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来世は暗闇に溶ける黒猫になりたい

昨日の夜、引き返した駅を、今日はきちんと電車に乗って帰る。
生まれ変わったら、猫になりたい。暗闇に溶けることのできる、真っ黒な猫。裏路地の、建物と建物の間に目だけが光る、2匹。

この人は、とても鈍感なのだ。私の嘘を許してしまえるくらいに。
他の多くの男性たちと同じ。鈍感で、だからこそ、とても優しい。私はその、あなたの優しいところが好きだった。架のことが、ちゃんと好きだった。(辻村深月「傲慢と善良」)

拠り所にしていたものを得られないと分かったとき、自分の精神状態が安定していなければ、はしごを外されたと感じてしまう。それが相手の気遣いによる行動だったとしても。そのとき、頭のなかに浮かんだのは一瞬の感情と、それをそのままぶつけたくない、と必死で感情や状況を把握しようとすることだった。
スイスイさんがcakesの連載で回答者からの質問にこたえるようにして、自分のことも考えてみよう。分解しろ、分解、って湧き上がってきた言葉をひたすらにiPhoneに打ち込んだ。文字にして、自分から切り離して見つめる。何に傷付いたのか、嫌だったのか、怖いと思ったのか、怒りなのか。そのあたりをちゃんと見つめることができれば、あとは冷静になれた。普段は目を背けている部分が立ちはだかって、この先に行くにはちゃんと前を見て向き合ってよね、と告げる。

向き合わねばいけないものを自覚したら、伝えたいと思っていたことが文章になって、なぜか伝わった、ような気がした。
感情のままに相手へ言葉を投げない(行動しない)こと、感情を自分のなかに溜め込まないこと(一度開放してあげれば案外けろっとしている)、相手の行動の意図を想像すること、自分自身はどう思ったのかという気持ちも認めてあげること。

数年前だったら感情に任せていただろう。
相手を想像する、スイスイさんが言うように“憑依する”みたいな感覚で割り切ってやってみたら、私にもできた。それが嬉しかった、夜。全部は伝えられないけど、ちょっとずつ、少しでも前に進むならば嬉しい。

#毎日 #なんでもないこと


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