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愛していると言ってくれ⑪

メイの居場所はどんどん
なくなっていった

家はいつ殴られるかわからない恐怖
転校ばかりでどこにも馴染めなかった学校は
イジメの標的になった

メイは背が高かった
一番前になっても
後ろから2番目

それも恰好の材料だった

メイは次第に
自分のことを話さなくなった

話すことがないからというのが理由だが
それが自分の身を守る最善策だと悟ったからだ

だからせめて
転校先の地域の行事や習わしだけは
行儀良く守った

埼玉に住んでた半年
地域の祭りがあった

子供たちは
低学年は山車を引く
高学年は神輿を担ぐと決まっていた

メイは低学年
山車を引くグループにいた

すると地域のおじさんが
「キミそんなにデカイんだから
神輿を担ぎない」と
高学年のグループに連れて行かれた

当然高学年のグループは
面白くない

突然きた転校生のくせに
なんで神輿を担いでいるの

そう言われて
低学年の山車のグループに戻ると
またおじさんがきて言う

「だからキミはあっちだって言っただろう」

その繰り返しで
メイはすっかり疲れてしまった

どっちのグループに行っても何か言われる

どっちのグループにいればいいんだろう?
きっとすぐにまた転校するんだよな?

そう思ったら
ふっと祭りのグループから消えて帰った

家に帰っても
いいことはないけど
祭りも楽しくない

メイは気付きはじめていた
少しずつ少しずつ
自分の存在が薄れていくことを

親にも
学校でも
どこにもメイの居場所はない

メイは
本を読んだ
本が話し相手であり
心の拠り所だった

けれども
いくら素敵な物語を読んでも
現実の厳しさには
耐えられそうにもないことも
理解しつつあった

そうして次第に
冷めた子供になったメイ

自分がわからなくなっていった

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