【馬術】常歩で如何に『歩かせる』か

 馬術部で活動していると(少なくとも見知っている人)ほとんど全員がぶつかるこの課題。そもそも『ちゃんと歩く馬』に乗るのが正解だというのは当然として、でも馬術部で部内の馬を変えるのは現在乗ってるメンバーしかいないわけで、それ(トレーニング)こそが馬術の本質だから。
下記ツイートを社馬連のアカウントがお気に入りにいれているのもそういうこと。

 それはともかく、そんなわけで身近ではあれこれ工夫しないといけない常歩の歩かせ方、色んな人のいろんなスタンスがあるわけだけど、よく言われるのは
・脚使え
・鞭使え
・拍車履け
・ちゃんと手綱持て
・手綱引っ張るな
etc.
でもね、うまくいかないわけ。使ってるつもり、やってるつもりでもやれと言われる。辛いよね、うん、それは馬に限らずみんな経験あるはず。

そこで、1から考え直すことにした。そもそも運動神経よくないので今まで他の人のアドバイスで運動うまくいったことは殆どないから、多分表現のもっと手前の部分を理解しないと出来ないんじゃないかと。ということで、自分なりに考えて試してきたことの今の所の結論になるけど。(上手い人に言わせたらそれは違うとか言われるところもあるかもしれないから、そういうものとして読んでね!)

・~~使え
そもそも、『いつ』『どう』使うべきなのか。どんな影響を馬のどの部分に与えたくて人が操作するのか。そういうところまで分解してくる。
まず性質として馬は基本的にはプレッシャーから逃れる生き物。つまり、操作の基本は馬にプレッシャーを与えるか開放するか、どの部分にどの方向から与えるか、で考えればいい。
扶助とはどちらの文字も『たすける』という意味なので、少なくともこの訳語を考えた人は扶助は『馬の動きを助ける』ように使うことこそ本質と考えていたはず。(なお、英語でもaidで援助みたいな意味なのでそれほど外してないはず)
で、基本として扶助は単切に。必要以上に使わず、伝わって従ってもらえたら解除しなければならないということになってる。これは行動分析学で『負の強化』と言われる学習機能を利用してる。なお褒めるのは『正の強化』、叱るのは『正の弱化』。このあたりはこの話の本題とはずれるけど行動分析学学会の体罰反対声明で見てみてほしい。体罰反対の理由も見れて一石二鳥。
閑話休題。そのあたりおさえて見えたのは、馬の左右の振りに合わせていいタイミングで交互に少しづつ押すことで左右の重心移動を助けながら大きくしていくように体重をしっかり乗せながら脚で押していけばいい、ということ。
騎座浮かすな、というのはつまりそういうことか、とかいろいろついでにつながったし、このタイミングと使い方のイメージの考え方はそのまま速歩・駈歩にも応用が効いた。
前進時には斜め前に振り出すように動いていくので、脚を送り出す方向もやや馬の斜対前肢(肩)の方に向かっていく感じで、「馬と一緒に歩くように」って言われたのもこれでつながる。
一応、かかとねじりあげたり蹴り飛ばしたりしても馬は前に出るわけだけど、それは刺激を嫌がって前に逃げている可能性が高いので、馬術の基本である『リズム』と『リラックス』が成立しにくくなってしまう。
と、このやり方で発想と身体の使い方を見直して、馬を動かすようにではなく馬が動くように乗るようにしたら歩かせられるようになった。もちろん、これはまず少しでも動いていないとダメだとかがあるのでケースバイケースではあるけど、初期の工夫はともかく最終的には全部このやり方に持ってきて、このやり方で動ける状態を作れるようにはなったのだけど、つまりはそれまで馬の動きを『助けない』やり方で無理やり動かそうとしていたわけで、馬としては乗り手に言われたとおりやってるつもりでもやれと言われる状態だったわけだ。辛いよね、うん、それは馬に限らずみんな経験あるはず…ごめんね。

 そんなところで歩かせられたという話を工夫の諸々端折って書いたわけだけど、この発想で軽速歩を見ると、なんで軽速歩には正反撞では言われない『正しい手前』があるのか、というのもちょっと見えてくる。(当たってるかは知らない)
ちょうど、内方後肢が踏み出され、外方前肢が前出するタイミングは内方の肋が譲られてくるタイミングなので、あれって実は肋が譲られるのに合わせて内方鐙寄りの重心で立ち上がると自然に内方脚として効くタイミングに一致するんだよね。なので、逆に座る時は外方寄り(といっても大げさにはやらないけど)に座ることで帰ってくる肋の動きを邪魔せずに乗ることができる。たいてい意識しすぎるとやりすぎるので『逆の動きをしない』程度の意識でこれ念頭に置くと軽速歩でも馬を動かしやすくなったりして、話をさかのぼって論理的に理論を組み上げてやることを見直すのも効果があるなと思った。

なお、さらっと書いたけど、【操作の基本は馬にプレッシャーを与えるか開放するか、どの部分にどの方向から与えるか】って発想は反射的に使えるまで染み込ませておくと馬に乗るときにめちゃくちゃ便利な発想なので、馬乗りの皆様には個人的におすすめしておきます。

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