18.The Moon(月)

憂鬱・漠然とした不安・想像力の暴走

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「月に代わってお仕置きよ!」なんてフレーズが流行りましたが、タロットにおいての月はなんとも陰鬱な、靄のかかった危険な道行のイメージです。

画面下半分の池は潜在意識を表すとされ、そこにいるのは月に吠える2匹の犬と、ザリガニ。…ザリガニ…?

実は犬は狩人の女神「アルテミス」の猟犬を指し、「ザリガニ」は蟹座を表すという見解があります。ただし、このライダー版の構図におけるそれぞれの役割は判然とせず、未だ謎に包まれたカードであるそうです。水の奥に見えるふたつの塔は、「死(Death)」のアルカナにも見られます。いずれのシンボルも道中の障害を表現するとみなされるのが一般的ですが、後ろ向きの動物たちが何を言わんとするかは、引いた時の直感により大きく変動するもののようです。「愚者(The Fool)」の絵の中にも犬は登場しますが、やはりその意味についてはプラスともマイナスとも捉えられるものです。

「星(Star)」のカードと同じように謎の多いアルカナで、そこに具体的な明快な答えを求めることはできそうにありません。これは、女性性を表現するカードに共通した特徴です。水や空気のような性質は、汲み取ってみてもその全てを理解することはできないのと似ています。良いとか悪いとかを分ける境界線と言えるものを持たないため、感覚的で言語化が難しいことが多いです。

一般的に、「月」の示す意味は恐れ・不安・過剰な想像力などが挙げられます。

その意味づけは「星(The Star)」との比較で明らかになりますが、同じ夜を照らす光にしても、月とは神秘的で、満ち欠けがあり、また犬を興奮させ、人を恐ろしい幻想に導きます。

狼男や吸血鬼も、月と深い関係があることから、月夜の晩に対する人々の恐れが投影されたものであることが伺えます。

また、月は幻想的、ファンタジー的な神秘世界のインスピレーションの元になることから、想像力を掻き立てる存在としても認識されます。月の力を感じとり、生命は自律神経を働かせ、新しい生命を育みます。また、その影響により月経などのホルモンバランスの乱れを生じさせ、感情に波を起こす原因にもなるのです。

昔、精神病という概念のない時代には、狂気やヒステリー(神経症)は月の魔力により引き起こされるもの(Lunacy)と考えられてきました。そのため、月に狂わされたものは人間の手に負えないものとして、牢屋に閉じ込められてしまっていたのです。月にまつわる神話においても気まぐれな月の女神に関わるものは、大抵悲惨な末路を辿ります。

「月」の魔力は前向きにも後ろ向きにも働く、まさに「まどい」の力であると理解するとわかりやすいかもしれません。

また、「月」のもたらすあらゆる混乱は個人の力で克服しようとあがくよりも、ただじっと過ぎるのを待つような困難であると捉えるべきでしょう。

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