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【5限目】 社会 : 黄陽先生

*ぴちゃんと先生 5限目*

ぴ『きよお〜! イェーイ!』

黄『ぴちゃん今日も元気やなぁ』

ま『さっきの時間が理科だったんですよ』

黄『あぁ〜なるほど、だからみんなどこか解き放たれた感があるのか』

ぴ『きよおが神様に見えるよ〜』

ま『黄陽(きよう)先生、とりあえず授業を』

黄『そうだね。今日は関ヶ原の戦いについてでもやってく?』

ぴ『得意分野や! 何年の関ケ原や?』

黄『何年? ぴちゃん、関ヶ原の戦いは1日で終わった戦いなんだよ』

ぴ『ぴ? え? なに? 関ヶ原の戦いって、実際にあった出来事があるわけ?』

ま『まずそっから!?』

ぴ『え? アイドルフェスの関ケ原とは違うってこと?』

黄『違うねぇ。この調子だとあれだね、ぴちゃん関ヶ原の戦いのこと何も知らなそうだね』

ま『あ、でも先生、誰が関わってるかは分かるかも。ほら、ぴちゃんも武将の名前くらい分かるでしょ。ステージの名称にも使われてるよ』

ぴ『おぉ! 徳川と豊臣だ!』

黄『ん? まぁ、そうなんだけど、有名どころで2人挙げるなら、徳川家康と石田三成だよ?』

ぴ『ぴ〜? きよお!豊臣秀吉は関係ないの〜?』

黄『えーっと、とりあえず簡単に説明していこうか。まず、関ヶ原の戦いが起こったきっかけが「豊臣秀吉が死んじゃった」んだよね』

ぴ『ぴ! 豊臣すでに死んじゃってんの? じゃあなんだ、あの豊臣ステージって! 縁起悪いな!』

黄『で、ここで1人の武将が政権を狙おうとしてるんだよね。それが、徳川家康』

ぴ『なるほど、鳴くまで待とうホトトギスの人はじっと待ってたんだね』

黄『でもそれを気に食わない武将もいるんだよね。それが、豊臣秀吉が生前信頼していた、石田三成』

ぴ『おぉ、石田さんは実質的には豊臣派ってことか』

黄『まぁ、そうだね。豊臣の政権を徳川に持ってかれることを阻止するために、豊臣派の石田が徳川に対立をしに行くんだよね』

ぴ『なるほど、徳川VS豊臣(石田) みたいなことなんやな』

黄『そこで、全国の武将も徳川につくか、石田につくかして。徳川家康率いる東軍と、石田三成率いる西軍の戦いになるわけ』

ぴ『それが岐阜県の関ヶ原で行われたわけやから、関ヶ原の戦いってわけか』

黄『そうだね。ここまでが簡単な流れかな。さて、ぴちゃん。それでこの戦い、どっちが勝ったと思う?』

ぴ『そりゃ徳川家康でしょ。関ケ原のメインステージも徳川ステージって言ってるしな。まぁ、鳴くまで待とうで有名な人やからな、きっと辛抱強かったんやろう』

黄『その通り、勝ったのは家康だったんだ。とはいえ、合戦自体は6時間で終わったと言われるほど、短期決着だったんだよね』

ぴ『家康超強ぇ〜』

ま『俺は家康のことはあんまり気に食わんけどな』

ぴ『ぴ? なんで』

黄『その口ぶりだと、まえくんはもう少し詳しく知ってそうだね』

ぴ『なになに? きよお教えてくれや』

黄『例えばぴちゃん、今の時代で考えようや。もし天皇陛下が亡くなられたら、そのあとってどうなると思う? 天皇になりたい他の家系の人がなれると思う?』

ぴ『いやいや、そりゃなれんよ。天皇様の家系の人がなるでしょ〜。あっ、待って、確か豊臣秀吉って結婚してたよね? てことはさ、子どもいるじゃん。その子大きいはずでしょ? 秀吉も長生きしてたはずじゃなかったっけ? 子ども相当いい歳になってるはず。そいつが政権握れば良かったんじゃ?』

黄『よく知ってるねぴちゃん。だけど、秀吉の実子は2人とも幼いときに亡くなっているんだ。そこで、養嗣子(ようしし)として三好秀次を迎えるんだけど、かなりしばらくして、秀頼が産まれるんだよね』

ぴ『お? じゃあ秀頼になるのか?』

黄『秀吉も、実子の秀頼に政権を握ってほしいと考えるようになる。そこで、秀次の娘と生後2ヶ月の秀頼を結婚させて、秀次のあとに秀頼が政権を握れるように準備したんだよね』

ぴ『生後2ヶ月で結婚? まえくん気ぃ失うな!』

黄『ところが、1595年。秀次が秀吉への謀反の罪で切腹を命じられたんよ』

ぴ『はい〜? きよお〜、なんか無茶苦茶になってきたぞ?』

黄『秀次の自刃により、完全に政権は幼少の秀頼になった。しかしこのとき、厄介なことが起こる。当時、関白を支えるために「五大老」「五奉行」という2つの体制をとっていたんだ。国や政治を指揮する「五大老」と、豊臣政権の治安の維持を目指す「五奉行」って役割なんだけど』

ぴ『もしかして』

黄『「五大老」には家康、「五奉行」には三成が所属していたんだ』

ぴ『ほら〜、やっぱりそーゆーことじゃん! ダメだよ強い組織を2つ作っちゃ〜。衝突するに決まってんじゃんか〜』

黄『三成は五奉行だから豊臣政権を守るために秀頼の力になろうとするんだけど、それを気に入らないのが家康なんだよね。こんな6歳児を担ぎ上げるなんてバカらしいって』

ぴ『まぁ、分からんでもないけど』

黄『とはいえ、三成にも三成の非がある。三成は秀吉には好かれていたけど、他の周囲の武将からは嫌われていたと言われてるからね。関ヶ原の戦いの最中も西軍同士で謎の進路妨害があったり、小早川をはじめとする各武将の裏切りや内通。しかも、この石田三成は戦が下手だったとも言われている。所詮、秀吉に好かれて上の立場にいただけで、実戦で成果を上げてきた武将ではないからね。建前上西軍についてはいたものの、他の武将が見限るのも無理はないよ』

ぴ『てことは、負けるべくして負ける戦いだったってこと?』

黄『というか、家康が勝つべくして勝った戦いだったってことだね。結局西軍は、内政がガタガタな中で、到着した大垣城にはすでに東軍がスタンバっていて、案の定総攻撃をくらうことになるんだ。三成は諦めて逃亡するんだけど、数日後に捕まり処刑されてしまう』

ぴ『わぁ。なんか、感情だけでことを進めた石田三成と、色々綿密な計画して時を待って動いた徳川家康とで、大きな差が出来ちゃったんだね』

黄『その関ヶ原があって、3年後に家康は征夷大将軍になって江戸幕府を開くんだよね。ここから、15代270年の徳川家の歴史が始まるんだ』

ぴ『ぴ〜。秀頼ちゃんが産まれてから10年も経たないうちに、時代は大きく変わっちゃったよ〜』

黄『この関ヶ原の戦いから、常に準備してきたやつが強いんだってことが分かるんだよ。どれだけ、好きな人やその周囲を守りたくても、実際に力がないと守れないし、準備や計画がずさんなら話にならないんだよね。こうやって、日本のひとつの合戦を例にとってみても、色々な教訓を学べるんだ。僕の授業は、歴史の丸暗記なんてしなくていいよ。この過去の歴史から、どう未来の社会を形成していくか、どんな将来を築いていきたいかを考えることが大切なんだ。自分が何を考えて、何を準備して、どんな未来を目指すのか。その答えを今のうちに見つけておいて、状況に応じてシステム変更して、最後には最先端の椅子に座っている。僕は、そんな有望な若者を育てたいと考えているからね』

ぴ『きよお〜。熱いなきよお〜!』

黄『君たちには「あの時やっておけばよかった」という後悔はさせたくない! 過去の歴史を教材に、事前準備の大切さ、考えることの大切さ、実行することの大切さを身につけて欲しいんだ!』

ぴ『分かったぜ、きよお〜! じゃあ、ぴちゃんは次の時間にある英語の宿題が終わってないから、事前準備としてそれをやるぜ〜』

黄『うん。それはダメ。きちんと怒られてこい』

ぴ『ぴ〜、そりゃそうか〜』

ま『そりゃそうだろ』

#3分間の暇つぶし   #ぴちゃんとおはなし  #ぴちゃんと先生  

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