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フリーレンウォーク

 あまり無意味に人目を引きかねない題名は好ましくはないけれど、それでもこれはこうというほかないね。なんにだって誤解はつきものさ。

 ずっと思っていたことがあるんだ。別にきちんと言葉に思い浮かべていたことではなくて、ただぼんやりとね。

 夜通し歩いていたら、道を横切る前に立ち止まって、つい立ちながら寝てしまうね。そうこうしているうちに夜が明けて、次の国が見えてくる。

 ちょうどこんな風に川を越える頃には、いつのまにか夜が明けていて。本当は休みながら行くべきなんだけれど、別に10年かけて終着点を目指すわけでもない。

 だから足裏が痺れようとも、脛に痛みが走ろうとも、ふくらはぎが重たくなってしまっても、それらの不具合が腰にまで伸びていても、つい歩いてしまうんだよね。しゃがむとそれだけで脚が全部つりそうになって驚いたよ。でも、そんなものだよ。

 ほら、着いた。

 六時間で着くと見込んでいたけれど、今回はちょっとニ時間くらい余計にかかってしまったね。まあ、旅に見込み違いはつきものさ。それより脚のケアをきちんと行うんだよ。明日も歩いていくのならね。

 みんな忘れてしまったのかもしれないけど、昔はこうして旅をしていたものさ。それを思い出す旅、と考えると悪くないだろう? うん。ここは悪くないだろう。じゃあちょっと10年くらい滞在しようか。

 冗談だよ。

 さあ、まだまだ先は長いよ。行こう。

われわれが深淵を覗くとき、深淵もまたわれわれを覗いているのだ……