うつ病の友達

私の今でも思い出す女の子について

その子はうつ病だった
見た目はとても可愛らしい子鹿のような見た目で、笑った顔はみんなが好感を持つような華やかな女の子。新しい服を着て教室に入ったら皆が口々に「可愛い」と言う。そんな彼女と仲が良くなった私は、7月の半ば、売店でアイスを食べながらお互いの秘密を共有した。私は統合失調症で大学を休学していた話、彼女はうつ病で、毎日いなくなりたいと思いながら日々を過ごしているということ。彼女のカミングアウトに言葉を失った。普段の笑顔溢れる彼女とのギャップが大きくて、本当だと信じることは出来なかった。

彼女は時々支離滅裂なことを言う。男の話が多かった。あんな行為がしたいとか、水商売がしたいとか、どんどんエスカレートして、私は彼女がとにかく心配で強い言葉で非難した。私も子供だったのだ。心配という感情に、嫉妬や蔑みといった相反する感情を隠していたと今なら言える。
心配しているという体で、彼女の母親のように会う度に彼女を非難した。彼女は何も言い返さなかった。ただ黙っていた。

1度クリスマスを彼女の家で過ごすことがあり、彼女はお気に入りの曲を2曲教えてくれた。

その2曲はとても暗い曲だった。歌詞がとても悲しくて、その悲しみに吸い込まれそうになる曲だった。彼女は一人暮らしの狭い部屋の中で、こんな曲をずっと聞いているのかと想像した。その光景はゾッとするほど切なかった。

彼女とはもう会っていない。
今でもその2曲を聞く度に彼女を思い出す。
私の若さゆえの未熟さで彼女を傷つけたこと、その行為を当時は正義だと信じきっていたこと、彼女がどんな思いで毎日を過ごしているのか、考えようともしなかったこと。
それでも私は彼女が好きだった。
その気持ちはちゃんと伝わっていたのか、きっと伝わってないと思う。
彼女はいつも笑っていた。いつも優しかった。
もうきっと会わないけど、彼女が心からの笑顔で笑えていることを、祈っている。

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