見出し画像

愛していると言ってくれ⑩

もともとお金があった2人ではない
父と母には
借金癖があった

昔の借金の取り立ては本当に怖い

メイが小学生の時
父と母が
懲りずに借金を繰り返した

挙句、返済できない

子供だったメイにとって
それがどういうものかはわからない
ただ車が停まり
ドアがバンッと閉まる音がするのがその合図だ

もはや逃げられないところまできた両親は
メイに言った

いくら借金取りったって子供には手を上げない
だからお前が
親は留守ですと言って謝りなさい

メイは怖かった
借金取りも
借金を返せないと謝ることも

大きな罵声を上げて
大きな男の人が何人かで入ってくる

小さな玄関に
メイは土下座した

「お父さんとお母さんは出かけてていません。
ごめんなさい」
と言う終わるか終わらないかのうちに
思い切り殴られた

唇が切れて
血が流れた

「ウソつくなボケ!」

「ごめんなさい、ごめんなさい
本当にいないんです」

同じ言葉の繰り返し
メイはひたすら謝った

それでも何度も
殴られ蹴られ
「親はどこだ!」と髪を掴まれ
けれどメイは決して本当のことは言わなかった

言っても地獄
言わなくても地獄
なら言わない方がいい
そう思ったのだ

ひとしきり
メイを殴る蹴るして借金取りは帰って行った

メイの顔も身体も血まみれだった

借金取りが帰った後
父と母が出てきた
「やっぱり子供が謝るのが一番だね」

メイのことを気にかける様子もなく
テレビをつけて見始めた

メイは自分の血だらけの顔と身体を
お風呂で洗って
そのまま一人
布団に潜り込んだ

おかしいことはわかってる
でもそれも今のうちだけ
大人になれば
一人で生活できるようになれば
それまでの我慢

そう思ってやり過ごすには
あまりに傷はひどかった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?