股関節脱臼について1-股関節脱臼は増えている

 昔日本では、先股脱(先天性股関節脱臼)が多いと言われていました。民族的な素因も考えられますが、おむつをするときに足を伸ばしたままにするスタイルが多かったです。足を伸ばしたまま(伸展位)にすると、股関節が外れやすくなるのです。

 先ほど先天性股関節脱臼と書きましたが、胆道閉鎖症と同じく必ずしも「先天性」ではありません。逆子(骨盤位)では足が不自然な形で伸ばされるため先天的に股関節脱臼になる素因になりますが、産まれた後でも足が伸ばされた状態が続けば、脱臼しやすくなります。

 紙おむつが普及したことで、赤ちゃんは お股を開いた開排位を取ることが多くなりました。足を伸ばさなくなり、子どもの股関節脱臼はずいぶん少なくなったと言われるようになりました。

 しかし、近年股関節脱臼が増加傾向です。理由はいくつかあるようです。

 ひとつはスリングの普及です。勘弁でおしゃれな抱っこ法ですが、巻き方の多くは足が伸ばされたままの伸展位になります。

 もう一つは、SIDS(乳幼児突然死症候群)予防の観点からうつぶせ寝が避けられるようになったことです。仰向けにすると向き癖がつくことが多いですが、向き癖の反対側の足が伸びることが多いです。これを、非対称性緊張性頸反射(ATNR:Asymmetrical Tonic Neck Reflex)といいます。

赤ちゃんの向き癖:フェンシングスタイルは股関節脱臼誘発

 あとは、おむつの中身が漏れ出ないようにと、ギャザーをキツメにしている場合も股関節脱臼の原因ではないかと思います。股関節脱臼の予防は、股関節・大腿の動きに制限を加えないことも大事なのです(股関節が硬めのお子さんに、紙おむつを二枚穿かせて開排位にさせる指導も時々耳にしますが、動きを制限するという意味では不適切かもしれません)。

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