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【2限目】 国語 : 赤岩先生

*ぴちゃんと先生 2限目*

赤『徒然なるままに、ひぐらし』

ぴ『ふぁ〜あ。いきなり国語かぁ〜。ぴちゃんの眠くなる教科第1位だよ〜』

赤『ぴちゃん。ダメですよ、授業中にあくびしないでね』

ぴ『先生〜、だってさ、古文って何言ってるか本当分かんないんだもん』

赤『そうね、今は使っていない言葉が多いですものね。でもね、日本語の表現の奥深さ、奥ゆかしさというのは、この古文を通じて勉強していくことが出来ますから』

ぴ『ぴ〜。先生は今の言葉についてどう思ってるの〜?』

赤『今の言葉? 流行語とかのことですかね』

ぴ『うん。例えば「ぴえん」が流行った時って、先生はどう思ってたの〜?』

赤『そうですねぇ。「ぴえん」の時は、あの表情も合わせて「らうたし」だったかしら』

ぴ『ろ、ろーたし?』

ま『「かわいらしい」って意味やね』

ぴ『じゃ、じゃあ「◯◯しか勝たん!」は?』

赤『そうですねぁ、そこまで言い切れるのは「はづかし」ですかね』

ぴ『え? 何で恥ずかしいん?』

ま『「こちらが恥ずかしく感じるほど”立派だ”」って意味やよ。先生からしたら、そんぐらいはっきり意思表示できるのは素晴らしいね、ってことじゃないかな』

ぴ『あとは〜、もう誰も使ってないけど「やばたにえん!」は?』

赤『ここまでくると「ものぐるほし」ですね』

ぴ『まえくん、ものぐるおしって?』

ま『「気が狂ってくる」だね。「異常なほど・正気を失うくらい」とかそんなテイストの単語だね。気分が高ぶってる状態の時とかに使うね』

ぴ『先生の気を狂わせるって、マジでやばたにえんだったんだ』

赤『「ぱおん」まで来たときは「いとをかし」でしたよ』

ぴ『意図おかし?「マジ意味わからん、頭おかしくね?」ってこと?』

ま『いや、「とても趣がある」や。「もう現代語としては理解の範疇を超えてるから、それが時代を表す言葉として、なんかもう逆に風情があるよね」って感じかな』

ぴ『お〜、ぱおんは褒められてる』

ま『褒められてるかは知らんぞ。「をかし」は、古文単語の中におけるジョーカーみたいなやつやからな。筆者の心情を読み解くのが鍵やで』

赤『古文単語には、2つ以上の意味を持つものが多いです。しかも、中には真逆の意味を持つ単語も多くあります。それはなぜでしょうか』

ま『その方が趣深いからですね』

赤『その通りです。雅な生活の中において、負の感情を表すことは、最も自分を醜いものに見せてしまうのです。そんな中、あえて自分の気持ちを貫きながら、相手へと嫌味なく伝える手段として、単語、要は言葉の力を借りるのです。笑顔でまるで良い意味を使っているように、心のそこでは相手を皮肉るのです』

ぴ『ぴ〜。先生なんかそれ怖いよ〜』

ま『京都の文化の一つでもあるよな。京言葉もそれに近いスタイルで今でも使われてる印象があるわ』

赤『ここで大事なのは「目は口ほどに物を言う」ということわざもあることです。いくら言葉を上手く活用できていても、表情には敵わないのです』

ま『だから常にニコニコしてるんですね。本心を探られないように』

ぴ『怒った顔で「キレてないっすよ」って言われても、「嘘じゃーん」ってなるもんね。「俺をキレさせたらたいしたもんっすよ」ってクールに言うからカッコいいんだよね』

赤『言葉というものは、あくまで生物のコミュニケーションの手段に過ぎません。言葉の通じない国の人通しでも、気持ちが通じ合っていることもありますからね』

ぴ『ぴ? 先生はじゃあさ、なんで国語の先生になったの? 今の話聞いてると、別に言葉の意味をちゃんと覚えなくても良いように聞こえるけど』

赤『ぴちゃんの言う通りです。言葉というものは、ただのツールであり、音であり、文字という記号であり、各々の国の先人たちが勝手に決めたものでしかありません。意味を事細かに覚えるだけではダメなのです。じゃあ、言葉の本質は何でしょう?』

ぴ『本質?』

ま『どうして言葉が出来たのか? ってことだよ』

ぴ『それは、さっき言ってたじゃん。コミュニケーションのためでしょ?』

赤『じゃあ、なぜコミュニケーションが必要なのでしょう?』

ぴ『うーん、それは〜、コミュニケーションを上手にとらないと、相手が何考えてるか分からないから?』

赤『そうですね。例えば、今よりももっともっと昔。マンモスに気付いている人間と、マンモスが迫っていることに気付いていない人間がいたとします。その時に「危ないよ」「後ろから来てるぞ」と言えば、種の生存率は上がりますよね。あらゆる生物は、種の生存を大前提とし行動するのです。その中で、人間は他の生物に比べたら余りに力がありません。このままではいずれ人類は滅びます。だから、他の生物よりも知恵をつけ、手先を器用にすることで、この世界を生き延びていくことにしたのです』

ぴ『ほーほー』

赤『生き延びるために得た物の一つが「言葉」です。今の自分たちのコミュニケーションツールとして、後世へと物事を伝える手段として。言葉には、役割があるのです。私たち人類が、この世界を生き抜くために言葉は必要なものになりました。「言葉の意味を理解する」ということは、「この世界を生き抜くこと」につながるのです』

ぴ『お〜、なんか壮大なことになってきた〜』

赤『では、「言葉の意味」とはなんでしょう?』

ぴ『ぴ? えーと、わかりません』

赤『それこそ、言葉の意味とは「心」なのです。「言葉の意味を理解する」ということは、「相手の心を理解する」ということなのです。マンモスが迫って来てて「危ないぞ」と言われても、「危ない」という言葉の意味が分からなければ、せっかくの声かけも意味なく、心が通じていないのと同じなのです』

ぴ『なるほど。確かにそうだわ』

赤『だから先生は、みんなに国語を教えるのです。体育や技術や家庭科を教えた方が、それはそれは生きていく上でとても必要なことでしょう。でも、国語の授業で言葉の意味を理解し学ぶことも、また同じくらい大切なのです。言葉は、先人たちが勝手に決めたものではあります。しかし、それを理解することが、今私たちがこの世界を生き抜くためにとても必要なことなのですよ』

ぴ『国語の授業ってスゲー!』

赤『では、授業に戻ります。はい、ぴちゃん。「ひぐらし」ってどういう意味でしょうか?』

ぴ『はーい! 先生これはぴちゃんでも分かるで! セミのことやろ!』

赤『違いますね』

ぴ『嘘だ!!』

ま『あ、ひぐらしだ』

#3分間の暇つぶし  #ぴちゃんとおはなし  #ぴちゃんと先生  

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