あの頃と同じ夏の距離

動画を上げました。

https://www.nicovideo.jp/watch/sm39243123
(なんか埋め込めない)


昨年の8月のボイスコネクトで発表したCD
「Ko-ordinate!」
に収録されている曲です。

なんか動画であげたいなーとずっと思っていたので一年経ってしまいましたが上げました。

夏に間に合うように。

せっかくなんでこの曲について色々書こうかと思います。

イラスト

今回イラストをいにさんに描いていただきました

いやーめちゃめちゃに良いですよね……

絵が良すぎて、動画をどうやっても野暮な感じがして、結局めちゃめちゃシンプルな動画になってしまいました。いや。ほんと。

こんな感じが良いですという構図をお渡ししたんですが、他のパターンも描いてみましたっていう感じで他に2つほどご提示頂いて、

いやそっちのほうがめちゃええやん~~~~~~

ってなってこの構図になりました。

やっぱ神はすげえよ……

曲の2番以降の歌詞をなんとなく表現した感じになっています。
位置関係とかも対応している。

奥に小さく写っている姉妹ちゃんが「あの頃の姉妹ちゃん」で、手前の姉妹ちゃんが「今の姉妹ちゃん」ということでした。

エモすぎるだろ……!!!

昔は茜ちゃんがかぶっていた帽子を、今は葵ちゃんがかぶっているんですね……

「交差する飛行機雲」というモチーフも曲をイメージして描いて頂いたようで、動画の最後ですこし強調してみました。

曲を受けてこう、表現に昇華してくれるのめちゃ嬉しいな。


服装については私がこれが良いです!というのを提示したんですけど、

これです。

というかこの絵を見ていにさんに依頼しようと決めました。

いや。マジ。いいよね。


曲について

まあ一年前の曲なんでいまさら語ることもないかなという感じなんですが、結構気に入ってます。

わりと一ヶ月くらいの短期決戦で書き上げた作品だったはずです。

ブラスがスイングする感じの曲を書きたかったんですよね。

コードはそんなに難しくないものを並べて、ちょっとおしゃれにリハモしたかんじです。

サビなんかまんま王道進行ですからね。

CDでもこの曲のmixは友達のTaw(@violalgebra)にお願いしてたんですが、動画にするならやり直させて欲しいとのことで、再mixしてもらいました。

音めちゃ良くなってますね。

Tawは自分のmixとかもかなりアドバイスもらってたりするので、毎度すまないねぇというおばあちゃんみたいな気持ちになります。


歌詞について

僕には歌詞が書けないとか言ってる人が書いたにしてはエモくないですか?

「今」と「過去」、それぞれ二人の状況は違ったり、途中離れ離れになったりしても、夏が触媒になって二人の距離を取り戻す。みたいなのがテーマです。

姉妹ちゃん別離してた概念をね。掘り下げたかったんだ。

エモポイントなんですけど、

1. 夏が良いことだけを思い出させるわけじゃない
2. 「あかね雲」って言ってるのは葵ちゃんで、「あおい海」って言ってるのは茜ちゃん
3. 1番、2番の「夏がきたね」は茜ちゃん、葵ちゃんがそれぞれ一人で言ってて、最後の「夏がきたね」は「夏が」が茜ちゃん、「きたね」を葵ちゃんが言ってる
4. 「私は願うよ。と 笑って」と言ってるのが葵ちゃんの方

うわーーーーーエモ

こんなエモい歌詞書けたんですねわたし。

「なびく髪が溶けるまで」なんですけど、琴葉姉妹の長い髪が、近づいたときに混ざって境界線があいまいに溶けてゆく幻想をよく見るんですよね。それを入れられたので満足。


歌詞をエモく書けた理由として、歌詞を書くために用意した幻覚をちゃんと書いたからというのがあると思います。

茜サイド、葵サイドでそれぞれ書いたものを用意してました。

せっかくなので、ここで公開します。

葵サイド


朝起きたのは、寝過ぎたって言うのもあるけど、窓から差し込んだ太陽が私を執拗に照らすから、うっとうしくて起きざるを得なかったんだ。
起きるとお姉ちゃんはもう食卓についていて、おそようなんて月並みなからかいかたをしてくる。そうだねと返事をする代わりにあくびをして見せた。おそようって言ってもまだ10時じゃん。そんなに怠惰な生活というわけでも無い。
不意にテレビをつけたら、なんともない情報番組が流れてくる。東京のショッピングモールでインスタ映えしそうなかき氷を食べているタレント。名前なんだっけなこの男。
お姉ちゃんがそれを見ておいしそうやなぁなんて言うから、私も少し食べたくなってきた。でも外は暑いからなぁあんまり出たくない。
うちにかき氷器あったっけ?
そんなことをいったらお姉ちゃんはどこからともなくかき氷器を探し出してきた。
久々に見たペンギンの形のそれは、私を子供時代に引き戻すような力があって、ついわくわくしてしまう。そういえば昔もこれ使ったなぁとか思ったり。というか引っ越しの時に持ってきたんだね。
あー見たらやりたくなってきた。氷持ってくるね、とお姉ちゃんに言うとお姉ちゃんもシロップあったかな、とか、練乳ならあるで。とか。冷蔵庫に二人で押しかけた。
氷を入れてハンドルを回す。お姉ちゃんはかき氷器を押さえてくれている。
お皿に白いかけらが、積み重なっていく。砕けた氷の匂い、ああ、夏だなって。
一生懸命回したら逆に暑くなってしまったかもしれない。山盛りになった氷に、練乳をかけて、スプーンでいただきまーす。
あー夏って感じ。
そんなことを言ったらお姉ちゃんは
昔もこんな風に二人でかき氷食べたな
って。そうだね。夏の思い出がつながっていく。
何年も、あれから何年もたってるけど、夏はずっと夏だな。私たちはあのときも二人で一緒に食べたし、今もこうやって一緒に食べてる。二人の距離はずっと一緒だなって。

海、いかへん?
お姉ちゃんが突然そんなことを言うもんだから、驚いてしまった。アイスを食べた手を止めて、お姉ちゃんをじっと見る。まあ、でも、海なぁ。しばらく行ってないや。
水着とか持ってないよって言うと、買えばええやん。って。まあ、そうなんだけどさ。
二人で前行ったの小学生のときとかじゃん。もう二人で行くような年じゃ無くない?とか言ってみたけど、お姉ちゃんは夏はいつだって夏やで!なんて。
まあ、そうだけどさあ、、、
お姉ちゃんはいつも突拍子も無いことを言う。私が微妙な反応を示すと
葵はいやかなぁ
とか言う。私はお姉ちゃんのこの顔に弱い。

サンダルが踏みしめる砂が、少し沈むのが心地よくて。
左を見ればお姉ちゃんがいて私のことを見ている。
昔もこんな風に歩いたねって。過去を今に手繰り寄せるように、回想してみた。
そうしたらお姉ちゃんは、もうちょっとだけ歩こうと私の手を引いた。お姉ちゃんぶった子供らしい笑顔が、眩しい砂浜の光に溶ける。


きっと今日の出来事もいずれ過去になるんだろうな、そのとき、私たちはこうやって二人でいるんだろうか。
また二人離ればなれになってしまうんだろうか。
でも、そんなときでも、きっと夏が来ればこの日を思い出す。何でも無い日だって、鮮烈な輝きをもって、きっと、太陽の下へよみがえるから。
ぬるい麦茶を飲んだ去年
エアコンが壊れて大変だった3年前
公園の水遊び場ではしゃいだのは……いつだっけ?
二人で居た夏は、ずっとここにある。

だから、これからも夏の思い出をいっぱい作ろうよ。
二人の記憶の中に、今も、今までも、これからも。
遠くを見つめるお姉ちゃんに歩み寄って手をとって、今この二人の距離が、未来の二人の距離であるように願ってるよと、心のなかでつぶやいてみた。


茜サイド

なんとなく目が覚めてしまった。二度寝をしたいところだけど、暑さにうなされて寝付けそうも無い。起きてしまおう。身だしなみを整えて、冷蔵庫に入った麦茶を飲む。飲みきってしまった。仕方が無い、次のを入れておこう。葵はまだ寝てるっぽいし、朝ご飯はまあ一人でたべるか。そんなこんなしていたら葵が起きてきた。ウチはトーストをかじりながら寝ぼけた葵を見ておそようとか言ってみた。ちょっと手垢のついた表現やな。関西人失格や。葵は特に返事するでもなくあくびをして、顔を洗いに行った。ご飯を食べ終わる頃に葵はリビングに来て、テレビをつけた。テレビでは東京のショッピングモールでインスタ映えしそうなかき氷を食べる最近流行の俳優。
おいしそうやなぁ
不意に口から出た言葉に葵が反応する。
うちにかき氷器あったっけ?
たしかここに、ほら。
引き出しの中に入っていたペンギンの形のかき氷器。引っ越すときに持ってきて良かった。
葵はかき氷器を見るやいなや、うれしそうに氷を取りに行くから、ウチもシロップあったかなとか言いながら冷蔵庫に向かった。練乳しか無いわ。
葵がハンドルを回したそうなので、主役は葵に譲って、ウチはかき氷器を押さえる役を受け持った。結構がたがたするもんな。
お皿に雪が降る。あーこれもかなり手垢のついた表現やな。
葵の頑張りのおかげで二人分のかき氷が見事できあがった。葵はさっきから終始楽しいそうや。子供に戻ったみたい。かくいうウチも、子供のことを思い出したりしていた。
葵は一口食べると
あー夏って感じ。とか言うから、ウチは
昔もこんな風に二人でかき氷食べたな。
って。葵はそうだねって一言言って、うれしそうにまたスプーンを口に運んだ。
あの頃は遠い昔のはずなのに、いまかき氷を食べながら、手の届きそうな所に過去があることを感じている。ウチらはあのときも二人で一緒に食べたし、今もこうやって一緒に食べてる。あの頃の夏と今の夏の距離は、ほとんど0なのかもしれないな。

海、いかへん?
ちょっと前から思ってたことを、葵に言ってみた。葵は突然何をという顔でこちらの様子をうかがう。
葵は水着とか持ってないって言うからそんなん買えばええやん。まだまだウチらはうら若き少女やで~なにもおかしいことはあらへん。葵は恥ずかしがってるようだけど、夏はいつだって夏や。
それでも葵の反応は微妙やからウチもちょっと自信なくなってきた。
それでも葵は結局了承してくれた。なんやかんや言って葵もそういうの好きやもんな。

聞こえる波の音に意識をゆだねながら歩いている。
葵がどんな顔をしてるのか気になってつい右を見る。
葵はそれに気づくと、昔もこんな風に歩いたねって言った。
あの頃の記憶は昔ここに置いてきて、今それが波に乗ってウチらの元に返ってきているようなそんな感覚になった。
にっこり笑う葵を少し引き寄せて、もうちょっとだけ、歩こうか、なんていった。

あの頃の私達は、今こうやって二人でいることを想像していただろうか。もしかしたら当たり前だと思っていたかもしれない。
離れ離れだったときだって、いつかまた二人巡り会えることを信じていた。
葵が昔の事を回顧する。
最近のことから、子供の頃のことまで。
きっと夏の熱い風と、眩しい青空が、ウチらにそうさせるんやろうな。
公園の水遊び場ではしゃいだのは12年前くらいのことやで

ウチも遠くの入道雲をみて、あの夏をそこに重ねていた。
手をとった葵が、にこっと笑う。
この先、何年経ってもこの距離が続いていくんだって、そう感じた。
だって、あの夏の距離が今もこうやって続いているんだから。

ところで

「夏が来れば思い出す」

って言われると

「はるかな尾瀬 遠い空」

って続けたくなりません?

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