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なんてことない

いわゆる逢魔時が好きだ。
昼があくびをしながら眠りにつき、夜が目覚める、あの入れ替わっていく空が好きだ。
混じる。
もっといえば、島の海で漂いながら眺めるその時間の空が好きだ。
耳が海に塞がれて、水面を弾く音がこもって聞こえるあの感じが好きだ。
雲が流れる、日が落ちていく。
日の残り香がまだ空を覆っているのはほんの僅かな時間。気づいたら夜の帳が私を覆うのだ。
こんな時間に海にいられるのも、私が1人だからだ。
誰かの何かを気にすることなく、1人海に浮かんでいても咎められることは何も無い。
夕飯時を過ぎて夕飯を食い、夜に星を眺めに外を散歩してもいいのだ。

それもこれも、あなたがいないから。

あなたがいた椅子に本を積むようになった。
その後ろに絵を貼るようになった。
空白を埋めるかのように訳も分からず塗りつぶしている。

あなたの輪郭だけが残っている。

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