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凪のとき

旅をすると
目覚ましをセットする時間も変るし
先ず洗濯機を回して
お湯を沸かしなんて
朝のルーティンも変わる
まだ明けぬ朝に
浅い眠りのムスメ等を起こさぬように
そっと支度して
仕事とは反対の方角に朝靄の中ツマサキを向けて歩き出す

初めて乗る発車時刻の決まった列車
チケット握りしめて
聞き慣れぬ名の鳥に案内されて
私と同じように日常を離れて
旅をする人でいっぱいの座席に身をうずめる

聞き慣れぬ外国語と
耳慣れた日本語のアナウンスを子守唄に
ウトウトすれば
車窓後方にグングンと東京は遠くなって

景色は秋に茶色く黄色く赤く彩られて

こうやって半ば強制的に
日頃のルーチンから身体も脳みそも剥がされていくのが
旅の醍醐味なんだよなあと

ただ知らない街を歩いて
何が見えるか予測のつかない景色を
歩く速さで後ろに見送っていくだけの

高級な旅館に泊まるわけでも(日帰りだし💢)
地元の名物に舌鼓を打つわけでもなく
(寅さんに出てきそうな昭和な蕎麦屋で椎茸蕎麦1050円やし💢)
映える観光スポットをインスタに上げるわけでもなく
(Instaやってねえし💢写真も1枚も取らなかったわい)

進駐軍が街を接収するずっと前から開業している写真館で
フィルム写真を2枚
生はちみつのお店で
珍しい花から取ったはちみつと
焼き立てのアップルパイをお土産に買ってトンボ返りで東京に戻る

日常から離れる贅沢

普段と違うものを見て
時間の流れに身を浸して過ごすだけで

頭ン中にいつもと違う風が吹き抜けて

グツグツ煮込んで煮詰まった思考に
行動が風穴を開けてくれて
またやってみようと思えたり
その小さな風穴からメリメリと亀裂が入って
違う局面に入れることもある

山の時じゃなかったの赤毛さん?
軽々と前言撤回
山というより凪の時だったのかもしれない
じっとなんかしてられないよ笑



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