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地域住民参加型土地改良区直営施工(労務費支払型)による水路補修工事

(平成19年10月31日 東北支部農業農村工学会 優秀賞)
愛谷堰土地改良区は、日頃より土地改良区直営施工に努めており、U字溝付設や防護柵設置などを実施している。今回は、新農業水利システム保全対策事業により実施した幹線水路の樹脂モルタルなどによる補修工事の事例発表を致します。
1.補修を要する幹線水路の概要
(1)幹線水路名称・規格等
名称:愛谷用水路(全長18km)
経過年数:40年(今回の現場)
標準断面:上巾3.25m下巾2.8m高さ1.1m
規格:現場打ち無筋コンクリート三面
2.補修工法等の検討
(1)用水路機能診断結果
コンクリート強度は、現時点においては支障がないが骨材の露出や一部滑落、漏水箇所が表面面積の5割以上見受けられるため、コンクリート保護補修を実施し長寿命化を図る必要がある。
(2)補修工法の比較検討
 注入・充填工法、断面修復工法、表面保護工法と主要材料FRP、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレア系樹脂、ポリマーセメントモルタルなど24種、目地補修工法は、シリコン樹脂、エチレンプロピレンゴム、エポキシ樹脂など4工法について比較検討、一部現地試験を実施し、経済性、現場施工性、特殊施工機械の必要性の有無等から判断し、エポキシ樹脂配合セメント系防水被覆材とした。また、目地は従来工法であるポリウレタン系シーリング材とした。
3.今回実施したエポキシ樹脂セメント工法
区分:表面保護被覆工法
名称:エレホンプライマー+エポミックス7000工法
概要:水系エポキシ樹脂を配合した複合塗膜防水剤で、エポキシ樹脂のもつ高耐水性、接着機能、アクリルエマルジェンの特殊造膜による防水効果により70mもの耐水圧性をもつ。
接着力により背面からの水圧に対しても強く、剥がれがない。
施工性:プライマーセメント等は、左官工として施工可能であり、配合数量の管理と高速ハンドミキサーによる適正攪拌を行えば特に難しい作業はない。また、エポキシ樹脂配合セメント系防水被覆材は、エアレス吹付けが可能であり吹付け作業員及びエアレスポンプを確保すればよい。
表面仕上がり状態:モルタルと同等
温度膨張による躯体との追従性:コンクリート追従性は良好
耐摩耗性:モルタルの10倍以上
耐薬品性:コンクリート同等以上耐酸性にも強い
耐用年数:吸水防止効果10年以上(予想値)
曲線施工:可能
低温時施工:エポキシ樹脂使用で5℃以上
実績:防水材としては多数あり
メーカー:エレホン化成工業
◇作業手順
①下地表面清掃(高圧水洗20MPa)
②(骨材等が流出した部分)エポキシ系接着剤塗布
③(骨材等が流出した部分)繊維補強型ポリマーセメントモルタルのコテ塗り
④下地調整用モルタルのコテ塗り
⑤混和液のローラー塗り
⑥水性エポキシ樹脂配合複合塗膜防水材吹付け
(1)標準仕様
施工順、項目及び部位標準厚さ
① モルタル補強工
既設水路の側壁凹凸部分で厚さ5mm以上ある部分 5~30mm
② 側壁下地調整工
側壁全面 3~10mm
③ 床版生コンクリート工
床版全面 50~100mm
④ 防水モルタル工
側壁及び床版全面 2.5mm
(2)施工数量
項目、延長、数量
モルタル補強工 1,056m 126.7㎡
側壁下地調整工 1,056m 2,534.4㎡
床版生コンクリート工 611m 977.6㎡
防水モルタル工 830m 1,993.2㎡
4.地域住民参加型直営施工工事概要
(1)工事概要
発注者:愛谷堰土地改良区  工期:H18.8.31〜H19.3.30(212日間)
実作業日数:121日間    労働延べ参加者:925人
(2)賃金及び車両等の賃借料単価
一般作業員: 8,000円(一日8時間) 軽作業員: 5,600円(一日8時間)
重機運転:11,000円(一日8時間) 作業主任者:9,000円(一日8時間)
現場代理人:10,000円(一日8時間)  軽トラック: 3,300円
(3)工事管理
請負業者と同じように施工計画書を作成し、施工管理、安全管理、品質管理,工程管理を行う。
土木工事に必要な有資格者を配置する。工事検査は、確認、中間、竣工とした。
5.コスト縮減
①請負施工とした場合積算額 28,120千円 ②直営施工工事総額18,737千円
③コスト縮減額(①-②)   9,383千円
6.今回の直営施工で愛谷堰土地改良区が学んだこと
(1)下地の仕上がりを上等にするために、まず、高圧洗浄を妥協する事なく全面100%行ったが、手先の器用な人でなければやり直しがかなり出てくる。
(2)左官を初心者に指導しながら行ったがやはり、不器用な人は、半年経っても思うようにならなかった。しかし、器用な人であれば作業時間はかかるが一ヶ月あれば仕上がりは上等である。
(3)補修材料数量は、設計段階での把握は難しい。1スパーンごとにだいぶ数量が違っていた。
(4)側壁全面より浸透水、小さな空気孔があり、3~10mmのコテ塗り一回仕上げでは、修復しきれず、二度塗りや補修を繰り返した。また、既設コンクリートが板状型枠で施工されており、凹凸が激しく研磨作業や下地厚塗り作業を要した。
(5)目地については、従来工法であるポリウレタン系シーリング材を採用したが、強固なものを造るには、現在においては、エチレンプロピレンゴムなどを使用するしかないと思われる。
(6)適切な時期に表面保護を実施すれば、安価で作業が施工出来る。劣化しては材料や手間がかかる。
(7)パウダーやエポキシ系接着剤等は、10kgで1万円前後と高価でありながら、適正量を配合しなければ期待される効果が出てこないため、請負に出す場合は、信頼のおける業者を指名しなければならない。

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