見出し画像

おいしいウイスキー醤油の味わい方

 な…なにをいっているんだ? コイツは? と思ったら大正解。我はメシマズの求道者。お残しはゆるさん。自己責任で腹をくくれ。

 基本的に風評加害でしかないのでリンクを貼るのもためらわれるのだが、まあそれはそれとして貼る。良識ある人々にもっと清く正しく活用してほしい。

 うん、よく読むと「ウイスシー」ではなくて「ウィーユ(ウイスキー醤油)」を舐めている変態さんだから風評ではなくて実評かな……。

 曰く、酒界にはアイスにウイスキーを垂らす遊びで火種を撒いている人々もいるとのこと。こわい。氷菓なのに燃える is ナンデ……? 郷に入りては郷に従え。ムラの外からはわからない世界あり。

 てなわけで、そこらへんのスーパーからお持ち帰りしたAOなるウイスキーと九州系甘口醤油で何回かやってみたわけです。まあうまい。チョコミントアイスにウイスキーを付与する魔法と同じくらいインパクトあってうまい。理屈はよくわからんがとにかくうまい。

 酒ほぼ飲まないけど酒を楽しみたい勢としては今後とも実験を続けたいと思うところである。

 ただよく考えると。みんなすきやきのこと、すきですよね。つまりみりん(わりと酒)としょうゆでうまいってことですよね。肉じゃがもそう。だからウイーユうまいの当たり前だったかもしれない。

 * * * * *

 ところでフランベってカッコいいけど、なんでアルコールとばしてしまうん? とずっと思っていた。香り付けという意味を知ってもなんで香りとばしてしまうん? と思っていた。

 いや飛ぶでしょ。燃やしたら香り付かないでしょ常識的に考えて、と。みりんもアルコール飛ばされてるんですけどもね。

 そして時代は下り、スモークの民がチップでいぶすぞーと流行らせて、なるほどスモークチーズのあの謎味は香りだったんだ、というわかりを得た。どうやら香りは味であるらしい、としぶしぶ認めるに至ったのである。

 しかしね。かつてテレビでよく拝見していた、鼻をつまんで食べて「うそ~~~! おいしくな~~~い!」とやるやつね。うるせえウソつくんじゃねえよ普通にうまいわ(いま昼飯で再検証した)。

 ただ多少の誇張はあれど、気持ちはわかる。たぶんみんな想像以上に鼻がいいんだ。つまり自分の鼻がわるかった。思ったよりみんな「味」について嗅覚と味覚を混然一体にしているものなんだ。思てたんと違うのはその「距離」だ。なぜなら自分もある程度はそうだったから。

 むしろ完全に見えなければ完全に見えないのだと明らかになる。中途半端に見える方が見えてないことがわからない。でもよーーーく目を凝らして見てみると、やはり違うらしいことが浮かび上がってくる。

 たとえば「い、今まで何不自由なく生きてきたので……これから自由に生きて行けるか不安です……!」みたいな人間が発生すれば、いやおまえ今まで何してきたんや……となるのは致し方ないというもの。

 とはいえ事実として何不自由なく生きてきたならそうもなる。事実は事実。いや本当、今までの人生で何してきとんねん。しかし論理的に考えればそうなるのは当然の帰結なので怒られても困るのは当然の予測である。

 不自由の中に生きてたことに気付かないのは?

 不自由なのに何不自由なく生きていたからだ。

 運よすぎ。現代において目が多少見えなかろうが鼻が多少鈍かろうが日常生活において何ひとつ不自由しないのである。いやむしろ水場の掃除等でイヤなニオイを自らヨシとするまえに自由意志でシャットアウトできるから便利まである。

 完全に「盲香」ではないけど恐らくわりと鼻が鈍い。最近は知覚過敏、感覚過敏という言葉も広まったけれども、それは歯が無駄に痛かったり目や耳が無駄に痛くなるケースが多い。鼻が痛くなるのは花粉症で鼻かみすぎたとき。

 まれによくアロマですよ~といって油を塗って手足をメンテしてもらうのだが、まあもう何も感じない。うそです。かつて感じてたけど、コロナマスク期間をはさんで虚無なった気がする。最近判明しつつある理屈で言えば、ろんぐこびっと! こびこびーーーの可能性もないではなかろうが、今のところは花粉症の進行による成分が多めと仮定しているところ。

 で、後からこびこびの理屈検索しようと思ったらクソったれ情報ノイズばかりで笑う。まあ原因はわりとどうでもいい。ここまで過去現在未来を矛盾の釜で煮詰めてぐ~るぐるして生まれた結果から導き出す答えのひとつに興味の花が咲いたわけで──

 もしかして:私、味覚で嗅覚を捏造罪


 カァ~~~~おかしいと思ってたわァ~~~!

 もうさ、鼻が鈍いのにさ! ちゃんと香れるわけないじゃんさ! いや実際コーヒー豆を嗅がされても「うん……? すこしいい空気ですね……?」だったのが挽いたら「めちゃくちゃいいニオイっすねコイツぁーーー!」になるのだからさ?

 こりゃもう完全盲香ではないけど鈍いよね常識的に考えて。あんときの挽いてくれたひと、ご配慮いただき本当にありがとうございます。おかげで読み損なった空気がなんとかまろやかになりました。いやだからワインとかウイスキーみたいなそのなにかすごくすごい種類のいいにおいがあーでこーですごすごのすごっすねーーーーーーーー!!! 

 とか諸々わからんのは当然よね。

 決して空気を読み損なった私が悪いわけではない。そう私の鼻が悪いだけで……うん……私の……たったひとつの鼻が……そうだよ私が悪いだよちくしょうめ。んだよウソをつくためにゃ事前に別の真実を手札に加えておかねぇといけねんだよしゃらくせえ。

 でも香りって基本は味じゃん?(暴論)甘い香りって味のことですよね? 臭い匂いって納豆味ってことですよね? ヒノキの匂いはゼンマイの生姜味みたいなもんですよね? いやもう苦しい。やっぱ香りは香りかも。なんかすいません。

 * * * * *

 そういうわけで、一般人が普通に鼻で味わってる味を、もしかしたら「鼻がより悪くなる前の味」を元に捏造して味わってる可能性なきにしもあらず。どうも聞くところによると、嗅覚は脳の記憶野と結びついているという。

 すると逆に考えて、味の記憶から嗅覚を捏造しても仕方ない。つまり私は悪くない。ちょっと手癖が悪いだけ。そうです私はとんでもないものを盗んでしまいました。あなたの香りです。だからいい酒の味が本当にわからんのかもしれない。でもうまくない酒はわかる。最近いい酒を飲める機会を得てはじめて知ったから。

 うまい酒、普通にうまい。

 うまくない酒、普通にうまくない。

 でもバカ高い酒、そこまでおいしくない。

 すべて香りという補助線を引けば矛盾の波が凪いでいく。すべての線が一本につながって名探偵。流石にワインとウイスキーの違いはわかる。味だから。ウイスキーを醤油に配合するとうまい。味だから。

 そういったアレコレを勘定に入れると、みんなとおいしく感じうるものが決定的にしかし絶妙に微妙にズレているとしても、なんらおかしなことではない。おかしすぎないから、なんら障害ではない。

 いい酒をなんぼか飲んでみて、結局のところ安酒は安い。いい酒はいい。そのくらいのざっくり過ぎる感想しか出てこなかったのは香りが足りてないからの可能性をとても疑っている。

 ただ、見えなきゃ眼鏡かければいいけれど、香えなかったらどうもならん。五感の中で触覚くらいどうにもならん。そこに第六感を入れると、むしろどうもなる方がラッキーかも。ハードラックとダンスったら、よりグッドラックの味わいが沁みてくる。たぶんそういうことなのだ。

われわれが深淵を覗くとき、深淵もまたわれわれを覗いているのだ……