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横切る風など覚えていないだろう

 人に対してあまり執着がない。
 ……少し語弊がある。「赤の他人に対して」あまり執着がない。
 私と言うものは人の横をすり抜ける風のようなもので、確かにたった今いたような気がするけれど、数分経てばそんなものが横切ったことさえ忘れてしまうような、そんな存在だと思う。
 私は誰にも影響を与えていないと信じている。
 私の言葉は誰にも残らないし、私の行動はそのうち忘れるし、私の気持ちも思い出も、限りなくくだらないガラクタの一部になる。
 だから、私が誰かの前からいなくなろうが、その誰かにとっては大した問題では無い。悲しむ必要もなければ、思い出す必要もない。
 私がいなくなろうが悲しまなくて良いのだ。
 簡単だ。忘れれば良い。
 たかだか人生のたった一瞬横切った風だろう。そんなもの、覚えていてどうなる。
 私も簡単に忘れられるから安心して。
 あなた方もどうぞお忘れになって。

 おわり。

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