DX認定制度とは?施行の背景やメリット、申請方法を解説
デジタル変革(DX)は、現代のビジネスにおいて避けては通れないテーマとなりました。しかし、DXといっても何から始めればいいか分からない、ゴールがなく取り組みづらいという課題があるのも事実です。それを解決するのがDX認定制度です。
DX認定制度は、企業がDXをどのように進めていくべきかの指針を示し、その取り組みを公に評価・認定します。
本記事では、DX認定制度の概要から申請方法、さらには認定を受けた企業の事例まで、詳しく解説します。DX推進に迷っている企業の方、DXの取り組みをより具体的に進めたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
DX認定制度とは
DX認定制度とは、「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づく認定制度で、2020年5月に施行されました。企業がデジタル化を進めるための一環として、経済産業省が設けた制度で、企業のデジタル化の取り組みを評価・認定するものです。
DXに関して先進的な取り組みをしている企業が、DX認定事業者に認定されます。DX認定事業者に認定されるには、情報処理推進機構(IPA)の認定審査事務に審査してもらい、最終的に経済産業省から認定される必要があります。
DX認定事業者に認定されると、DX認定ロゴマークが使用できたり税制優遇が受けられたりと、メリット満載です。ただ、メリットはこれだけではなく、DX認定を目指して行動を起こすと、今後の社会で生き残っていく企業になるための基盤を整えられます。
2023年7月時点で、747の事業者がDX認定事業者に認定されています。
DX認定事業者は今後も増えていくことが予想されるため、まだDX推進に取り組んでいない場合は、アクションを起こしてみましょう。
DX認定制度について、さらに詳しく、下記2つの視点からも解説します。
DX認定制度の4つのレベル
デジタルガバナンスコードについて
DX認定制度の4つのレベル
DX認定制度には、4つのレベルがあります。DX認定制度のレベルは、下記のとおりです。
DX-Excellentレベル:DX認定事業者のなかで、将来性を評価でき、優れたデジタル活用実績があるレベル
DX-Emergingレベル:DX認定事業者のなかで、将来性を評価できるレベル
DX-Readyレベル:DX推進の準備が整っているレベル
DX-Ready以前レベル:DX推進に向けたアクションがまだできていないレベル
出典:DX認定制度概要~認定基準改訂及び申請のポイント~|経済産業省商務情報政策局情報技術利用促進課
上記4つのレベルのうち、DX-Readyレベルに達すれば、DX認定事業者として認められます。DX-Readyレベルはその名のとおり、DXに向けての準備が整っている状態です。
つまり、まだ実際にDX推進のアクションができていなくても、準備ができていればDX認定事業者になれるのです。
さらに、DX-Readyレベルに達している企業のなかで、将来性のある企業をDX-Emergingレベル、活用実績を残している企業をDX-Excellentレベルに認定しています。
DXに向けて行動していないと認定されないと勘違いしている場合も多いため、DX認定制度の4つのレベルを知れば、DX認定がそう遠くはないものに感じられるのではないでしょうか。
ただ、DX認定事業者になるためには、「デジタルガバナンス・コード」という項目への対応が必要です。
デジタルガバナンス・コードについて
デジタルガバナンス・コードは、経済産業省が策定している企業がデジタル化を進める上でのガイドラインであり、DX認定のための基準の一つです。
デジタルガバナンス・コードの項目は、DX認定制度の申請項目と対応しています。そのため、デジタルガバナンス・コードの項目を達成していくことが、そのままDX認定へとつながるのです。
出典:DX認定制度概要~認定基準改訂及び申請のポイント~|経済産業省商務情報政策局情報技術利用促進課
そのため、DX事業者認定を目指す場合は、デジタルガバナンス・コード
を参考に進めていきましょう。
DX認定制度ができた背景・理由
DX認定制度ができた背景・理由として最も大きなものは、2018年に経済産業省が発表して話題になった「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」ではないでしょうか。
同レポートでは、このまま企業が古い基幹システムを使い続けることによりDXが進まず、2025年以降に最大12兆円もの経済損失が生じる可能性があると警鐘が鳴らされたのです。これは「2025年の崖」と呼ばれ、当時大きな話題となりました。
そこで、2019年に経済産業省は「DX推進指標」を策定し、日本企業のDX推進状況を分析しました。すると、およそ9割の企業がDXを推進できていないという状況だということがわかり、この状況を打破するためにDX認定制度をスタートさせています。
また、日本の「Society 5.0」実現へ向けた情報処理基盤の整備も、DX認定制度が始まった理由の一つとされています。
Society 5.0は、下記のように定義されています。
Society 5.0は、日本が目指すべき未来の姿として打ち出されたもので、Society 1.0~Society 4.0は下記のように進んできました。
Society 1.0:狩猟社会
Society 2.0:農耕社会
Society 3.0:工業社会
Society 4.0:情報社会
Society 5.0は、現在のSociety 4.0の課題を解決するために目指すべき姿とされています。Society 4.0が抱える課題は、下記のとおりです。
知識・情報があふれかえっている
情報の取捨選択の難易度が高い
地方の過疎問題
少子高齢化
年齢・障がいの問題
Society 5.0が実現すれば、IoTやAIの発達により必要なときに必要な情報が提供されるようになったり、ロボットや自動運転などで年齢・障がいの問題の解決につながったりすることが予想されます。
Society 5.0にはデジタル技術が必要不可欠なため、その一環としてDX認定制度が存在しているのです。
DX認定制度のメリット5選
DX認定制度はDXを推進するうえでの指標になりますが、DX認定事業者に認定されるとメリットもあります。DX認定制度の主なメリットは、下記の5つです。
DX推進に向けてやるべきことがはっきりする
企業イメージの向上につながる
税制控除などの優遇を受けられる
中小企業向けの支援を受けられる
DX銘柄に応募できるようになる
DX認定制度にはどのようなメリットがあるのか、一つずつ見ていきましょう。
DX推進に向けてやるべきことがはっきりする
DX事業者認定を目指して活動していくと、企業はDXを推進するための具体的なステップや方向性を明確にできます。そのため、実はDX事業者認定を目指す過程に、すでにメリットはあるのです。
DX事業者認定を受けるには、経済産業省が定めるデジタル化のガイドライン的な位置づけの「デジタルガバナンス・コード」に対応する必要があります。具体的には、自社の課題や状況の整理、活動内容の公表などです。
そのため、DX認定制度を目指して行動するのが、DX推進につながる近道になるのです。
企業イメージの向上につながる
DX認定制度は、企業のデジタル変革への取り組みを公的に認める制度です。そのため、社会や取引先からデジタル化に積極的に取り組んでいる企業だと認知され、企業のイメージやブランド価値の向上につながります。
具体的には、DX認定事業者に認定されるとDX認定ロゴマークが使用可能になり、一目でDX推進に取り組んでいることが明確に分かります。DX認定ロゴマークは自社Webサイトやパンフレットにも使えるため、アピールにも使用可能です。
また、DX認定事業者はDX推進ポータルに一覧で公開されます。認定された事業者は会社の規模に関係なく掲載されるため、自社のアピールの場にできるのです。認知が広がれば、新たなビジネスチャンスや優秀な社員の採用につながる可能性があります。
このように、DX認定制度は企業イメージの向上につながり、さまざまなメリットを生むのです。
税制控除などの優遇を受けられる
DX認定制度を通じて、企業は税制上の優遇措置を受けられます。
具体的には、「DX投資促進税制」という制度で、DX推進に伴う機器やシステムの導入に対し、費用負担を軽減可能です。受けられる優遇措置は、下記のどちらかです。
税額控除3%(外部の企業法人との連携や共有を行う場合は5%)
特別償却(投資額の30%が上限)
DXを推進していくうえでは、新たなコストが必要になります。税制控除などの優遇を受けられる点は、大きなメリットといえるでしょう。
中小企業向けの支援を受けられる
中小企業がDX認定されていると、中小企業向けの支援を受けられます。具体的には「IT活用促進資金」という制度で、日本政策金融公庫から基準より低い利率で融資を受けられます。
また、中小企業信用保険組合の特例や追加保証や保証枠の拡大も受けられます。特に、中小企業はDX推進に向けて、割けるコストがあまりないケースが多いでしょう。そのため、中小企業にとって、DX認定制度はメリットが大きいといえます。
DX銘柄に応募できるようになる
DX認定事業者になると、DX銘柄に応募できるようになります。DX銘柄とは、東京証券取引所に上場している企業のなかで、優れた実績を持つ企業を経済産業省と東京証券取引所が選定するものです。
DX銘柄に選ばれた企業は、その認定を通じて投資家からの注目を集め、資金調達の機会を増やせるようになります。
そのため、東京証券取引所に上場している企業の場合は、DX銘柄に応募できるようになるのはメリットといえるでしょう。
DX認定制度の申請方法3ステップ
DX認定制度にはさまざまなメリットがありますが、具体的に申請するにはどうすればいいのでしょうか。DX認定制度の申請方法は、下記の3ステップです。
申請要件を満たしているかの確認
申請書類のダウンロードと書類作成
DX推進ポータルから申請
実際に申請する際に困らないよう、把握しておきましょう。
ステップ①:申請要件を満たしているかの確認
まず、DX認定の申請要件を満たしているかを確認しましょう。
申請要件は、DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)で確認できます。DX推進の際に取り組んでいた、デジタルガバナンス・コードと照らし合わせながら確認しましょう。
ステップ②:申請書類のダウンロードと書類作成
次に、DX認定制度の申請書類をダウンロードし、必要な情報を記入しましょう。ダウンロードが必要な書類は、下記のとおりです。
新規申請
DX認定制度 認定申請書(様式第16 第40条関係 認定申請書)
申請チェックシート(新規・更新共通)
更新申請
DX認定制度 認定更新申請書(様式第17 第42条関係 認定更新申請書)
申請チェックシート(新規・更新共通)
申請書、申請チェックシート以外の必須提出の資料
設問(5)の取組(課題把握)は、以下いずれかの証跡資料が必要です。
「DX推進指標 自己診断結果入力サイト」 からの入力
自己診断結果記入済のDX推進指標自己診断フォーマット(Excel形式)を申請書の添付資料として提出
課題把握の結果が分かる資料(形式自由)を申請書の添付資料として提出
申請書類には、デジタル技術が社会や自社の競争環境にどのような影響を及ぼすかについて企業が認識し、その内容について公表しているかといった、自社の取り組みを確認する項目があります。
それらの設問に回答していくプロセスの中で、どれだけDX推進に取り組めたかが整理されるのです。
ステップ③:DX推進ポータルから申請
申請書類への記入が済んだら、DX推進ポータルから申請を行いましょう。審査を通過すると、DX認定事業者として認定されます。
審査後、認定結果は申請者に通知されます。認定された事業者は、DX認定事業者として下記の情報が公表されます。
名前
所在地
URL
認定日
認定期間
DX認定事業者として公表されると、多くの人の目に留まり、自社のアピールもできるでしょう。
上記の手順を踏めば、DX認定制度へ申請できます。ただ、申請するには、社内でDXを推進する必要があります。社内でのDX推進方法については、「成功するDX推進のポイントとは?~データ活用のポイント~」で詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
DX認定を受けている企業事例
DX認定を受けた企業は、「DX推進ポータル」で公表されます。そのため、DX推進ポータルで公表されている企業は、DX推進に積極的に取り組んでいる企業であることがわかります。
2023年10月には、新たに41件の事業者認定がありました。主な企業は下記のとおりです。
三菱電機トレーディング株式会社
愛三工業株式会社
株式会社ゼンショー・ホールディングス
ダイハツ工業株式会社
大東建託株式会社
イオン株式会社
三菱重工業株式会社
認定された企業から、業種を問わずに各社がDX推進に取り組んでいることが分かります。今からでも決して遅くありません。DX認定を目指して、行動を起こしてみましょう。
DX認定制度を有効活用しましょう
DX認定制度は、企業のデジタル変革(DX)を評価・認定するための制度であり、その活用は企業の成長にとって重要です。DX認定を受けることで、企業のDX推進力が公に認められ、自社をアピールできます。
他にも、DX推進に向けてやるべきことが明確になったり、税制優遇を受けられたりなどのメリットもあります。
DX認定制度を有効活用し、企業のDX推進を加速させましょう。
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