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愛していると言ってくれ④

父は私には関心のない人だった
父は背が低い
とは言っても当時の男性では普通の部類

母が高かったのだ
昭和一桁より少し後の生まれだが
164センチあった

バレーボールと陸上部にいたらしい
インターハイにも出たらしい
当然父よりも背は高く
ノミの夫婦なんて言葉はあるが
父のプライドが許さなかったのだろう

私は見事に母の遺伝子を受け継いだ
背は高いし
歳を重ねてからは顔つきもそっくりだ

そんなふうに母に似ていく私に父は言った
「お前、女のくせにそんな背高くなりやがって
お前みたいなのは一生男にも結婚にも縁がないな
かわいそうに〜」

母へのコンプレックスを拗らせた父は
あろうことか実の娘の容姿を
貶しまくった

「背が高い」
「生意気だ」
「可愛げがない」

言われるたびに私は無表情になっていった
そんな私に父は更に苛立ったのだろう
ある日私は父に殴られて歯を折った

口から血が流れて
何も食べられない
母は医者に行けば金がかかるという理由で
それをしなかった

痛む歯を我慢してじっとしている私の前で
茹でたてのとうもろこしを父は食べはじめた
「ああ美味い!こんな美味いもの食えないなんて
お前は不幸者だなあ」

モノを食べられなくなるくらい殴って
口から血を流してる娘の前で
父は悪びれる様子もなくただひたすらに
とうもろこしを貪っている

人間の心を持った人ではない

それでもこの人がいなければ
幼稚園児の私には選択肢はない

今は耐えよう
それだけを誓った日々だった

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