長崎訪問6 お寿司を食べよう
盲学校を後にした私は、長崎県視覚障害者協会のN会長が待つお店に向かった。
案内された店内は、入口に入って右手側に縦にカウンターが並ぶ、縦長の寿司屋だった。
それほど大きくはないが、なんとなく良いお店の雰囲気がする。
会長に迎えられて隣に座り、盲学校の体験会がどうだったかや囲碁の話をしながら料理を待った。
既に会長はビールを飲んでいて陽気になっていたので、私もたまには便乗してビールを飲むことにした。
やっぱりビールは苦くて好きにはなれない(笑)。
会長は、目の前で料理を作っている大将とフレンドリーに話しているので、ここは会長の行きつけの場所なのだろう。
また、もう一人の男性客も私の数席隣で飲んでいたが、たまに話に入ってきて楽しかった。
こういった雰囲気はとても居心地が良い。
しかし、時折出る地元の言葉がちょっと何を言っているのか分からず、その流れで話を振られると愛想笑いで合わせるしかなかった。
次に来る時は、YouTubeで長崎の言葉を予習して来ようと思う。
さて、長崎の寿司屋に来たからには、海の幸を堪能しなくてはならない。
と思いきや、最初に出された料理は昆布巻きだった。
おせち料理のイメージが私にはあるが、確かに昆布は海で取れるし、具の魚もそうだ。
そして非常に美味しかった。
昆布を煮詰めているものの、そこに新鮮さのような食感が残り、昆布と具の魚の味付けが絶妙だった。
やはり、私の実家で食べる昆布巻きとは似て非なるもののようだ。
次に出てきたのはサバだ。いつも思うのだが、海が近い地域で食べるサバは、東京で私が食べるサバと全く別の魚じゃないだろうかと思う。
全然臭みが無いし、食感がしなやかに感じる。
サバだけでなく、次々と出てきた刺し身も鮮度が高いので歯ごたえがあって美味しかった。
また、醤油も九州だからといって甘いかと思ったが、
甘みはそれほど強調されておらず、むしろ甘さと塩気と辛さが絶妙なバランスだった。
余談だが、私が盲学校訪問をする時には、その地域の醤油を買うようにしている。
醤油一つにしてもその土地の文化があり、全て味が違っていて面白いのだ。
そして、東京に帰ってもその地方の醤油を使うことで、旅の思い出や味が蘇ってきて、家族と味で感想を共有できるのだ。
さて、料理に戻ろう。
出てきた料理を全て紹介したいのだが、長文必至になってしまうので、印象に残ったものを選びたい。
【きゅうり巻との出会い】
今回、特筆すべき料理は、きゅうり巻というものだ。
「えっ、かっぱ巻と違うの?」と思われた読者が多そうだが、私もその一人だった。
私はお寿司のメニューで何が一番好きかと尋ねられたら、かっぱ巻きと即答するくらいのかっぱ巻ファンである。
※ 様々な角度からのツッコミがあることはあえて無視させてもらう。
その私がここできゅうり巻に出会えたのは、本当に運命としか言いようのないことだった。
【きゅうり巻とは】
その気になるきゅうり巻はどのようなものかというと、簡単に説明すると、軍艦巻きの具がきゅうりの千切りで、ごま油と調味料が加わっている巻き寿司だ。
普通、かっぱ巻は一本の長い巻き寿司にしてから包丁で切り分けるが、きゅうり巻はメインのきゅうりが零れそうなほどどっさり乗っている。
これはきゅうり好きにとっては、まさに天国のような食べ物ではないだろうか。
きゅうりを千切りにすることで、もろきゅうのような食感は得られないものの、だからこそごま油の絡まり具合が素晴らしい。
おっと、つい文章に力が入ってしまった。
とにかく、今夜はこのきゅうり巻に出会えて本当に嬉しい。
ちなみに、N会長は、きゅうり巻で一人でテンションを上げていた私を冷ややかに見ていたようだった。
その後も、大将はいくつか寿司を握ってくれ、珍しい鯨の刺し身も出してくれた。
生姜と一緒に食べる鯨肉は、私が子どもの時に父から「一口だけだぞ」と言われて食べさせてもらった思い出が蘇る味をしていた。
長崎の夜はまだまだ続く。
次回、お寿司屋さんでテレビを観ようの巻
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