ちょっと待ったその"人事権"、本当に必要ですか?

結論

そもそも人を増やして解決したい課題は何ですか?その課題は、機会損失を十分に鑑みても解決すべき課題ですか?それが十分に説明できるなら別に権限いらなくないですか?

人を増やすために人事権が欲しい場合は要警戒

例えばWebアプリケーションでパフォーマンス問題が起きているとする。この場合まず何をするか?そう、計測及びボトルネック特定である。
人を増やすというのはパフォーマンス問題への対処で言えばサーバー台数を増やすようなものである。DBがボトルネックなのにアプリケーション台数を増やしても意味はない。それどころか人はサーバーと違って簡単には増やしたり減らしたりできない。

かく言う私も「PMなんてなんぼいたっていいですからね」と脳死でPM採用しようとしていたことがある。これはほぼ「APサーバーなんていくつあったっていいですからね」と一緒である。そんなわけがないのだ。

もっというと、正しく計測した結果APサーバーがボトルネックと判明した場合、その台数を増やすことに権限など必要ない。むしろその状態でAPサーバーを増やすための稟議を書いていたら逆に怒られる(さっさと増やせ!と)。人を増やす時もほぼこれと同じではないだろうか。
つまり、人を増やすために人事権が欲しいというのは、正しく計測できていないという可能性があるため、要警戒である。

計測する・優先順位を付ける

ということで、計測することにする。ただしパフォーマンス問題とは違って厄介なのは、そもそも捌く必要がないリクエストが多い・優先順位付けをしなければならない、という点である。かつこの優先順位付けが非常に難しい。例えば、技術的負債を返すための投資を金額換算することは一般的に難しいとされる。PMが担う責任やプロジェクトはこのように価値を金額換算することが難しいものが多い。私は以下のアプローチでこれに対処している。

”テーマ”、”エピック”を洗い出す

例えば「新規顧客獲得」「LTV最大化」「技術的負債返却」といったものがこれに該当する。これだけでは優先順位付けなどできないが、このステップではそれで問題ない。世界平和と環境問題対策のどっちが大切ですか?みたいな議論はしてはいけない。なお以下はテーマに用語を統一する

テーマ毎に1〜3ヶ月程度の計画と達成目標を立て、次の3〜6ヶ月で何をするか決める

それぞれのテーマを実現化するために計画と達成目標を立てる。ここでは期間とゴール、必要な工数、期待されるリターンを精緻に洗い出す。それが終わったら、次の3〜6ヶ月で取り組むものをチームのキャパシティを鑑みながら決める。当然、一部のものはあふれるはずである(溢れてないのだとしたら多分何かが漏れている)。

溢れるものは溢れて良いのか、議論する

上記工程で溢れるものは本当に溢れていて良いのか、他にやろうとしていることを捨てるべきではないのか、他のスコープを縮めてでもやるべきではないのか、PMがボトルネックならばBizはEngに寄せられないのか、等を議論する。
これで”溢れちゃダメだね。だけど他のものも捨てられないしBizやEngに寄せられるものも無いね”と結論が出たら、PMを新しく採用することに誰も反対などしないはずである。PMがボトルネックなのだから。なおここでいう「PM」はエンジニアでもbizでもなんでも置換可能である。ボトルネック解消に寄与しないリソース増強はスループット向上に繋がらないどころか悪影響すら及ぼしかねないのは、webアプリのパフォーマンス問題に取り組んだことがある人なら直感的に分かると思う。

評価や価値観の問題の解決には、人事権が必要かもしれない

権限で解決すべきは、他者の価値観を変えることを先送りにしてでも取り組まないと事業が停滞するものに限定されると考える。最も多いのは人事評価、もっというと価値観の問題である。PMにもかかわらず単年の利益貢献しか評価されない/複数年に渡る貢献を見てもらえない、そもそもPMへの期待がおかしい、PMが重要だと思っていない、等がこれに該当すると思う。

意思決定者がこうした評価や価値観を持っている場合、これを説得するには膨大な労力や時間を要するため、そんなことを待っていられない→権限でこれを解決、というのはあり得るかもしれない。だがそもそも、意思決定者がそのような価値観の現場で、事業やプロダクトを成功させることは至難の業である。

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