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愛していると言ってくれ⑤

私には妹がいる
正確にはいた

他にも異母異父兄妹がいる
だから私は長女でありながら
5人兄弟
けれど異母異父兄妹誰とも会ったことがない

唯一
一緒に暮らしていた6歳下の妹がいた
私が「妹か弟が欲しい」と珍しく言ったからだと
長い間信じていたが

赤ちゃんができた時
母は言った
「こんな子、生まれてきたらコインロッカーに
入れてやる!」
当時、生まれたばかりの乳飲み児を
コインロッカーに棄てるという事件が多くあった

「なんならお前も一緒に棄てたろか?」
平然とした真顔で言う母に私は何も言えなくなった

あるのはひとつ
逆らったら殺される
逆らったらコインロッカーに棄てられる

大人になってもメイはコインロッカーが使えない
「だってお金もったいないじゃん」
と笑って誤魔化していたけれど
本当の理由は違う

そんな唯一同じ親の下に生まれた妹だが
まともに話したことがない

顔を見れば「お前なんかぶっ殺してやる」
と刃物を振り回す
寝ているところをお腹を蹴られたりもした


親にもさんざん「殺す」と言われてきたが
実際殺されるとしたら
妹にだろうなあと思っていた

「生きていればあの子も50近いのか?」

もう街ですれ違ってもお互いわからないだろう
唯一の彼女の特徴は
体臭がキツいこと
そのせいでイジメに遭ったらしいが
50近くなれば体質も変わる

何より彼女は
私と父親が違うのだから

メイは窓越しに見える高い秋の空を見る

「あの子は」

ここからは想像だ
本当のことは知っている人間は
みんな死んでるから確かめようもない

恐らく母が他の男との間に作った子
一応私たちと同じ苗字を名乗っていたけど
認知はされていなかった

そんなところだろう




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