生きてさえいれば
元夫とは娘の体調不良とか進学とか
互いの病気とか
電話じゃあ済まない
直接会って話さないとって
大きな節目の案件では
(厭々ながらも)
大人だししゃあねえと会ってきた
けれども、要件を済ませて
ちょっとした近況の報告に入ると
嚙み合わない話に苛立ち始めて
だから会いたくなかったんだよと
離婚するだけの経緯のあった二人だから
もう普通のお話しするのさえ
結構無理目なのも致し方ない
さっくり話を切り上げようと
赤ベコみたいにひたすら頷き始める
多分そんな不機嫌なオーラは
元夫も感じ取っていて
昼間にお茶しかしないんだけど
別れ際に
今度はさ、夜にお酒でも飲まない?って
誘ってくれても
私、お酒はもう飲まないのって
ニベアもなくじゃなかった
ニベもなくピシャリと
閉店シャッターおろして
差し出される右手だけは
申し訳程度に握って別れた
でも
私が大きな病気をして
生きてるだけで丸儲けみたいな境地になり
それまで拘ってきた元夫の数々の言行が
どうでもよくなってしまって
本当に水洗トイレにグルグルと渦になって
流れていった
リセットされた関係で会ってみれば
一度は好きになって
それも結婚しようとまで思った人だから
ふつうに楽しい笑
中野で待ち合わせる
お互いによく知っている街で
ふらあっと明治大学の裏に向けて歩き出し
カフェに入る
何飲む?
チャイにしようかな
そう二人とも紅茶派で
まあインドで出会った二人ですからね笑
ここはチャイ一択でしょう
同じ障害者福祉の仕事をしているから
仕事のことを話しても共通点は多いし
同じく大病を患ったから
健康についてや病後の自分の軸足や重心のことを話しても
やっぱり体験に基づく真実味があるし
どん詰まり迄いった人間の
あとはもう笑うしかないみたいな
ところもお互いに頷きあえる
勿論元バンドマンだから
私が勘違いしてエルビスコステロ亡くなったねって言ったら
バートバカラックの間違いじゃない?って
直ぐに訂正してきて
おおっ流石、間違ってるのにあってるやんと
畏怖のまなざしで見降ろしてしまった
(ヒールを履いた私より彼はお背が低いのだ)
やっぱり若いころ俺もそうだけど
みんな無茶しているから
長生きはできないなあ
還暦はすごい大きな関門
越えられないで亡くなるやつが結構多いよ
シミジミするのも
初めて会ってから長い時間がたったからこそで
ムンバイ空港であった二人にも
東京で諍い合った二人にも
見えなかった景色が今の二人には見える
なんなら一周回って
またおんなじところに2人で立ってるみたいな
あ、誤解しないでくださいね
元夫にはパートナーがちゃんといるんです
復縁とか現世の下衆な話じゃなくて笑
これから始まる無邪気な二人みたいな空気感で
また二人で話ができるなんて
誰か思ったかイワンヤオヤ(あ、これ無理やりや涙)
今度さ、十条に飲みに行かない?
パレスチナ料理とか、クルド料理のお店があるんだ
いいねえ、辺境の地の料理
エッジ好きの赤毛の大好物だよ!
ちょっとさ、本屋に寄りたいんだけど一緒に行かない?
え?タコシェ?
え?タコシェ知ってるの?!
ウフフ
私を誰だとお思いですか
私は赤毛のチコだよ笑
中野で本屋でタコシェ知らなかったら
モグリやんけ!!!
そう
ふたりとも
辺境とかマイナーとかマイノリティとか
革命とか徹底抗戦とか反米とか
好きだ笑
前に飲みに行こうって言われたときは
蛇蝎の如くに嫌ったのにね笑
人は変わる
いい加減なものよ
生きていることにただただ感謝して
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