ケイツーシロップは生後3ヶ月まで

 母乳は赤ちゃんにとって優れたものですが、粉ミルクの方が栄養的に優るものがあります。その一つがビタミンKです。

 多くの人々にとってビタミンKが有名になった出来事は、山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故でしょう。助産師が赤ちゃんにビタミンKを投与せず、赤ちゃんは頭蓋内出血を来したために亡くなったのです(更に悲しいエピソードもあります)。

 ドイツ語で「凝固(固まる)」ことをKoagulationといい、ビタミンKの語源でもあります。まだ自分でビタミンKを作ることのできない赤ちゃんは外部からビタミンKを補給する必要があるのですが、母乳にはビタミンKが足りないのです。

 以前からケイツーシロップは3回(出産後入院中に2回+一ヶ月健診で3回目)を飲むようになっていました。しかし、残念ながらそれでも頭蓋内出血を発症するお子さんがいます。

 生後3ヶ月まで週一回ずつケイツーシロップを飲んでいた赤ちゃんには、頭蓋内出血のリスクが大幅に減ることがわかっています。日本産婦人科学会の図(PDF)が分かりやすいので、載せておきます(ここでは罹患頻度がゼロになります)。

 色々と議論はあると思います。しかし、赤ちゃんの頭蓋内出血は今後重大な後遺症を起こしますし、何より致死的です。僅かなコスト(リスク)で少しでも頭蓋内出血を防止(ベネフィット)できるのであれば、現在のところ、当院では生後3ヶ月まで週一回ずつケイツーシロップを自宅で飲ませることをおすすめします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?