【禍話リライト】やわらかコックリさん

無意識に取ってしまったことが、とてつもない恐怖を呼ぶことがある。


今から少し前。某駄菓子のアニメが放送されるなどして駄菓子の人気が上がってきた頃に、この禍話の語り手であるかぁなっきさんの職場の古書店でも駄菓子を取り扱うこととなった。某駄菓子アニメの人気に乗じた案だったのだが、数多ある駄菓子の中でただひとつ、苦手な駄菓子がある人がいた。

それは言わずと知れた、あの5円型のチョコである。その方が数多あるお菓子の中でも5円型のチョコが苦手になってしまった理由というのは、こんな出来事があったからだ。


時は遡り、70年代。当時はコックリさんがかなり人気だった時代であり、どこの学校でもやらない生徒はいないという程であった。この話をして下さった方もコックリさんをやっていたのだが、大抵は毒にも薬にもならないような当たり障りのない結果が出て終わりであった。そんなある日いつものようにコックリさんをやっていると、十円玉を置いていた指に不可思議な感触が伝わってきた。

ゴムのように柔らかく溶けた物体に人差し指を当てているような、どこか「溶けたチョコレート」を指で弄っているような感触だ。指で摘んでいたチョコレートを溶かしてしまった経験がある人ならお分かりだろうが、あまりいい感触ではない。それに、様子を見ると自分以外に参加している人にはこの感触は伝わっていないらしい。そうこうしているうちに溶けた何かが指に着く感触は「十円玉が溶けて指に着いてしまっているのではないか」というぐらい酷いものになっていき、あまりの事に早々にコックリさんにお帰り頂いた。幸いなるかな、その方はコックリさんをやっていたメンバーの中でも発言権がある人だったのだ。

無事にコックリさんにもお帰り頂いた後、当の十円玉を見て、驚いた。


どこにもおかしな所は無いのである。

溶けてもおらず、まして形が変わっている訳でもない。


あのような不快な感触をもたらした十円玉に何も無いことを不思議に思いながらも、ローカルルールに則って十円玉を処分し、その日はお開きとなった。


その日寝ていると、手に不快な感触が伝わってきた。何かこう、熱く粘度がある物に右手の先を突っ込んでぐるぐる回しているような、それこそ、そう。



「溶けたチョコレート」に腕を突っ込んでいるような感触が、右手を襲ったのである。



その方は、コックリさんをやる際右手の人差し指で十円玉を支えていた。


あまりの事に目を覚ますと、突っ込んでいるような感触に襲われていた右手は錆だらけになっていたと言う。

そのまま手を洗ってしまったので細かい事は分からなかったのだが、恐ろしい事が起きていたのは確かだ。

(終)



この文章は、ツイキャスにて毎週土曜日に配信されている怪談ツイキャス「禍話」の過去放送回の中から、「真・禍話 第五夜 」の50:00辺りに放送したお話を書き下ろし、筆者独自の付け足しをしたものになります。リンクはこちらhttp://twitcasting.tv/magabanasi/movie/369984575

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?