというときに腹を割って頼れる相手がいない、素の顔を見せられずに自分一人で無理をしてしまうと考えているが、重要なのはエースとリリアに、明確に運営が共通点を作ったところだ。
 そしてエースとリリアというなんの脈略もないキャラを結びつけるとすれば、それはもはや赤ワインの聖杯しか……ウッ、頭が!!!

 つまり総合すると「エース―聖杯」の関係性は不透明な部分が多いが、「聖杯-Twst」「リリア―聖書」は節々にモチーフらしきものが見受けられる。聖書と彼の間に何らかのつながりがある可能性は高いだろう。
 ツイステはいまだ宗教の概念が出てきていない。これは既存の宗教であるキリスト教の祝祭にあたるイースター、クリスマスやバレンタインが存在しないという話しではなく、土着信仰といった類ですらカットされている。
 もともとディズニー映画自体に宗教が出てくる作品が少ない…というのもあるのだろうが

 ここまで宗教の存在を意識させないのは、7章、リリアを含むディアソムニアで信仰の意義について問われるからではないだろうか?
 そしてエースはそこで重要な役目を担っているのではないだろうか…?

  という妄言である。
 なお、これは完全な余談だが、カップのエースの水面にはロータス、睡蓮が浮かんでいる。
 これは清らであることの象徴だが、エンハロシルバーはリリアの思い出話として「蓮の葉の上を走る」という話を聞かせてくる。
 また、まさかのIFガラで蓮のランウェイを歩くエースくんという神々しいグルーヴィーが追加された。葉に切れ込みがない、水面より上で咲いていることから、睡蓮ではなく蓮とみていいだろう。
 睡蓮と蓮は厳密に言えば違う花であるが、一見すると見分けがつきにくいので混同されがちである。また、英語ではどちらも”ロータス”である。
 そのため、稀にだが、タロットのカップのエースに蓮が描かれているパターンもある。
 蓮の花の季節はたいてい夏なので、フェアリーガラの春の祝祭というテーマに相応しくないことを考えると、蓮―シルバー、及びリリアになんらかの示唆的含みがあると考えられる。

 しかしそうなると気にかかるのが、なぜ睡蓮にしたかである。
 今回の祝祭であえて外したかは知れないが
 睡蓮の学名の【Nymphaea】は、ヘラクレスを愛していたが彼に捨てられた悲しみで端となった水の妖精:ニンフ(Nymph)が語源である。
 また昔こそ、ロータスといえば蓮も睡蓮も含まれていたが、今は分かりやすく区別されていて、蓮が【lotus】、睡蓮は【Water lily】と訳されることが多い。
 妖精たるリリアの養い子シルバーや、他妖精の歩く道という面なら睡蓮の方が適当に見えるが…?

 なお、スートの聖杯はたいていがカップ(cup)呼びだが、中にはチャリス(chalice)呼びもある。ばらしてみるとびっくり、
 【CH+Alice】となり、聖杯にはアリスが含まれている、なんて言葉遊びが出来たりする


*エースと23、あるいは13の関係性

 エースは9月23日が誕生日なのだが……カウントダウン絵において、彼が割り振られた数字は「23」。本来生徒ではない学園長を「1」においてわざわざカウントしているあたり、制作陣はどうしてもエースと「23」を結び付けたいと考えられる。
 しかしなぜ「23」なのか?
 これについて調べたところ、D23という言葉が見つかった。D23とは公式のディズニーファンクラブのことで、名前の由来はディズニーのDとウォルト・ディズニーが会社を設立し、はじめて手掛けたシリーズアニメ『アリス・コメディ』シリーズの放映年:1923年の数字に基づくようだ。
 そう1923年である。
 ここでエースを一度見返してみよう。

 ハートのエース(A/1):9月23日生まれのぴかぴか新一年生

 つまりエースに「23」が重ねられているのは、D社の始まりの番号・年数を表しているからと考えられる。
 ここで上述したアリスモチーフに『アリス・コメディ』シリーズが加わり、エースと23に密接な関係が出来上がるが…。

 エースにはもう一つ気にかかる数字との関連性がある。
 エースたちのモチーフ元である『ふしぎの国のアリス』はD社が手掛けた長編アニメで十三番目である。
 そしてエースの名前「トラッポラ」に含まれた意味が裏切り者であるとすると、「13」という数字に縁が深くなる。
 原初の裏切り者、十二使徒のひとりでありながら「最後の晩餐」の十三人の中で唯一心が別にあった”イスカリオテのユダ”。
 D社はすでに「アナと雪の女王」のハンス王子に裏切り者の証左として、第十三王子という図式を当てはめている。裏切り者→13という図式も整っていると考えられる。
 なお、ゴスマリイベの元ネタである、ホーンテッドマンション/ファントムマナーでのスタンバイ時間は不吉な数字に肖って「13分」だったり…。
 また、これは完全な余談であるが、ウォルト・ディズニーは「13」が好きな数字であったという俗説がある。
 「13」はアルファベットでMにあたり、ディズニーランド「キャンプ・ウッドチャック」のキャストが身に着けている”1313”はM・M/ミッキーマウス(Mickey Mouse)を意味しているのでは……とも。
(ところでさっきカップのエースに「M」が記されていたな。ははっ!)


*スケルトン ~~エンドレス・ハロウィン~~

 エースは2022年4月現在、おめかし・ユニオンといったカードを除くと二つのイベントカード(限定衣装)が実装されている。
 ひとつはゴーストマリッジの花婿(SSR)、そしてもう一つは『エンドレスハロウィン』で実装されたスケアリードレス(配布SR)である。
 このうちの後者に注目して考察する。
 といってもスケアリードレスは寮全員でおそろいであり、ハーツラビュルのスケアリーSSRはリドル・ケイトの二人であって、エースではないのだが……。どうもこのスケルトン配役、エース……というかトランプのジョーカーに関係があるようなのだ。
 これもあくまで予想の域を出ないが……ひとつひとつ詳しく解説する。まず第一に、7寮のスケアリードレスはそれぞれ以下のとおり。

 ハーツ:スケルトン(骸骨の踊りか)
 サバナ:幽霊船の海賊(フック船長+パイレーツ・オブ・カリビアン)
 オクタ:マミー(不明。大英博物館において人魚のミイラが飾られているが……)
 スカラ:狼男(不明。イントゥ・ザ・ウッズか。あるいは狼男→狼少年=嘘をつきすぎて本当のことを信じてもらえなくなった存在=映画版アラジン?)
 ポム:吸血鬼(不明。ホーンテッドマンションに、棺の中に閉じ込められた吸血鬼がいるが……。著名な吸血鬼、かつ美に執着した存在といえば、女吸血カーミラ、元ネタ:エリザベート・バートリー?)
 イグニ:ジャック・オー・ランタンと首無し騎士の合わせ技
 鬼火伝承の一つ、ウィル・オ・ウィスプ/イグニス・ファトゥス(愚者火)からの連想か→パンプキン騎士(イガボード先生とトード氏)
 ディア:龍(ムーランのムーシュー。wikipediaのオーロラの項目によれば、古代中国ではオーロラは天に住む赤い龍に見立てられていた、とのことだが?)

  見ての通りだが、元ネタがはっきりしているもの・していないものに分かれており、何故そのコスプレを選んだのかが分からないが……。ハーツのスケルトンはかつてのディズニーが公開したある作品に基づくのではないか?
 1929年8月22日公開の『骸骨の踊り』である。
 この短編アニメ内容は真夜中の墓場で人骨たちが踊りを披露するというもので、音楽は前半部分がサン=サーンスの『死の舞踏』 、後半部分がグリーグの『小人の行進』をそれぞれ編曲したものとなっている。
 さて、後半の『抒情小曲集』第5集 作品54の3『小人の行進(妖精トロルの行進)』と違い、前半部分の『死の舞踏』はスコア冒頭でフランスの詩人であるアンリ・カザリスの詩が引用されている。
 その大まかな内容をまとめると、「深夜0時、死神が墓場に現れ、ヴァイオリンを弾き始める。骸骨たちはその音楽に合わせてワルツを踊るが、朝を告げる鶏の声で墓場に帰っていく」になる。
 ディズニーがこの内容を踏まえて『骸骨の踊り』を作り出した可能性は非常に高いとみえる。なにせアニメ『骸骨の踊り』の終わり方も全く同じで、鶏の鳴き声を聞いたことで彼らは墓場に戻っていくのだから
(気になる方はyoutubeで見てほしい。公式Walt Disney Animation Studiosで「Silly Symphonies The Skeleton Dance」のタイトルで公開されている)

 さて詩人カザリスは、なにも突然『死の舞踏』についてのインスピレーションを得たわけではない。彼がその思考を得る下地……すなわち寓話がフランスには伝わっていた。それこそが死の舞踏である。
 中世末期、ペストの流行や100年戦争によりおびただしいほどの死者が出た。大富豪も貧者も悪人にも善人にも等しく死はふりまかれ、”死は万人に対して平等である”ことを知らしめた。結果ペストが収束し事態が落ち着き始めたフランスで一つの思想が流行り始めるようになる。
 すなわち「メメント・モリ(死を思え。死を忘れるな)」である。
 この思想の広まりに合わせて、15世紀ころから『死の舞踏』と呼ばれる寓意画が盛んに描かれるようになった。
 『死の舞踏』に主に描かれるのは”死の象徴である骸骨”……それも年齢や身分、職業を問わずありとあらゆる骸骨たちが踊りながら墓場へ歩いていく姿であった。彼らのほとんどは生前の姿を失っているので、その服装や持ち物で生前の身分・年齢を判断するしかできない。完全な個人性を省かれた、死者としての群れが描かれているのである。なお、骸骨は墓穴を掘るためにスコップを持っていることが多かった。
(言うまでもない事だと思うが、ハロウィンハーツ寮生たちはスコップを持っている)
 この伝承は後に迷信となり、フランスではハロウィンの夜になると、死神が墓場の骸骨たちを起こして夜明けまで踊り明かすのだと信じられるようになった。
 これが、カザリスがあの詩を作曲するきっかけになったわけであるが……この『死の舞踏』は影響力はすさまじく、後のウェイト版タロットやアレイスター・クロウリーが作成したトート・タロットの死神に大きな影響を与えた。

 大アルカナ22枚のうちの13枚目、不吉の象徴「死神」。
 マルセイユ版は片足に台地が突き刺さった、大鎌を持つ骸骨が描かれている。対してウェイト版は、白薔薇の旗を掲げ馬に乗った骸骨の騎士の足もとに死人が横たわっている。これは死の行軍を表しているとされる。そしてトート・タロットの場合は死の舞踏を舞う漆黒の死神に変更されている。
 総合して【死神―骸骨―死の舞踏】に何らかのつながりがあることに間違いはないだろう。
 ところで皆さま、こんな俗説をご存知であろうか。トランプのジョーカーが転じて死神となり、さらに以降の札が作られたという説だ。
 これはジョーカーの絵札と愚者(0)の札が似ていること、マルセイユ版の死神(13)は愚者をもとに作成されたと思わしき図柄であること。それからジョーカーのもとになったであろう宮廷道化師(ジェスター)が愚者のもとになったと思わしきことや、中世の死神はよく道化師の服装で描かれたことなど、様々な情報の積み重ねによる説だと考えられる。
 いまのところ確かなソースは見当たらなかったが、……これらの要素によりある種の連想の糸【ジョーカー/道化師―ジェスター―愚者(0)―死神(13)―死の舞踏】ができる。

 さてここまで「死神(13)」を強調してきたからこそ、第三の選択肢が浮かんでくる。トラッポラには裏切り者という意味がある。そして13という数字と裏切り者が組んだとき、一人の人物が考察に出てくることになる。

 そもそも不思議だったことがある。
 エースは何故、テラコッタ色の髪の毛なのだろう? と。
 リドルはハートだから赤、トレイはクローバーだから緑、ケイトはダイヤだから黄色(というより橙に近いが)、デュースはスペードだから青として、くすんだ赤ともいえるテラコッタがエースに当てられたのは、何故なのだろうと。
 ジョーカーだから、赤と黒を混ぜ合わせた色なのだろうか。
 しかし最初の考察に述べたように、エースのモチーフはアリスと思わしき言動が多々見られる。どうせなら金髪でもよかったのではないか。
 アリスではいけない理由があるとしたら……アニメ版のセイウチと大工の大工の髪の毛、あるいは実写版アリスのマッドハッターの髪色に寄せたか。しかしそれをする理由があるのだろうか。
 かねてよりずっと疑問だったが、少し前に褐色と中世について調べていたとき、地獄の文章が見つかった。
 ――赤褐色はユダと。
 これまで述べてきたが、ツイステにはところどころに聖書と関係がある・モチーフと思わしきキャラ(リリア)がいる。そしてエースはハートのカップ(聖杯)という小アルカナ、13という数字に縁が深い。付け加えるなら彼はトラッポラであるがゆえに、裏切り者を疑われている。


 さぁ、ここからが本当の地獄の妄想、捏造過多祭りである。

*とても有名な13番目の裏切り者

 さてまず第一に、聖書において黄色が忌むべき色ということは言うまでもない。たとえばあの有名な、ユダがキリストを裏切ったまさにその瞬間を描いたとされる『ユダの接吻』で、ユダは黄色い衣をまとっている。
 これは『中世フランス語の「fauve(フォーブ)」は黄褐色を意味する言葉であったが、黄色が金や狐を連想させたことから、次第に負のイメージを持つようなり、比喩的に「裏切り」という意味を持つようになったからだ』と考えられている。その影響は知らないが、黄色のカーネーションや黄色の薔薇といった、黄色の花の花言葉には不吉な意味が多い。

 そして第二に、裏切り者のユダや、人類で最初の嘘つきにして殺人者のカインは赤毛であったという伝説がある。
 が、注意しておきたい点として、聖書にユダやカインの髪の毛の色は記されていない。
 ユダやカインが赤毛と信じられたのは、当時根付いていた赤毛への偏見・差別や、北欧神話のトール、ロキといったキリスト教とは相容れぬ神の存在を邪神と認識していた影響が大きいと考えられている。
 つまりユダの赤毛、ユダの黄色の衣、裏切りを意味する黄褐色。これらが合わさった結果、赤褐色にネガティブなイメージが持たれるようになった。赤褐色……煉瓦色、すなわちテラコッタである。
(参考書籍:ミシェル・パストゥロー作『ヨーロッパ中世象徴史』 2008/9/24)

 この論をネットで見つけて原文に当たってマジで書かれててひっくり返った私であった。これ以外の書籍のソースを確認していないからさ、断言はできないけどさ。あくまで無数にある説の一つなだけだけどさ。
 嘘だと言ってよバーニー。
 いやもう嘘、嘘だと言って。
 赤毛で裏切り者だけならまだしも、黄色と結び付けてそのうえで赤褐色、テラコッタ!!!(ここでいったん気絶する)
 誰ですか!? こんなクソみたいな与太話思いついたの! 私だ!!!
 ちなみにユダはよく左利きで描かれているけど、これはユダにマイナスの属性をあてはめるためなんだよね。中世の左手は悪しき手で、キリストの敵・裏切り者を指し示したんだ。
 ね、左手だけでトランプタワーを完成させられるエースくん!!(ここで再び卒倒する)(お前だけなんだよ、わざわざ両利きレベルって追記された男)(もうやめて)(他に左手の男を見てみろよ、フロイド、イデア、セベクだぞ。何だお前は)
 もはや吐きそうである。吐きそうである。なんだこれはどうしてこんなにお前周りでこんなにいかれた情報が発掘される。
 私が発掘してるから? それはそう!

 ……ユダがどうしてイエスを裏切ったのか、未だはっきりとした理由はわかっていない。四つある福音書でも、彼についての行いやそれを受けてのイエスの態度はまちまちではっきりしない。自分からイエスを売ったり、サタンに憑りつかれた結果だったり……。
 しかし、イエスはユダの裏切りを予知していた。にもかかわらず、ユダの裏切りを放置した。だけではなく、ヨハネでは「しようとしていることを、今すぐ、しなさい」とユダに言うなど、彼はこれらから起こることを知りながらユダに指図していると思えるような文章・ふるまいがある。
 また1978年に発掘された『ユダの福音書』によると、ユダは弟子の中で誰よりもイエスの真理を授かっており、ユダの裏切りはイエスの指示であったとされている。つまりユダは必要悪であったとされる説がある。

 マタイ:銀貨で売る、ユダの人間性・悪性によるもの→ユダの人格・行いを徹底的に批判した文章
 マルコ:銀貨で売る→ただし他の弟子もイエスを裏切る・見捨てるうえに、ユダが銀貨を受け取るのは裏切りを提案してからである。
 ルカ・ヨハネ:サタンの誘惑。特にヨハネはユダに否定的ではない。どちらもユダに裏切りという罪を背負わせないように書いている。※サタンとは神に敵対するもののこと。

 さて……重要な点として、ユダという裏切りものがいたゆえにイエス・キリストは磔刑に処される。その血が杯に注がれたことで、聖杯が生まれる。
 ユダ→裏切り者=トラッポラ
 聖杯→カップのエース→ハートのエース
 もしもエースがユダならば、エースはマリア/リリアの養い子……つまりマレウス、またはシルバーに何らかの危害を加える+それにより覚醒することになるが……。7章のエースと彼らの関係性によって、この考察がまた変わることになるので割愛。
 私としてはご先祖様(トラッポラ)がユダモチーフ系列の裏切り者で、エースが聖杯だと興奮するが…。最後に大好きな小説の一部分を添えておく。

「謂ば、私はあの人の奇蹟の手伝いを、危い手品の助手を、これまで幾度となく勤めて来たのだ」
「いや、誰に理解されなくてもいいのだ。私の愛は純粋の愛だ。人に理解してもらう為の愛では無い。そんなさもしい愛では無いのだ」
「私は、けちな商人です。欲しくてならぬ。はい、有難う存じます。はい、はい。申しおくれました。私の名は、商人のユダ。へっへ。イスカリオテのユダ」(太宰治『駆け込み訴え』)


※ここでユダはけちな商人と名乗っているが、キリスト教原典でのユダはあくまで会計係であって商人と名乗ったことはない。
 ところで、ケイト・ダイヤモンドの親の職業は銀行員なのだが、ケイトのモチーフの一つと考えられているシンデレラの親は童話の時点で商人であった。
 アニメ版ではその設定も反映されていないが、実写版では貿易商人と設定されている。ケイトのスートのダイヤは商人であるため、【商人の親→シンデレラ】と連想が飛んだ可能性がある。

※ちなみに黄色と緑の組み合わせはキリスト教において不吉の象徴で、宮廷の道化役の衣装や、『詩篇』に登場する狂人の服とかに使われていたんだ。もちろんユダにも使用されていたよ。
 ね、髪の毛が緑で目ん玉黄色でどう見てもイカレ帽子屋のトレイ!!
 ね、青寄りの緑目で橙の髪の毛でやたら闇を覗かせてるケイト!!!
 ね、緑目でイメージカラー黄色のレオナ・キングスカラー!!!!
 トレイはともかくお前とお前、あからさまに不吉がタッグ組むんじゃねぇ!! トレイは狂人の服としてもお前ら二人はやばい。特にケイト!

*エース・トラッポラの謎

 もうすでに狂いそうなほどに考えて考えて考えたが……。トラッポラは現在進行形で多くの謎を保有している。以下その謎について

*あまりにもあからさますぎる名前(トラッポラ)
 →正直これは、ユダとかカップのエースを連想させたいフェイクな気がしてるし、私はエース君が養子で旧姓がジョーカー、または今の家族がジョーカーだが旧姓:トラッポラを名乗り続けている可能性を疑っているぞ。

*登場時に学園長、グリムと並んで「???」であったキャラ
 →他のキャラとは会った記憶があり、「???」のキャラたちとだけ初対面説は個人的にあわない。グリムと学園長が初対面なわけがない。
 →個人的には、「???」キャラはループしている。あるいは「???」キャラは前周回で死亡する、または消滅するなどの可能性を疑っている

*ミステリーバッグでなぜかテラリウムが出る
 なんでみんなが、別に一番欲しいわけではないけど、それなりに必要なものを当てている中で一人だけ要らないものなのですか??? テラリウムなんですか???
 判明しているミステリーバッグの中身:
 トレイ→高級ホテルブランドのお菓子の詰め合わせ ※要望:調理器具セット
 アズール→アメイジングチケット所望。手に入らずに並びなおす
 ジェイド→文房具の詰め合わせ(ノート数冊、カラーペン一式、ペンケースにレターセット他)
 ジャミル→10枚つづりの食券。学食のスペシャルランチ食事可能。瓶詰のキャビア、乾燥トリュフなどの高級食材の詰め合わせ。※不正入手寄り
 エペル→調理器具セット。小さい鍋にフライパン、キッチンミトン……と見せかけてパンチンググローブなど ※ほしいものとは違った感じ
 ルーク→実験器具セット。フラスコ、試験管、ピペット、ブラシなど
 ヴィル→今期のトレンドを押さえた手袋、インナー、ストール
 イデア→がけものサイン入りTシャツ
 リリア→ボードゲーム、トランプ、テーブルテニス、人生ゲームなど

 エース→テラリウムキット??????
 なんだ? 吐いてのたうち回ればいいのか。

*30年前の映画やら、ばあちゃんの祖母世代のゴーストカメラを知っている

 →エースが兄と同一人物説を出されているときによく出るこれ。
 実写版アリスでは過去の出来事を見ることができるタイムスフィアなどがでているので、エース及びトラッポラ家は歴史・過去と密接な関係があるのかもしれない。単にエースが博識なだけかもしれない。
 あるいは先ほどのテラリウムや、母親の話を一切しないこと、ホリデーの帰宅の際に「家にいてもゲームするだけ」と述べていることから、エースは父子家庭で、祖母が基本の養育者となるので祖母の思い出話に付き合う時間が増える。また兄がNRCに入ってから家で一人で過ごすことが多くなり、『暇つぶしの過程で家にある兄の私物のDVDを見ていた』可能性があるのかもしれない

*嘘に真実を混ぜ込んだら気づかれにくい・情報は大事という話
 →正直ね~~~~。これだけでスパイ説はむしろアレな気がする。だってスパイだったらむしろこういう匂わせ系はしちゃだめでしょ~~。

*兄と父親の話をするのに、母親の話は一切しない
 絶対にこれ母親がいない父子家庭だと思う。デュースとエースは対比構造が意識されている以上、母子家庭←→父子家庭になるはず。花京院の魂をかけたっていい。
 →なんとブルームで両親と言及があった。お前マジでか

*要領が悪くないのだが自制心が死んでおり、タルトの盗み食い、サボリなど、衝動的な行動をとってしまう。我慢がきかない
*他人のために必死になれるのに、自分のために必死になれない。自分への執着が終わってる
*異様なほどに優しく愛情深い。こわい。
*すごい器用・物まね得意。観察力が高い。記憶力もいい

*異様なまでの達観視と客観視。

主体としての感情の薄さ。自己への執着がないので「自分がこう思う」ということは死んでも曲げないが、それはそれとして「周囲がこう思うならこれに合わせよう」と行動を変える。→例:「オレわるくないし」って態度だったにもかかわらず、監督生や周囲の反応を受けて謝罪に行く。
思想だけ動いてないのに、思想以外のすべてを空気を読んで変える。怖い。何この思考回路。

*ミッキーをゴーストカメラで撮るように進言する。
 記憶力がいいだけですけど!!!!!??? 私らとは違って記憶力がいいから忘れずに覚えてただけですけど!??!

*トラッポラ…というか、あらゆるトランプ(カードゲーム)において、ハートのエースの切り札は存在しない。(変動型がぎりぎりありえるか?)
切り札なら普通はジョーカー、またはスペードのエースだが?

*ユニーク魔法が6章時点で判明していない
 隠しているか目覚めていないかで言えば、後者より。ただこれまでの傾向を見ると、忘れてしまった/忘れさせられた可能性もなくはないと思っている。私はエースのユニ魔について「自己犠牲」説を唱え続けているので。
 →聖杯を手に入れた三人のなかでひとりは殉教する
 →大釜(コルドロン)を手に入れたものたちはその使用のために命を擲つ必要があった。
 →ハートのエースという切り札は、はじめから「存在しない」
 →アリスは夢から覚めると、不思議な国の外側に行ってしまった。
 「アリス・コメディ」シリーズにおいて、不思議な国はカートゥーン(アニメ)のことである。エースのモチーフにはアリスがいる可能性が高い。
 →本人の性質「自分のことはどうでもいいのに、他人のことはいつまでも見捨てられない」
 例:序章のデュースを止める、1章のリドルを止める、5章のエペルを助けるためにヴィルに挑む。ゴスマリでイデアのために必死になる+散々だったイデアに慰めの言葉をかける。エンハロでマブsの心配+エペルやイデアがこれ以上恥をかかないようにと止めに入る。
 →共感能力が高く他人の羞恥心に敏感。だが一方で実験着PSを見てわかるように、本人の自分の失敗への羞恥心は鈍化している。=自分のことに対して割とどうでもいい?
 これらを踏まえたうえで、私はエースのユニーク魔法について考察しているが、それは「エースとユニーク魔法」を参照。

*「星に願いを」で自分主体で祈らなかったのはエース以外に、リドル、ジェイド、カリム、マレウス、リリア、シルバー、セベク。
※自分にまつわること以外で願い星を使った代表例にはヴィルがいるが、願い星の制度を厭い、スターゲイザーも出ていくように願う。このため、今回の願いsには含んでいない。
 このうちエース以外の全員は自分の欲求・願いが反映されている
 リドル:寮生全員が優秀になってほしい
 ジェイド:身内二人が楽しく生きてほしい
 カリム・リリア:みんなが幸せでいてほしい。そういう世であってほしい
 マレウス:どらこーんに友達がいてほしい
 シルバー:親父殿に長生きでいてほしい
 セベク:若様にひれ伏せ!!! 人間!!!
 それに対して、エースだけは何も思いつかなかった。
 ので、その場にいたグリムをからかうという方向にシフトしている。は?????? 自分のために使えや????
 なおエースくんは願い星の願いを適当にするという考え(→例:レオナ)が思いつかず、口から出まかせを放つ(例:ケイト)こともできていないので、願い星にかけた願いは真面目に考えたうえでのものである。
 つまり”グリムをからかう”という自分らしさと、【グリムが問題を起こす=監督生が巻き込まれる】ので問題を起こさないようにと監督生の生活が穏やかであることを願いつつも、それを真面目に言うのも照れくさいのでひねた言い方をするという、実に彼らしい形での願い星である。おぎゃあ。
 ふざけんなよ????? もっと真剣に祈れや!!!!
 レオナと同じで願いが思いつかない枠に放り込むぞ!!

*兄ッポラが登場したことがない。
 ただし「エース、今日誕生日だろ? この箱開けてみろよ」「これは俺の、お前のはこっち」とエースが物真似している。しかし一方でその物真似がエースにしては杜撰だが…?

将来への展望も具体的な夢もない。
 
もっというならゴスマリで姫の未練を諦めたらと述べているので、執着を厭うている。おまえはなんやねん????

ハーツラビュルの赤スート対応組:母親となんらかの確執がある…?
 リドル→言わずもがな。過剰教育・支配束縛
 ケイト→母の善意・愛情とケイトの求めるものが噛み合っていなかった
 エース→現時点では不明だが、母親の話は一切出ていない

*人懐っこく信じやすく愛されてすくすく育ちました!みたいな顔をしている男の「おい、お前! いい加減にしろよ」と恐怖した顔からの「勝てるわけないからって、何?」
 
お前がいい加減にしろ。保身で生きろ!!!!!! しにいそぐな!!! 悪意も暴力も受け慣れていないみたいな環境下に居たはずの存在が、恐怖でゆがめた顔をした後に殴りに行くのが恐怖だわ!!!! いつもの挫折癖はどうした!!!
 私はお前が愛情深い家庭で育ったことに疑いは覚えてないけどそれ以外のすべてに疑いは覚えています。はい。

*エースとユニーク魔法

 先述したように私はエースのユニーク魔法がこれから生まれると考えている。そして元ネタになるであろう「ふしぎの国のアリス」に基づくならば、

 ①夢オチ、事象の強制的なリセット→あったことを無かったことに。『イッツ・ア・オールフィクション』。回復効果?
 ②過去を旅する(実写より)
 ③自分の望んだ夢を見る、世界を想像する→事象の書き換えなど
 ④異世界に移る、異世界から移る
 ⑤「貴方たちなんかたかがトランプのくせに!」→トランプ兵が無力化される=夢の否定、魔力の無力化、現象としては逆転

 の五つが妥当とみている。
 アリスならば他にも「自分を大きくする、小さくする」「涙で洪水を引き起こす」などがあるが、……切り札として出てくる関係上、それこそ強大な”とっておき”だと推察できるので、今回はその可能性を排除する。
逆にトランプ、特にジョーカーに基づくなら

 ⑥ワイルドカード(代理札)=なんにでもなれる(変身・模倣)
 ⑦なんにでも勝てる最強の切り札となる

 切り札の語源の由来となった(切り札はそもそもタロットを用いたカードゲームにおいて使われる特殊なカード:専用の切り札21枚および愚者→大アルカナのことを指す)タロット(小アルカナ・大アルカナ)に基づくなら

 ⑧カップのエース=聖杯→奇跡を起こす・願いを叶える

別ゲーム由来になるが…、キンハーのソラがワンダーランドで手に入れるキーブレード。アリスのトランプ兵がイメージされた意匠が施されているのだが、キーチェーンはトランプのハートのエースである。

 ⑨ラストリゾート(最後の切り札)
 ※KHにおいてアリスは、純粋な光の心を持ち、心に闇を持たないセブン・プリンセスの一人として数えられている。なおプリンセスと呼ばれているが、別に姫ではない。

 いずれかの可能性が高いとみているが、私はエースが聖杯と関連していると考えているので、③と⑦と⑧の強化、「この世では実現不可能なこと、奇跡を引き起こす万能のユニーク魔法」と捉えている。
 なお、その根拠と考えたのが以下の一文。

翻訳「私の世界では馬鹿げたことが当たり前なの。これはこうって決まりは最初から何一つないのよ。全て頓珍漢で妙ちきりんであべこべなの。だけど誰も驚きはしないわ。分かるでしょ?」
字幕「私の国はおかしなことばかり。なんでもあべこべよ。ないものがあってあるはずの物がないの。分かる?」
英語字幕「Nothing would be what it is because everything would be what it isn't. And, contrariwise, what it is, it wouldn't be. And what it wouldn't be, it would. You see?」
意訳「あらゆることが当然じゃないの、だってすべてが当然じゃないことだから。そして逆に、当然のことは当然じゃないの。当然じゃないことも起きるの。わかる?」
※It is what it is→これはしょうがないこと、普通のこと、そういうものとして受け入れる必要がある、当然のこと、という意味がある。

 これらの台詞から「あったものをなかったことに、なかったものをあったことに」するとして夢落ち・逆転説は高いとみられるが……。
 まず第一に意訳を見てもらえばわかるように、”あべこべ”という言葉は原語版では少々……というか大分ニュアンスが異なる。
 私自身、英語が達者な方ではないので、この言い回しや意訳であっているかどうかは分からないが、少なくとも原語版の台詞の本質は、翻訳に見える「これはこうって決まりは最初から何一つないのよ」だと考えられる。
 普通のことは普通じゃない。普通じゃないことが普通。
 そんなアリスの願い通り、不思議の国は混沌としていて、あるべき秩序がない。そしてどんな動物もおめかしして人間と同じ言葉を話す。彼らは素敵な家に住んでいる。
 しかし現実と必ずしも、あべこべ・さかさまというわけではない。不思議の国、あの世界はあくまで「普通では起きないことが起きる、夢のような世界」なのである。
 聖杯は人の願いを叶えるものとしての側面(代表例:Fate)があり、人間には実現不可能な、超自然的な奇跡を引き起こす。
 アリスは現実では不可解な夢を見て、目を覚ましたときにはすべてなかったことになった。しかしルイス・キャロルはこう締めくくる。「人生、夢以外に何なのか」と。ルイスにとってあの物語の終わりは、決して夢落ちではない。彼にとって人生そのものが夢なのだから。

 また、実写版のアリスは「不可能なことは信じないと可能にならない」というテーマが一貫して描き続けられており、実際アリスは六つの不可能なことを唱え、そのすべてが実現したことを持って自らを閉じ込めていた檻を破壊して、自由に外に跳び出る。
 そしてもうひとつの根拠。デュースのユニーク魔法との関連性である。


*「しっぺ返し(ベット・ザ・リミット)」の謎
 アニメ映画版、実写版、そのうえ原作小説全て三回ほど視聴したが、デュースのユニーク魔法の元ネタになりそうなものは見当たらなかった。これはデュースの裏モチーフともいえるウサギ(ジュディ・イースターエッグなど)や、トレジャープラネットのジムにもである。
 また、トランプ兵だからトランプのルールにしたとしても、なぜわざわざそこでポーカーなのかだろう。
 大富豪では2が一番強いが、ポーカーにおける2はむしろ最も弱い札である。なによりポーカーは役を揃えるカードゲーム。スペード一枚だけではデュースのユニーク魔法(逆転)に通じない。
 そこで、魔法効果だけに集中して考えることにした。
 デュースのユニーク魔法は簡単に言うと「自分が受けたダメージを反射する」ものである。ポケモンで言うところのカウンター、ミラーコート、一番近いのはメタルバーストかだろうか。
 さてその反射の側面から、デュースの本質に一番近いのはだろう。
 デュースは自己評価より周囲の評価に流されがちな部分があり、他人の影響を受けやすい。が、同時にその影響を受けて自らの意見を押し出せる強さがある。この部分が反射としてあらわれていると考えられる。
(例:優等生になることを意識するあまり自らを抑圧してしまう。6章)
 ハンプティダンプティ(卵)が出てくるのは「鏡の国のアリス」の点を踏まえても、やはりデュースはアリスの中でも”鏡の国”の方に近いのだろう。そうなると、対比の設定がされたエースは”不思議の国”の方に近くなる。
 ところで聖書では多くの場合、奇跡は不思議、不思議な業、しるしなどで表現されているようだ。
 wikiによると「wonders/不思議」は奇跡の及ぼした結果からの名称であるそうだ。もうひとつの「signs/しるし」はそれに対して、奇跡を起こした意義を示す側面があったそうな。
 へ~~~~(ここでエースを見る)
 カップのエースの聖杯、不思議の国、神の奇跡(wonder)、マジックが得意、アリス要素。現実では不可能なことを起こす力。不可能なことを六つ唱える、アリス。
 はい。
 はい。
 ということで私は以上のモチーフ要素から、エースはアリス・聖杯・不思議全ての要素から「この世では実現不可能な奇跡を引き起こす」のユニーク魔法と考えた。
 ※あるいは実現したように見せかけるハッタリの魔法

 しかしこれまでさんざんに言われてきたことだが、魔法は万能ではない。奇跡を引き起こすユニーク魔法など、普通はうまれるわけないのだ。
 なので私は先述した自己犠牲要素をあわせて、「エースのユニーク魔法は奇跡を引き起こすことができるが、その代償・コストとして魔力以外のものを消費する必要がある。ユニーク魔法の乱発は死に直結する」と考えている。個人的に消費されるのは、寿命か血とみているが……。
 死に際にはド派手な花火を期待してるぜ、エース!!!!!!!!!!(血反吐)

ついでにエースのユニーク魔法の名前の由来になりそうと考えているのは
Ace in the Hole」ポーカー用語 (Alice in the Holeを連想させる)
Out of This world」手品用語(アリスを異世界を渡ると定義するなら)
Ace opener / Ace assembly / Ace production」「Four Ace」(手品用語だが上二つより優先順位が低い)
「Ace‘s Wonderland」「Ace comedy magic」(アリス・コメディシリーズや映画より引用)
 あたりだが……。ハーツラビュルのユニ魔は
リドル「オフ・ウィズ・ユアヘッド」、ケイト「スプリット・カード」
トレイ「ドゥードゥル・スート」、デュース「ベット・ザ・リミット」
で、見ての通り、黒スート組がト、赤スート組がドで終わってるので
エースくんのユニ魔は「おとぎばなしをどうぞ/Ace‘s Wonderland」か、「Out of Twisted wonder world」ではないかなと考えている。


*エースと学園長の謎

 エースはRSA、または学園長の内通者ではないか? とは様々な角度で考察されてきたことである。
 あるが、私はここに「待った」をかけたい。
 まず第一にエースが内通者だとすると、序章時点での行動がおかしくなる。エースが密命を帯びた人間だとすると、「退学してもいーじゃん!」なんてムーブにはならないはずだ。
 そもそも、自分のスパイを自分で追い出そうとする学園長のムーブ自体もおかしなことになる。なので、もしエースが内通者だとすると、その相手先はRSAになるが……、RSA全体が不透明なので断言はできないが、チェーニャ、ネージュと言ったキャラを見るに、RSAはヒーローサイドのキャラ、NRCの対極である。
 ケルッカロトを思い出してほしい、敵情視察をしてわなを仕掛けてルールの裏側を責めようとしていたのはどちらだったか? 幸せを願う彼らがスパイとかそういうこすい手を使うか?
 うん……普通に考えて使わないね。
 それも子供陣だけで、大人たちの謀略・演技といわれればそれまでだが。
 それを含めても、エースが内通者説は疑わしい部分は多い。
 彼の基本観念は「自分のことはどうでもいいので、冷めた、軽い温度で生きる」なのでスパイに向いているようだが、実際はリドルやエペルにしたように「困っている人を見捨てられない」熱い性質なので、まったくといっていいほど向いてない。そして付け加えるなら、エースは監督生に自ら接しに来たが、別に自らオバブロ勢に飛び込んでいるわけではない。
 よく思い出してほしい。
 VDCの参加をエーデュースに勧めたのは誰だったか? オンボロ寮を合宿場所に指定したのは誰だったか?
 4章、監督生たちがエーデュースに連絡するきっかけになったのは、学園長に電話が通じなかったからであった。しかし学園長はなぜつながりもしないスマホを渡す必要があった?
 連絡があるかもしれないと思うなら電源は切らないし、連絡があっても迷惑…と思うなら、スマホなど渡さなければいい。あの時点で監督生にスマホを渡す理由は、学園長には一つもない。
 2章、エースは監督生に会いに来た。マジフト大会に参加できず拗ねた状態のグリムを気にかける、友達のところに遊びに来てのことだった。そこからトレイの事故が起きるのだが……。エースは友人が依頼されていたから手助けに来たのだ。きっかけは依頼である。
 1章に至っては言うまでもない。学園長はエースに寮長戦を挑むように勧めている。このとき彼は同じく首輪をしているデュースにはアプローチをかけず、エースの名前だけ呼んでいる。
 これを見るに、エースは自らオバブロに関わってきているのではない。監督生がオバブロ勢にかかわるように学園長が誘導しているように、エースもまた、学園長に友人の監督生を通じて、オバブロという問題ごとに首を突っ込むように誘導されているのだ。
 しかしそうなるとまた別の疑問が出てくる。なぜにエース? と。

 ここからはある程度の予想が入ってくるが、どうも学園長、エースのことをやたらと気にかけている節がある。本当にわずかにだが……デュースとの扱いに差が見えるのだ。
 こう考える理由となったのだが、学園長がエースやデュースと出会った時の扱いの差、反応の差に起因している。
 実は学園長、問題を起こしたエースに名前を尋ねたが、シャンデリア事件を起こしたデュースには名前を尋ねることもなく、「全員退学(ノベライズでは二人とも退学、ユウくんとグリムくんは即退去)」で済ませている。
 このため、このときの学園長はデュースの名前を知らないのだと思っていた。
 しかし、魔法石を届けた時には「トラッポラくん、スペードくんの退学を免除……」といっていた。学園長はデュースの名前を知らないはずである。なのになぜ、彼がスペードであると知ったのだろうか?
 ここで私はゲーム版のエースとデュースの違いについて調べて、一つの仮説を出した。
 「学園長はずっと監督生の動向を見張っていた。そのため、初対面時にフルネームを名乗ったデュースは、名字が分かるので尋ねる必要がなかったが、エースの方は名前だけしか名乗らず、名字がわからない状態だったので、追加で尋ねる必要があった。だからデュースとエースで扱いに差がある」と。
 考えたが、なんとその根拠全否定のノベライズ版が出てきた。

「オレはエース。今日からピカピカの一年生。どうぞよろしく!」(序章)
「オレの名前はエース。エース・トラッポラ。昨日入学したばっかりの、ピカピカ一年生! ヨロシクな」(ノベライズ)
「Name`s Ace. I`m a first year student here, as of……today!」(英語版)

 見てのとおりである。ノベライズとゲーム版に違いは多数あれど、それでも大まかな設定は共通していると見ていいだろう。
 となれば、学園長は監督生の動向を見守っていたから、エースとデュースの名前の扱いに差が出たのではない。最初から、学園長は明確に、エースとデュースの扱いに差をつけているのだ。
 なに? 退学手続きしてるうちにデュースの名前を見つけたのでは、って? それならそれで、何故エースの名前はその場で聞いておきながら、もうひとりの、問題起こしたデュースの名前は聞かないんだよ……?? という話になる。
 腕章の色から「ハーツラビュル」と判定しても、見覚えのない顔だから新入生と判断できても、新入生大体30人いちいち該当の顔を捜すのは面倒ではないだろうか……。
 ノベライズ版でもこの点についての補足はなかった。つまり学園長はデュースの名前を尋ねる必要がないと考えられる。
 しかし、なにもそれだけでエースがデュースより特別扱いを…と思う方もいるだろう。そんな方に、英語版における学園長の台詞をお送りしたい。

「Then , listen well Trappola.」(序章・グレートセブン炎上事件)
「if I find out about……what , dear Ace?」(序章・シャンデリア破壊事件)

 まさかの名前呼びである。
 怒る時に名前呼びなのではない。エースがシャンデリアを壊して、学園長に知られたと思った時に「Ace」なのである。
 さすがに英語版のパソストをすべて追っているわけではないので、断言はできないが……。今のところ、英語版メインストーリーで学園長が名前呼びしたことのある存在は、監督生とグリムだけだ。その彼らも名字がないからである。
 それに対して、エースは名字を知られながら、唯一、名前呼びをされたことがあるのである。おやおや、まぁまぁ。
 大事な大事な美しき女王のグレートセブンの像が炎上した時より、シャンデリアを壊された方が問題なのはわかりますよ。けどいくら怒ってるからって名前呼びって、学園長、貴方にとってのエースの一体なんなんですか??

** ** **

 さてここからはいつもの邪推タイムだが、学園長ディア・クロウリーの名前の元ネタになったと思われるのは、マレフィセントが使役する鴉:ディアヴァルと、伝説のイギリスのオカルティストにして儀式魔術師:アレイスター・クロウリーであろう。
 アレイスターはトート・タロットの考案者にして、悪魔コロンゾンを召喚したり、「黄金の夜明け団」に触発されて「銀の星」って宗教組織を作ったり、麻薬と性行為が悪魔崇拝の儀式に繋がると信じてトリップしたり、なかなかヤベーやつであった。
 そんな彼が自ら手掛けた『法の書』には、とある神の名が記されている。緋色の女、太母(グレートマザー)、または忌まわしき者どもの母と呼ばれる神:ババロン。キリスト教の大淫婦バビロンに基づくと考えられている彼女が記された文章は、以下のとおりである。

かの女はに跨って乗る。左手には両者を結合する情熱を表す手綱を握る。右手には坏を、愛と死に燃え輝く聖杯を掲げる。この杯の中で劫の聖餐の諸元素が混ざり合う。(wiki・アレイスタークロウリー)

この後、わたしは、もうひとりの御使が、大いなる権威を持って、天から降りて来るのを見た。地は彼の栄光によって明るくされた。
彼は力強い声で叫んで言った、「倒れた、大いなるバビロンは倒れた。そして、それは悪魔の住む所、あらゆる汚れた霊の巣くつ、また、あらゆる汚れた憎むべき鳥の巣くつとなった。すべての国民は、彼女の姦淫に対する激しい怒りのぶどう酒を飲み、地の王たちは彼女と姦淫を行い、地上の商人たちは、彼女の極度のぜいたくによって富を得たからである」(wiki・ヨハネの黙示録)

 ここにおける獣とはアレイスター・クロウリーその人のことだが…。なんとまぁ、見ての通りここでも聖杯は出てきた。しつこくなるくらいに出てくる。聖杯。(そういう根拠を捜していると言われればそれまでだが)

 ここでトートタロットのカップのエースを見てみる。
 描かれているのは青い聖杯だが、それを支えるように蓮の花が咲いている。なおここに描かれていないが、どうやらアレイスターは枠外に鳩が降りてきている構図を見出していたようだ。
 カップのエースに対応する大天使はガブリエル。そしてアレイスター……というか一部学説では、聖杯を子宮に例える風習があった。つまりこれは受胎告知を表しているのかもしれない。
 ところで、リンカーンなどの一部で提唱されていた「聖杯とはキリストの血脈のことである」という説もある。
 ※伝説上の鴉とディズニーの結びつきを考えると、理事長は「モルガン」=マダム・ミムの系列?

 なお、学園長のモチーフ元になったであろうアレイスター・クロウリーは著作「魔術 理論と実践」にて『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』は魔術を理解する副読本であり、アリスにカバラ的要素が見られると述べている。
カバラとは、ユダヤ教の伝統に基づいた神秘主義思想。生命の樹の象徴図表と密接な関係がある。近代魔術、特に黄金の夜明け団などでは生命の樹をタロットカードと結びつけての研究が行われていたことでも有名である……。
 ただアリスをどうやればカバラ的要素読み解けるかについては全く分からなかった。求ム・カバラ有識者。
 ところでアレイスターの最初の妻の名前はローズなんだ! 彼が入団していた黄金の夜明け団は薔薇十字と密接な関係にあるんだ!! うわぉ。ちなみに薔薇十字団は不老不死の実現を目標としていたよ。錬金術。ほーん。


*トラッポラ家とエース

 私はいろいろあってエース養子説を提唱しているが……その大きな理由となったのが、おめかし・ユニオンにおけるエースの発言である。

「きっかけ、っていうなら父さんかな」「オレの父さんは魔法士じゃないんだけど手品がめちゃくちゃ得意でさ」(おめかしパソスト)
「兄弟にするなら誰がいいですか? ただし同じ寮の生徒はなしよ」「兄貴にするなら、アズール先輩!」「身内にいたらスッゲー頼りになりそう!」
「実のお兄さんもアズールみたいなタイプ?」「いや、全然、ノリ軽くてチャラい感じですよ、でも、兄貴がいてくれて助かったことは多いかも」
(ユニオンパソスト)

 見ての通りだが、兄弟の質問に対して「兄にするなら」ではなく「兄貴にするなら」と答えている。エースのなかで兄とは、”兄貴”なのである。
 だから彼は兄が言ってた、父が言ってたなどという言い回しはめったに使わない。兄貴が言ってた、父さんが、であり、ノベライズでもうちの兄貴呼びだった。ついでに言うなら祖母はばーちゃんだし、祖父世代はじーちゃん世代だし、家族の呼び方が脳内変換されるのである。そんなエースが法則(呼び方)を変えたのは作中で一回。

「オレに手品を教えてくれた兄貴も、始めたきっかけは父親に憧れたからだと思う」(おめかしパソスト)

 なんでそこで分けた???? なんでそこで父さんではなく父親呼びした???
 またエースはおめかし・ユニオン・正月で家族について触れるときも一貫して母親についての話題を出したことがなく、作中で「母」について能動的に触れたことがあるのは後述の台詞だけである。

「そりゃお前はガッチガチの教育ママにえぐい育てかたされたかもしんないけどさ。ママ、ママってそればっかかよ!」(1章)
「あー、そっか、寮長は実家でエグめの教育ママが待ち構えてるんだっけ」(4章)
「お母さんかよ」(5章)

 お母さんかよ!??!?! エース君の呼び方の特性的に「お母さんかよ」はそのまま、エースが母親をお母さんと呼んでる証左なのである。母親大好きなデュースですら「母さん」なのに、おかあさん?!
 さらにセベクは両親という言い回しをするが、エースの場合、

「ここにオレの入学が決まったときは親より兄貴が喜んでたっけ。同じ寮の卒業生なんだよ」(式典服)

 ふ、ふーん……。呼びかけ方が親、親なんだ…。いやエース君のことだから両親よりは親って呼びかけ方だろうけど、父さんや母さんよりじゃなくて親ってそんな冷たい、ふーん、へ~~ん。兄貴……。ふーん…。ふーん???
 そもそもエースとデュースは対になるように設定されたキャラである。となれば母子家庭のデュースに対して父子家庭のエース、という構図は自然な流れだろう。
 だがそれだけならここまで母親の話を伏せる必要はあるのか? まだ何かエースには特大級の情報があるのではないだろうか。そう…本当に特大級の情報が……。いかれた自制心、いっそ異様なまでの愛情深さ…知れば知るほどイカれてるエースの裏側…に何かある…のではないだろうか。まぁその何かがわからんのだが。

 これらの謎は果たしていつになったら解決されるのか。マスシェフの実装はいつなのか。これからが心配になるトラッポラ、私は最終的にお前が自己犠牲すると思ってるが大丈夫だよな??? あー早いとこ最終章かイベント更新してくれー!!!(悲鳴)

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