日本共産党にとって「基本政策」とは何なのか その2

「日本共産党にとって「基本政策」とは何なのか・追記あり」を2023年9月11日~12日にアップしました。
同noteのうち、「『野党連合政権』での共通政策と共産党の『基本政策』」の部分において、野党連合政権にたいしての日本共産党からの政策提案が提示されていない旨のことを書きましたが、間違いでした(注)。
2020年12月の第2回中央委員会総会において「新しい日本をつくる五つの提案」が決定され、共産党からの野党連合政権への政策提案がなされておりました。
ついては、以下のとおり書き直しします。



「基本政策」をめぐるイメージ図(再修正版)

野党連合政権への共産党の政策提案「新しい日本をつくる五つの提案」

2020年12月には、第2回中央委員会総会において「新しい日本をつくる五つの提案」が決定されました。

第二の提案は、憲法を守り、立憲主義・民主主義・平和主義を回復することです。
安倍・菅政権によって破壊された立憲主義を再建し、負の遺産を一掃することは、新しい政治がまっさきに取り組むべき課題です。
(7)安保法制、秘密保護法、共謀罪など、安倍・菅政権による憲法違反の立法を廃止します。集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回します

第三の提案は、覇権主義への従属・屈従外交から抜け出し、自主・自立の平和外交に転換することです。
(10)沖縄県民の民意に背く辺野古新基地建設を中止し、普天間基地の無条件返還を求めます。日米地位協定の抜本的改正に取り組みます。
(11)米軍への「思いやり予算」を廃止し、米国製の高額武器の「爆買い」、「イージス・アショア」代替案、「敵基地攻撃」能力保有のための武器購入など、大軍拡の危険と浪費にメスを入れます。
(12)核兵器禁止条約に署名・批准し、唯一の戦争被爆国の政府として「核兵器のない世界」の実現に向け先駆的役割を果たします。

第2回中央委員会総会「新しい日本をつくる五つの提案」(2020.12.15)
https://www.jcp.or.jp/web_policy/2020/12/post-856.html

この提案は、「これまでの選挙で共産党が示した政策とは違います。『野党で政権をつくり、この政策を実行しよう』という野党連合政権の『政権公約』に向けた提案」とされています。

 Q 日本共産党が提唱する「野党連合政権」ではどんな政治をするつもりですか?
 A 日本共産党は総選挙で「新しい日本をつくる五つの提案」(別項)を掲げ、政権交代をめざしています。「五つの提案」は、これまでの選挙で共産党が示した政策とは違います。「野党で政権をつくり、この政策を実行しよう」という野党連合政権の「政権公約」に向けた提案です。

野党連合政権はどんな政治を?(2021.2.22)
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2021-02-22/2021022205_01_0.html

しかしながら、この「五つの提案」という名の政策提案に基づく連合政権の位置づけが2中総幹部会報告や結語でも明確に示されていないようです。
https://www.jcp.or.jp/web_jcp/2020/12/20201215-houkoku.html

この「五つの提案」が、選挙協力には原則としてその一致が必要とされる「基本政策」に相当するものではないと思いますが、そうではないと明言がされていません。
「国民的な大義」が明瞭な場合において「基本政策」の一致はないが選挙協力は可能となる政策として提案したものなのだろうと思いますが、それもまた明言されていません。

また、「五つの提案」にもとづく野党連合政権=さしあたって政府が暫定的なもの(この政策が実現すれば解散する)なのか、持続的なものと位置づけているのかもはっきりしません。

「野党連合政権」での共通政策と共産党の「基本政策」

その後も、国政選挙における市民と野党の共闘と連携が進められてきました。
そして、「(2021年10月の)総選挙に向けて、共産党は、9月8日に他の野党と市民連合の共通政策に署名するとともに、9月30日、立憲民主党との党首会談(志位和夫委員長・枝野幸男代表)をおこない、『新政権』において『合意した政策を実現する範囲での限定的な閣外協力』をおこなうことを合意しました。野党共闘がついに政権問題での合意に」(『日本共産党の百年』)いたります。

この政権についても「さしあたって一致できる目標の範囲」の政府であることは確かです。
そして、この野党連合政権を、「暫定的」でなく「持続的」(「政権構想と統一戦線論の決算」)なものと日本共産党が位置付けているのであれば、そこで合意した「共通政策」は、日本共産党の「基本政策」と同等と考えてよいでしょう。
(もっとも、2021年の政権合意は「合意した政策を実現する範囲での限定的な閣外協力」ですので、共産党の考える「基本政策」のレベルに達していないことは確かです。)

しかしながら、この政権を日本共産党は「暫定的」と位置づけているのか「持続的」と位置付けているのかは、明確には表明されていません。
志位和夫『新・綱領教室』(2022.4)では、「2021年の総選挙では…実現できませんでしたが…安保法制廃止・立憲主義回復をはじめとする緊急的課題実現のための野党連合政権をつくることは、日本の政治にとって必然的発展方向」(p55)、「今回の提案は、一過性の提案ではありません…引き続き、粘り強く追求していきたい」(p118) と書いています。「緊急的」という表現は、共産党の考える「基本政策」とは一致していないという含みをもたせているのでしょうか。一方で「必然的発展方向」「引き続き…追求」との表現は、「持続的」な政権であるという含みをもたせたいのでしょうか。

「新しい日本をつくる五つの提案」と松竹氏提案

野党連合政権が「日本の政治にとって必然的発展方向」なのであれば、野党連合政権に提案する共産党の政策提案「新しい日本をつくる五つの提案」の位置づけを明確にしたうえで、さらに具体化させていくべきでしょう。

いずれにせよ、日本共産党が松竹氏を批判するときは、自衛隊の段階的解消の第1段階における政策提案として2中総で打ち出した「新しい日本をつくる五つの提案」をさらに具体化した政策でもって、松竹氏を批判するべきでしょう。
また、松竹氏にあっては、日本共産党が党内用語として常用していない「基本政策」という用語を使って自説を展開するのであれば、その定義づけを明確にしたうえで提案を行うことで、議論の土台を共通化させることに役立つのではないでしょうか。

(注)コラム「さざ波」/「民主連合政府」から「国民連合政府」までの4ステップ
https://ameblo.jp/b-graphics/entry-12821362240.html
の「野党連合政権(2015)」のリンク先に「新しい日本をつくる五つの提案」があり、気づかされた次第です。


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