大倉集古館『海を渡った古伊万里 ウイーン、ロースドルフ城の悲劇』2021・1.11
最終日にやっと滑り込みで来館。いやいや、道中の電車が普通に怖い。座るのさえ躊躇ってしまう程よ。大倉集古館自体には今回初めて来たけれど、周辺の異様なピリピリした緊張感はアメリカ大使館の前だからなのね。一部大使館側の歩道が通行止めで歩けないくらいの警戒感。あまり警戒されると突然走り出したい気持ちに駆られるが、モチロンやんない。
しかし案山子、外から眺めると近代的なビルに囲まれている東洋建築の重厚さは異質な存在感を放ち、設計当時の欧風建築と違ったものを建てたいという狙い通りに周囲からは堪らなく浮いている。内部の階段には狛犬的な意匠が凝らしてあったり、ベランダの装飾も素晴らしい。館内撮影不可なのがとても残念です。設計の伊藤忠太氏の妖怪好きモチーフが盛り込まれた2階の天井の龍の顔など、ほぼ格闘ゲームの東洋御殿ステージという感じで大変良い。建物だけで十分楽しめる。
近年、地下階の増設改修工事を終えたばかりで、上階の東洋風と違い地下はモダンな雰囲気を醸している。土門拳記念館設計の谷口吉生氏が携わっているそうで、改修の際は地下を掘削するために曳家で建物ごと動かしたとビデオ映像の紹介で流れてはいるが実際に見ると石垣部分もそのままなので、動かしたなんて全く想像が出来ないよ。
地下にはミュージアムショップと常設のミュージアムになっている。作られたのが紀元前という乾漆の巨大な鉢は、現代まで残る歴史の迫力に圧倒される。
企画展示は、第二次世界大戦でロシア軍(当時はソ連?)の侵攻を受けたロースドルフ城が略奪に遭い、その際に粉々に破壊された陶磁器の破片と修復を受けた品が並ぶ。現在も同城では当時の被害状況を残して後世に戦争の愚かさを伝えるという展示をしている。今回の会場の2階に、それを復元したコーナーもあって文化財が戦争に傷つけられる生々しさがあった。
割れた陶磁器の中には日本の伊万里焼だけでなく景徳鎮のチャイニーズ・イマリ、オランダ窯のなんちゃって伊万里もあったりする。日本的な絵柄は、そんなに人気が高かったのだろうか。何処ら辺がヨーロッパの興味を持たれたのかちょっと気になるな。そして異文化を楽しめるのは教育を受けた上流階級だけで略奪兵は陶磁器の価値は分からなかったのか?きっと売れただろうに。すべて割るなんて残念よ。
被害にあった品の修復は日本の職人だが、元が全く分からない凄腕修復は、ドラえもんの〈タイムふろしき〉か、ジョジョの〈クレイジー・ダイアモンド〉。目を皿のようにして見ても大皿の傷が分からないの凄過ぎない?破片が揃わない物は一部だけの修復だが、故に戦争が奪った取り替えの利かなさを提示しているようで切ないな。
今月また始まったら緊急事態宣言で会期は短縮し入場は時間指定ではないが、間隔開けて喋りはご法度。中年女性が、お喋りで注意されていたのに、外国人親子の大声は野放しなのは何故なのか?感染予防は全員に適用してよ。
注意書きはあるのだが日本語オンリーだった。オークラの正面なのに、そこ配慮足りないんじゃないか?想定できるでしょう客層くらい。
頼んますよ。
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