シングル・マン

RCサクセション/1976年作

忌野清志郎の独特な歌唱法や作詞作曲のエッセンスはその後のフィッシュマンズやたまなど日本のバンドに多大な影響を与えていると思う。昔は“ビジュアル系より凄いメイクでへんなイロモノな人”なんてとんでもない勘違いをしていた。

このアルバムはRCサクセションの2枚目の作品で、当時は全く売れなくて、女性の部屋を転々としていたこともあったと雑誌のインタビューで本人が語っている。
とにかくこのアルバムは、『スローバラード』を筆頭にバラード曲が素晴らしい。というか、異次元の域である。
とくに個人的に好きなのが、『ヒッピーに捧ぐ』と『甲州街道はもう秋なのさ』。
『ヒッピーに捧ぐ』は、バンドのマネージャー(あだ名がヒッピー)の突然の死について歌う。清志郎の曲には実体験をもとにしたものが多い。歌詞は淡々としているが、清志郎の声は激情そのもの。後半、声を詰まらせ咽び泣くようなスキャットがたまらない。
『甲州街道はもう秋なのさ』は、甲州街道が何かも知らないけれど、秋の哀愁漂う無機質な道を車で走る情景が浮かぶ。で、その次の『スローバラード』の“市営グラウンドの駐車場”に繋がっていくような物語を感じる。歌い始めの“たばこをくわえながら”のメロディは本当に凄い。この曲でも清志郎の咽び泣くようなシャウトが聴ける。

この人もまさに声とバンドで人生のサウンドトラックを作った人だと思う。

ヒッピーに捧ぐ
https://m.youtube.com/watch?v=WakPSPcY7NY

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