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■草津町議会は町民をパターナリズムの理想郷に導くのか?という話。

○はじめに

お疲れ様です。あいなです。

今回は草津町議会についてのお話です。

2024年4月29日付で、議会だよりHarmony168号が発行されました。
その中に、ちょっと気になる内容がありましたので、自分の意見と交えてご紹介させてください。

気になった内容というのは、全国町村議会議長会からR5年度町村議会表彰を受けたという議長のコメントです。

○草津町議会が表彰されました

まずは、議会だよりHarmony168号に掲載されていたコメントを引用します。

https://www.town.kusatsu.gunma.jp/www/contents/1485397209534/files/hm168.pdf

草津町議会が全国町村議長会会長表彰を地方自治の発展と福祉の向上に尽くした功績で、令和6年2月8日全国町村議長会総会において、受賞しました。
全国926町村中22町村が表彰され草津町議会がその栄誉に入り、群馬県町村議長会総会の席上で伝達されました。

平成元年(原文ママ)11月新井祥子議員(当時)は、黒岩町長から平成27年1月8日町長室で性被害(刑法第177条)を受けたと、電子書籍で全国、全世界に広げました。

草津町議会は令和元年12月2日緊急に全員協議会を開催し、事実を質し新井祥子議員(当時)は「告発したことは事実でございます」と議場で述べました。

議会は黒岩町長の人柄、日時・場所から虚偽の告発であり、至った背景から全くの作り話と草津町議会は断定し、地方自治法第135条で懲罰を科し除名処分を(新井祥子他1名を除く多数決で)可決しましたが、群馬県自治紛争委員会、高等裁判所の裁定で除名は撤回され、このままでは新井祥子を議会議員として議会を進めることは草津町の発展、町民の教育・福祉向上に支障があるので憲法第15条によるリコールを町民の皆様にお願いし、皆様のお力を得て新井祥子議員を除籍し町政を正常に戻す事ができました。

その間草津町に対する誤った考えのフェミニスト、デマを囃立てる人からの誹謗中傷に負けず今日の多くのお客様を草津町にお迎えできました事は町民の皆様のお力の賜物であり、草津町議会として今回の表彰に恥じない議会活動に邁進いたします。より一層のお力添えをお願いいたします。

リンク先記事引用

続きまして、全国町村議会議長会の受賞に関する記事を引用します。

全国町村議会議長会は、令和5年度町村議会表彰を行うにあたり、令和5年6月21日に、有識者からなる町村議会表彰審査会の第1回会合を開き、「令和5年度町村議会表彰審査方針  (216KB) 」を定め、各都道府県町村議会議長会長に対し表彰候補団体の推薦を求めました。

 さらに、同審査会は、令和6年1月10日に第2回会合を開き、推薦された団体の議会活動が審査方針に掲げた「政策づくりと監視機能を十分発揮している議会」、「住民に開かれた議会」、「地方議会・地域活性化のために特別な取組みをした議会」に該当しているかを審査したところ、22団体が町村議会として他の範とするに足る活動を行っていると認められることから、表彰することを決定しました。

リンク先記事引用

群馬県 草津町議会の事績についてはこちらです。

https://www.nactva.gr.jp/html/commendation/pdf/R05/R05_06.pdf

群馬県 草津町議会

(事績1)政策づくりと監視機能を十分に発揮している議会
(1)議員の資質向上に向けた取り組み
(2)温泉資源及び観光に対する視察の実施
(3)議会事務局職員の知識向上及び体制の強化

(事績2)住民に開かれた議会
(1)草津中学校生参加による中学生議会の実施
(2)住民への議会ホームページによる議会情報の配信
(3)議会広報紙の作成及び町民へ配布

(事績3)地方議会・地域活性化のために特別な取組みをした議会
(1)草津町議会災害対策会議設置要綱及び災害時議員行動マニュアルの整備

PDF内容の項目のみ抜粋

○議長のコメントの不自然すぎる煽り

ここで突然の余談です。

事績内で一番文字数を稼いでいる『視察』に関しては、コロナ禍中では実施できておらず、去年ようやく再開できたものです。

(再開については、観光地への行き来や自治体同士のコミュニケーションが取れることは本当に喜ばしいと思います。)

しかしその視察の内容の、各地の温泉地の地熱発電等を勉強しているという記載には、個人的に首をかしげる部分があります。

実は、草津町は、40年以上前から断固として地熱発電反対という姿勢で通しており、現在の町長もかつて2008年に議長として隣町の地熱発電に対して反対の署名運動を主導しているぐらいなのですよね…

もう一つ。

事績を確認するとすぐに分かりますが、草津町の事績の内容は、『今年でなくてもこの受賞理由だろうな』といった、当たり障りのない内容になっています。

これに関しては、草津町のことだけではありません。どの自治体も目立った功績を誇るというよりも、普段通りに頑張っている部分を書き出しています。

…というよりもこういった名誉系の賞は、小学校などでいうところの『頑張ったで賞』のように、各自治体みんなに、順繰りに授与するような賞であって厳正な細かい審査で該当しないなら受賞させない!というようなとても厳しいものではないですよね。

それに、『この自治体は本当に素晴らしくすごい功績だ!称えたい!』というのは別枠の『特別表彰』という賞でやっているようです。

賞の決め方も、審査会に対して各都道府県の町村議会議長会が推薦をする形になっています。
草津町の所属している群馬県町村議会議長会からの推薦があれば、問題なく受賞できるだろうことは想像できます。

閑話休題。

議会だよりを読んだとき、私はてっきり、全国町村議会議長会に記載されてる事績に『フェミからの誹謗中傷に耐えてよく頑張りましたね』とかそういった文言があるのかな?と邪推したんですよね。

ですが、事績の中には、誹謗中傷の件は一切含まれていませんでした。
(当たり前ですよね)

一体なぜ、議長はコメントの中に、受賞理由ではない『虚偽の告発の事件』や『フェミからの誹謗中傷』を盛り込んだのでしょうか?

○全国議長会と草津町議会の因縁?

実は、もともと町長がたびたび『フェミニストの誹謗中傷に苦しんだ』として挙げている上野千鶴子氏の寄稿は、まさに今回の全国町村議会議長会と共同編集していた雑誌の中でのものなんですよね。

前議長がとある事情で議員辞職することになり、今回のコメントをした議長に交代したのですが、その時の挨拶で、『全国議長会で誹謗を受けるようなこともあった』とコメントしていますので、事情や背景を知らなかったとは思えません。


草津町議会令和4年第7回議会臨時会P49

そんな因縁のある組織からの賞を受ける際に、
『草津白根山噴火』の件でも
『2023年度の観光客数が370万人を突破』の件でも
『にっぽんの温泉100選・連続21年受賞』の件でもなく、

『町の名誉を傷付けた愚かな罪人が起こした虚偽の告発』を取り上げているのは…

ひねくれ者の私には、何かしらの思惑があると思えて仕方ないのですよね…

○「人権賞」と何か関係がある?

この草津町議会の受賞よりも2か月ほど前に、一般社団法人Springという団体が東京弁護士会から『人権賞』という賞を受賞したというニュースが報じられました。

このSpringという団体は、性被害当事者たちが中心となって作った団体で、性犯罪法に関するロビイング活動や性被害についての知識を深めるための勉強会や冊子の配布等を積極的に行っています。

私の知る限りですが、町議会で女性議員の議員資格を剥奪するためのリコール投票が決定したあたりで、SNSではフェミニストのアカウントが活発にリコールに対する反対運動を行っていました。

その中の一人が、Springの当時の代表理事だったたのです。

ネット上で有名な『○○○○○○○の町』というハッシュタグを最初に作ったのは、この人だと言われています。

この場ではこの団体への言及はしませんが、今でも例のワードがネットミームになってしまっていることを考えると、当事者団体としては心苦しい状況になっているのではないかなと推察しています。

既にこの人は代表理事の地位からは退いているようです。
(所属自体はしているがHP上に名前は無い状態)

この団体が『人権賞』を受賞するとなった際には、ネット上では『草津町に謝罪をしてからにしてはどうか』『無罪の人間を加害者と決めつけた団体に人権と名の付く賞は相応しくないのでは』『この賞は草津町長にあげたらどうか』という批判が相次いでいました。

○今年、受賞した理由は?

この受賞には2つの意味があるように感じます。

まず1つ目は、元議員の虚偽の告発とSNSの炎上に対して怒りを覚えている町民たちに対する『汚名返上アピール』です。

リコール批判のあった2020年12月当時、SNS上では『町に行かない』というキャンペーンが展開されていました。

観光業が主産業の町としては、観光客が来なくなるような風評被害は看過できない問題ですよね。

2つ目は、『フェミニストへの意趣返し』です。

2023年は、性被害を告発した女性町議が、告発から4年を経てようやく『告発は虚偽だった』と認めた年でもあります。

リコール投票を批判していたフェミニストの中で未だ謝罪をしていないと指摘される人たちには、地方自治体の議会に所属する議員も含まれています。

フェミニスト議員を包含しうる団体からの表彰は、町にしてみれば『フェミニストよりも上位の存在から名誉を回復してもらった』という判断もできるのではないでしょうか?

○議長は中立っぽかったのに

前提知識として、草津町では観光業関連の政治力がかなり大きく、大規模ホテル系、老舗民宿系、飲食店系、その他商工会系等が、自分たちの息のかかった議員を議会に送り込んでいます。

そして現在の町長は、インフラ系の企業出身で、長年議員として務めたことのある人なので、実績に基づいたカリスマであらゆる観光系の団体を取り込み信頼を得ながら自分の町政(現在4期目)を進めていました。

議長は、もともと議員をしながらホテルを経営していましたが、コロナ禍中にホテルを閉館しています。

こうしてみると、議長には政治を大きく動かす力が無いように見えますが、20年以上議員として活動していること自体が、彼の世渡りの上手さを表しているようにも思えます。

その議長が、このようなコメントを町民に向かって出すということは、町民の中の『アンチ町長感情や町への風評被害への怒り』に対するガス抜きでは?という印象があります。

逆に言うと、それほどに町民の中には陰謀論めいた『フェミニストに対する排斥感情』がとても強く渦巻いているのではないでしょうか。

○権威を持つ者は常に共犯者を求める

この議会だよりに掲載された議長のコメントは、受賞理由と乖離しているところからしてだいぶおかしいということはお分かりいただけたと思うのですが、もう一点、違和感のあるところがあります。

『町民の皆様のお力の賜物であり』

この『この町が平和で豊かな町になったのは皆が頑張ったからだよ~』的なニュアンスのワードが、風評被害と誹謗中傷に苦しんだ町との対比で多用されているところです。

このコメントの中では、『町民』全員が『個人を町に相応しくないとして排除した』ということになっています。

『町民』が町長の町政や議員資格を問うリコール投票に賛同していようといまいと、全員が平等な関係であるべきです。

ですが、このコメントが町民に届けられたことで、町長や議員たちがこの4年間で行ってきた行為を全ての町民が全て肯定していることに繋がってしまいます。

さらに言えば、この議長からの感謝のコメントによって、町民は『自分たちの選んだ町長(と議員)が、町の危機を救ってくれた』と認識を誤認するように誘導されているのです。

リコールに反対票を投じた208票をフル無視し、
リコール投票の背後で進められていた資格審査特別委員会を透明化させ、
議会に対して抗議文を送った団体を『町の名誉を傷付けた人たち』と論点をずらしてネトウヨ陰謀論者を焚きつけた、

伝統的男性文化規範の強い草津町議会の行為を、
『全部町民が選択したこと』にすり替えるための圧力を、ビシビシと感じます。

世の中、トラブルが起きた時に当事者だけが存在するわけではありません。

トラブルに加担していない傍観者、その場に居合わせただけの目撃者、伝聞でトラブルを知っただけの情報不十分な解説者がいるのです。

私が見る限り、このリコール投票当時から町長と議会でずっと行われてきたものは『町民を共犯者にすること』でした。

権力者は、権力に従う者がいなければ存在できません。
そのために、周囲に居る者が常に自分の味方であるか、自分を裏切るかどうかを確認し続けるという、コスパの悪い行為を繰り返さないといけないのです。

少なくとも、踏み絵は自分が踏むか踏まないかを自分で決めることができます。

これはどちらかというと、
父親の財布から大金を抜き取った子供が、何も知らない友達を連れて豪遊してから「これでお前も共犯な」と言っているようなものです

(それを喜んで受け入れる友達も居るでしょう)

○おわりに:町民が生贄になる場所にはやはり『行かない』ほうがいいのでは…?

議長のコメントの中に隠れたメッセージは、町民の抱える不満が、全てフェミニストや町の誹謗中傷するネット民に向かっていることを感じさせます。

個人的に、今後の町長の目標は、その不満を膨らませた町民に反旗を翻されるよりも前に、栄光の勇退をすることなのではないかと思っています。
この議長のコメントは、そのマイルストーンとして注目しておきたいなと思いました。

元町議が名誉棄損で訴えられている件については、2年後の町長選挙の時までには結果が出るでしょう。
その結果が選挙運動に強く出ることになるのは想像に難くありません。

(仮に元町議が再出馬するとなればなおさら加熱するでしょう)

現在の草津町は、為政者と行政機関が自他境界線を失うほど密着しており、半ば王政か律令制か?と思うような旧時代的な世界が展開されている気がしています。

王様が名も無い旅人にいくら冷たく当たっていても、町民に対しては大きな富を配分してくれる王様であれば、町民は喜んで尊敬の態度を示すでしょう。

それが、この4年間、あの町のニュースを傍観して感じた、私の町民に対する懸念です。


いかがでしたでしょうか。

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それでは、また。


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