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「柔道を身につけ、少女時代の夢を実現」清水昭子さん(刑事警察)

試合では当時、重量級の女王・田辺陽子選手に果敢に挑み、練習では持ち前の明るいキャタクターで女子チームのムードメーカーとなっていた清水昭子さん。往年の女子柔道ファンには、佐藤昭子さんと伝えた方がおわかりいただけるでしょうか。柔道が大好きで、精一杯頑張った清水さんの現在のお仕事はなんと刑事!9名の部下を抱える課長でもあります。清水さんがたどった刑事へのセカンドキャリアを紹介します。

プロフィール

清水昭子(旧姓・佐藤) しみず・あきこ

1968年生まれ。岡山県出身。就実高校2年のとき、女性警察官になるために柔道部へ。学校の練習だけでは足りず、生々館、岡山県武道館にも通って稽古した。国際武道大学へ進学し、全日本女子体重別(現・選抜体重別)3位、福岡国際女子選手権3位、アジア選手権2位の成績を収める(すべて72kg級)。1990年大学卒業後、大阪府警に奉職、全日本女子強化選手選考会(現・講道館杯)で優勝して、1992年全日本女子選手権で2位。1993年、現役を一度引退。1994年、大阪府警を退職して岡山県警に入り、現役に復帰。29歳になる前に引退して職務に専念し、2000年刑事となる。現在、岡山県警赤磐警察署刑事課長。子どもは高校2年生の長女と中学1年の長男の二人で、長女は母と同じ柔道家として現在、全国大会へも出場している。

柔道でのキャリアを積み、憧れの職業へ

―― 警察官という職業を意識したのはいつだったのですか?

「テレビドラマなどで活躍する刑事さんの姿を見て、幼少の頃から〝私もなりたい〟と思っていました。柔道を始めたのも警察官になるために役立つと聞いたからです」

――柔道の道へ進まれた経緯を教えてください。

「警察官になりたい気持ちは変わっていませんでしたが、高校から始めた柔道が面白くなり、選手としても続けたかった。何より、当時、重量級の第一人者だった田辺陽子さんに勝つまでやめられないという思いがありました。大学卒業の頃、警視庁と大阪府警が全国で初めて女子柔道部を発足すると知りまして、実家に近いからという理由で大阪府警を受験。無事、合格して警察官を拝命しました」

―― その後、岡山県警に移られたそうですね。

「大阪府警は女子柔道部をつくったものの、当時はまだ受け入れ体制ができていなかったのですね。そのため、柔道の存続が厳しくなったこと、また目標としていたオリンピック(バルセロナ)出場に届かなかったことなどから、引退を決意したんです。今度こそ、夢だった警察官になろうと考え、私の地元の岡山県警を受験しました」

―― 引退後、再び柔道を始められたきっかけは?

「岡山では2005年に国体開催が決まっていました。そこで帰ってくるなら柔道を続けろと言われまして。とはいえ府警には現役引退を条件に退職させていただきましたので、一度はお断りしました。でも、再び柔道衣を着ることも採用の一つの条件だということで(苦笑)府警では柔道だけに専念させてもらえたのですが、岡山では仕事と柔道の両立が求められました」

多忙な交番勤務の合間を縫って、練習の日々

―― 警察官としての初仕事は何でしたか?

「最初の配属は、駅前交番でした。ここは県内でもっとも忙しい交番の一つで、最初は地理教示も満足にできず……。必死で警察学校時代に頂いた書籍を紐解いて、勉強しまくりました(苦笑)」

―― 仕事と柔道の両立というと、非常に忙しい日々だったのでは?

「大変でしたが、すべてわかって飛び込んだ世界ですし、大阪にかわいい後輩を残してまで踏み出した一歩だったので、仕事を投げ出すようなことは絶対にできません。ここまで力を貸してくださった岡山県警、柔道連盟にも恩義があります。交番勤務、勉強、空いた時間を見つけては機動隊に出かけて練習する。絶対にやり通してやる、と当時は必死でした。そして仕事を覚えると段々と欲が出てきて、警察官の仕事一本に絞るようになりました」

柔道も警察の仕事も、チームワークと自他共栄の精神で

―― 刑事になったきっかけを教えてください。

「自分から希望したわけではなく、刑事の辞令が下りたためです。最初に配属されたのは〝検視や火災を扱う係〟で、警察官になって初めて〝やれるかな〟って思いました(苦笑)。着任初日、荷物も心の整理もつかないままいきなり『現場行くぞ』って言われて、変死体の横たわる現場へ直行。そこからは〝やるしかない〟と覚悟決め、刑事の仕事を覚えました。でも、やっていくうちに刑事警察という業務の真髄をたくさん教えていただき、また自分でも学んで、この仕事の奥深さとやりがいを感じるようになりました」

―― 柔道で得た経験は、いまの仕事に生きていますか?

「柔道は対人スポーツですから、相手がいないと練習できないし、強くもなれないし、自分を高められません。そして、その人たちに感謝の気持ちを持たなければ、次に相手をしてもらえません。いま私がやっている仕事も一緒。みんながいて、みんなが頑張ってくれるから、仕事ができるのだと私は思っています。警察の仕事はチームワークで、自他共栄の精神があってできるものだと感じています」

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本記事は『まいんどVol.17』に掲載された記事をweb版に再構成したものです。

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