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オリエンテーリングはいつ速くなるかわからない

ES関東Cの高見澤と申します。
本記事は全日本大会反省号として投稿させて頂きます。

今回2022年シーズンの集大成として臨むつもりでしたが、前週に踏み抜きをしてしまい、本番は勝負出来ませんでした。悔しさしかないです。
それでも2022年は特に大きく伸びた年だったので、ここで振り返ろうと思います。
(2021年時点は全日本M21Aで巡航115、日本ランキング130位くらいの選手でした)

そもそも自分は、学生時代特段速い選手ではありませんでした。
何で今になって急に速くなったのか、最近沢山の人に聞かれます。

大学卒業からのことを振り返りながらそれに少しお答え出来たらと思います。
長いですが、良ければお付き合いください。

同じように大学卒業後もう一度熱さを取り戻したいと悩む人に、そして特にその気持ちを抱えているかもしれない2016,2017年入学の人たちにこの記事が伝わればとても嬉しいです。
熱意は人から受け取った方がより継続すると思うので。


1.大学4年間の終わり

2020年2月、当時4年生だった自分は最後の春インカレを前に部内杯で4年間のベストレースを更新し、本番も同期3人で表彰台に上がることを夢見ていました。特にそれまで3年半で1度しかフォレストエリートを走れなかった自分にとって、春は本気でインカレ入賞という目標に挑める最初で最後のチャンスでした。
そしてその舞台は3週間後当たり前に訪れると疑いなく思っていました。

当時の種市選手は誰よりも熱くて、皆の憧れでした

しかしそこから謎のウィルスの発生により急転直下で春インカレは開催を断念、為すすべなく大学でのオリエンテーリングは終わり。ここに懸ける気持ちが強かっただけに喪失感は大きく、途方に暮れました。
4年間過ごした思い出は何にも代え難いものだけれど、それだけではない記録や形に残るものを残したかった。

後輩たちと作っていたシード選手動画もお蔵入りになりました。
(せっかくだし公開。色々あって映像・音声が粗くて乱れてますが雰囲気だけでも!)


2.社会人になって

社会人生活が始まったものの暫く自宅待機期間が続き、まだインカレの喪失感を消化出来ずにいました。
連日O-TOWERとONNを聞きながら4年間の振り返りを書き、もっと早く頑張って競技に向き合っていれば良かったんだろうか、本当に悔いのない4年間だっただろうかと頭を巡らせていました。人との会話が少ない期間だったのも良くなかった。

ふと追いコンでもらった寄書きを見返していて目に入ったのは、加藤岬さんからの「インカレで入賞しないと今後数十年後悔すると思う」という言葉。きっと岬さん自身もそうだし、同じような後悔を持ちながら環境の変化と共に何だかんだと競技者として走り続けることに区切りをつける人は多いんだろうと思います。

そんな頃、春インカレ実行委員会の方々からの粋な計らいで、以下の動画が公開されました。
大学1年の頃OLKで遠征帰りに何度も聞いた曲、そして待ち侘びていた同期たちのインタビュー動画に、感無量でした。

完全に整理がついた訳ではないけれど、この動画を見て4年間の振り返りを書き終えて、緩やかに気持ちが落ち着いていったことを覚えています。
オリエンテーリングは趣味として続けるし、他にも楽しい休日の過ごし方は沢山あるはずだしそれも悪くないかなと。
そこから大学のオフィシャルや、地域クラブ、インカレ運営と関わりは残しながらも、仕事や他の趣味もしつつ過ごすようになりました。


3.全日本に向けてもう一度

一度は離れたオリエンテーリングですが、色々なきっかけがありもう一度頑張り始めることにしました。
3年目になり社会人生活にも慣れてきたこと、久々に読み返したアドベントカレンダーの中で田邉選手の記事(リンク先)に強く影響を受けたり、Stravaで熱い選手らに感化されたことが大きかったです。

やるからには、大学時代に到達出来なかった全日本大会が目標。
まずはしっかり体を作り、月6回程度のオリエンテーリング頻度を保つこと(社会人としてはこれが一番難しい)に努めました。そのためには小さな練習会も遠くのスプリントも躊躇なく行きました。

そのうちオリエンテーリングが大好きだったことを思い出して、そこからは最高でした。
面白い大会のためなら日本中どこへだって行きたいし、矢板もベイシアも何度入っても飽きません。東大OLK大会のEAも務めさせてもらい、ハイエースに揺られて森に放り込まれ、調査が終わったら走って会館まで帰るのも楽しみでした。
何より今まででは信じられないくらい速くなっていく自分に、自分自身がわくわくして仕方ありませんでした。

練習もなるべく効率化(時間をかけないことではない)するため、走る以外の時間に沢山考えることにしました。
①森の中の走力、②オリエンテーリングの言語部分(技術論的なところ)、③オリエンテーリングの非言語部分(思考や動き) の3つのアプローチで伸ばすことにしました。

①森の中の走力
基本のトレーニングとしてはレース中の平地やコンタリングと同じ速度帯(4:30-5:30/km)で多少の登り下りのある不整地走、それ以上は土日のレースの疲労とのバランス次第としています。
現状のトレーニング(月6オリエン+不整地jogで200km/月)に不足は感じていますが、仕事に支障が出ない限りの(既に出てる気がする)睡眠時間がボトルネック。

②オリエンテーリングの言語部分
皆が良く言う技術論です。
自分にとってはレース中の行動・思考ルールという位置付けで、基本的にこれに従うことで、素早く最小限の負担でナビゲーションの判断が出来るため必要だと思っています。毎レッグ1から考えていたら遅いし頭疲れるので。
最近平岡選手や元春選手の考えを自分と比較したりしてみての個人的な見解ですが、ある程度のレベルを超えると皆行き着くところは近しいのではないかと思ったりします。

③オリエンテーリングの非言語部分
①②は皆取り組んでいるけれど、ここは最も他人と差を付けられる部分だと思いこっそり1年間磨いたところです。自分がインドアOやフォレストスプリント(≒ファシュタ)を比較的得意としているのはこの部分故だと思っています。
スタートした瞬間の頭の中、走りながらの目や手の使い方、登り始めの重心移動やヤブの切り方だったり、並走した選手の利用、パンチングや脱出の瞬間などなど、ありとあらゆる所作に熟練度が垣間見れることがオリエンテーリングのスポーツとしての面白さだと感じています。ただし垣間見るには森の中でトップ選手に会うしかないですが。
これらを「非言語部分」と一括りにするのはナンセンスかもしれませんが、どれも「この感じだ!」と感覚的な習得をしている気がします。それでも色々と試す度に新しい世界が開けて、毎レース反省の質も向上したように思います。
実際に小牧選手・谷川選手に追走を申し入れたり、ファシュタの中で様々な選手の動きを見て良いところを盗もうと試みました。一番上手だと思ったのは全日本で追走した稲森選手。
こういう部分は小手先のテクニックかと思いきや、少し変えるだけスタイルが一変して一気に巡航が上がったりします。まだまだ改善出来る課題が大量にあるので、もっと速くなれると思うと楽しみです。


4.人と話すこと

2022年はオリエンテーリングを通じて話す人が増えたように思います。
最近速くなったねと言ってくれる人たち、いつも勝負を楽しみに出来る人たちがいるからこそ頑張れている気がします。

大会会場で近況を話したり、一緒に遠征に行ったり、Stravaでトレーニングを見ていたり、同じ経験を共有するからこそお互い応援したくなるのでしょう。
いつも挑戦する姿を見せてくれる前中選手、新田見選手、稲毛選手、2023年最も手強いと思う殿垣選手、CC7で3走を巡り競い合えた橘選手、全日本で怪我をしている自分を対等に見てくれた田邉選手、結城選手、南河選手、いつか選手権で勝負することを心待ちにしている森川選手、遠いはずなのに学生時代より近く感じる北見選手、同じ時期にトレーニングを再開して勝手にライバル視している田中基成選手、自分のことも優勝botだと言ってくれる猪俣選手、オリエンテーリングは速くなるほど面白いことを教えてくれた栗本選手。
CC7で快く3走で送り出してくれたES関東Cの皆さん、OLK大会が中止なってから即山川ドリームを開くことを認めて動いてくださった山川さん、静大大会で怪我した時にレースをやめて助けてくれた山本選手、高野選手。
感謝を伝えたい相手はまだまだ挙げ始めればキリがないです。


5.オリエンテーリングはいつ速くなるかわからない

この記事のタイトルは、6年前にOLKの会報で読んだ前中選手の言葉の中で今も忘れられないものの1つです。
初めて読んだ時は、そう言う人はもともと速かったじゃんと自分も思っていたけれど、今はこの言葉の通りだと思っています。

大学生活では結局2年のロング・3年のスプリントでしかインカレ選手権を走れなかったけれど、この言葉とマキノインカレで見た前中選手の走りが自分を導いてくれました。
いつか自分も同じように、人の心を動かせるような走りが出来る選手になりたいと思っています。
今回CC7ではもしかしたらそういうレースが少し叶ったかもしれないけれど、次は全日本で。

先日久しぶりに話した種市選手は、スポーツで勝負することでしか味わえない高揚感が確かにあって、もう一度オリエンテーリングに取り組みたい気持ちはあると言っていました。
それが出来るからオリエンテーリングは面白いし、今の全日本大会は間違いなくそんな熱狂が集まる場所だと感じています。ありがとうございます。

これからもまだまだ速くなります。次こそ。

おわり

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