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EAクリエイターの視点:EA運用におけるトレーリングストップの有効性を検証

今回は、トレーダーに人気の決済方法であるトレーリングストップについて検証してみようと思います。

トレーリングストップは、有利な方向に相場が動いたときに、損切りライン(ストップ逆指値)をトレールさせる注文の事です。

EAを使わない裁量トレードの場合、相場の値動きに合わせて利益を確保できる決済方法であることから、非常に人気の高い決済方法です。

トレーリングストップによる決済方法を採用しているFX会社は限られますが、MT4のEAの場合は開発者がEAに組み込みさえすれば対応できます。

果たして、EA自動売買においてトレーリングストップは有効な決済方法となりえるのでしょうか?

考察① 順張りトレンドフォローのロジックのEAに組み込んでみた

わたしの主力のEAである「PerfectOrder G B P J P Y」にバージョン1.16でトレーリングストップの機能を追加しました。
https://www.gogojungle.co.jp/systemtrade/fx/30753

導入するにあたり、あらゆる条件でバックテストを取ったものの、すべての設定で成績が悪化するといった結果になりました。

また、バージョン1.17でトレーリングストップモードの修正を行いました。
より細かくトレール注文を制御できるように修正しましたが、成績が改善されることはありませんでした。

バージョン1.17では、短期移動平均と中期移動平均、中期移動平均と長期移動平均の差を入力できるような機能も追加しました。
短期と中期の距離(pips)、中期と長期の距離(pips)を個別に設定することで、強いトレンドが発生した時だけエントリーすることが可能となります。
残念ながら、この機能を有効にすると長期的には成績は下がります。

つまり、PerfectOrder G B P J P Yの様なロジックによるエントリーとエグジットを繰り返すドテン型のEAの場合、
ロジックが優秀なほど他の要素をいれるとマイナスになるということです。

おそらくトレンドフォローという意味において、パーフェクトオーダーやゴールデンクロスといった移動平均を用いた手法は、最強だと思います。

多くのトレーダーが意識しているため、移動平均は機能するという論理があるくらいですから。

というわけで、ロジックによる決済が優れているEAにおいて、トレーリングストップは不要との結論に達しました。

考察② デイトレ・スキャルピングのEAでは有効なのではないか?

1、MTF Trading U S D J P Y
マルチタイムフレーム分析と移動平均を用いた手法でトレードするドル円5分足チャートに対応したデイトレ・スイング系EA。
https://www.gogojungle.co.jp/systemtrade/fx/49955
結果:やはりダメでした。トレーリングストップを有効にすると成績が悪化します。

2、Multi Trend U S D J P Y
複数通貨分析によりロングかショートかを判断。トレーリングストップにより相場が有利な方向に動いた時だけ逆指値注文レートを自動的に変更することで安定収益を実現。
https://www.gogojungle.co.jp/systemtrade/fx/50141
結果:条件付きで成績が改善?


Trailing stop rate U S D J P Y=1.0(100pips)
ドル円のみ上記の設定で成績が安定しました。
しかしながら、ポンド円やユーロ円では成績が下がります。
また、ドル円に関しても、単純な利益で言えばトレーリングストップを無効にしても同程度の利益となることから、
トレーリングストップを有効にしたから成績が上がったとは言えません。

3、Multi Scalping U S D J P Y
トレード頻度を極限まで高めた究極のスキャルピングEA。順張りと逆張り両方行うマルチロジックを採用。
https://www.gogojungle.co.jp/systemtrade/fx/50456
結果:ロジックによる決済が早すぎてトレーリングストップによる決済が少ない。

ストップ逆指値を120pipsで設定


有効かどうかで言うと微妙な結果です。

ストップ逆指値を400pipsに拡大


2のMulti Trend U S D J P Y同様、トレーリングストップを無効にしても同程度の利益となることから、明らかな効果というのは無いのかもしれません。
しかしながら、有利な方向に相場が動き逆指値がポジション建値よりもプラスになった時は勝ちが確定します。
利益を伸ばしつつ、損失を限定させることがトレーリングストップの一番の魅力ですから、たとえ効果は無かったとしても楽しみの要素としては有りなのかもしれません。
相場を続けるうえで、メンタルの要素も重要ですから、投資を楽しむという意味で、トレーリングストップを使用するのも面白いかもしれませんね。

【結論】
EAはその時の相場環境に応じて決済を自動で行います。
常に相場を監視しているわけで、ロジックによる決済が自動で行われるのでトレーリングストップのような機械的な決済は必要としません。
トレーリングストップをロジックの中心にしたEAでフォワードテストが好成績なEAは残念ながら見つけることが出来ませんでした。

EAのロジックによっては、トレーリングストップを使っても使わなくても同じ程度のパフォーマンスを出すことは可能です。
個人的には、トレーリングストップは人気のある決済方法なのでEAを販売する側からいえば、トレーリングストップを使っても使わなくても同じ程度のパフォーマンスなら、
デフォルト設定ではトレーリングストップを有効にします。

そういう意味から、最近開発した2つのEAはデフォルト設定ではトレーリングストップを有効にしました。

今回の記事は、わたしが開発したEAにトレーリングストップ機能を追加して検証した結果を元に書きました。

他のEA開発者様も、コミュニティ等でトレーリングストップを導入すると成績が下がるとのコメントが多いようです。

トレーリングストップを使用すれば成績が改善するということは無いので、今後もEA開発の重要なファクターとなることは無いと思われます。

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