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【8限目】 音楽 : 桃海先生

*ぴちゃんと先生 8限目*

ぴ『ももみちゃん! こんにちは〜!』

桃『はい、ぴちゃんこんにちは。今日の音楽の授業も楽しんでいきましょうね』

ぴ『は〜い!』

ま『桃海(ももみ)先生、今日はお召し物がいつもより華やかですね』

桃『午前中に、ここの卒業生の子の演奏会が県営ホールでありましてね。私のような老いぼれがみすぼらしい格好してたんじゃ、演奏するあの子にも失礼に値してしまうから。朝から気を使いましたよ』

ぴ『演奏会? ももみちゃんの教え子さんプロなん?』

桃『まだ卵だけどね。それでは、授業を始めましょうね』

ま『よろしくお願いします』

ぴ『ももみちゃん今日は何歌うん!』

桃『今日は「音符の種類」について少しお勉強しましょうね』

ぴ『ぴぎゃ! ももみちゃん! 今日お勉強なの!? 歌お〜よ〜』

桃『う〜ん、でもこれ知ってたら、ぴちゃんもっと歌上手くなるよ?』

ぴ『マジで? まぁ、ももみちゃんが言うなら間違いないかぁ』

ま『桃海先生の言うことは案外素直に聞くよなぁ』

ぴ『ももみちゃんは言葉の安心感が違うでな』

桃『年の功もあるのかしらね?』

ぴ『ぴ〜! ももみちゃんは可愛いから! まえくんとは言葉の重みがダンチやで!』

ま『そりゃ悪うござんしたね』

桃『ところでぴちゃん? ぴちゃんって音符の種類については分かるのかしら?』

ぴ『ごめん! よく分からん! それどころか、今まで雰囲気で歌ってたで! ももみちゃんやまえくんが歌うの聴いてて、それでなんとなくで歌ってる』

ま『それはそれですごいんよ』

桃『音階については分かるのかしら?』

ぴ『それはいける! ドレミやろ?』

桃『じゃあ、楽譜の音階と一緒に見てるはずよね?』

ぴ『ちゃうねん! ぴちゃんもいくつかは分かるで。「普通のやつ」と「2つ伸ばすの」と「4つ伸ばすの」と、あとは「1個休む」と「タッ」てやつ』

桃『あらあら。見事に感覚派ねぇ。「普通のやつ」って「♩」のことであってるかしら?』

ぴ『そうそう、それそれ!』

桃『名前があるのだけど、それは知らないってことね?』

ぴ『うん! それはいつも「タン」って言ってる! 牛タンゲームの「タン」やな!』

桃『ちなみに、まえくんは分かるかしら?』

ま『「4分音符」ですよね』

桃『はい、正解です。ぴちゃん覚えてね』

ぴ『じゃあ、その4分音符の中が白丸になってる「2つ伸ばすの」は?』

桃『「2分音符」よ』

ぴ『じゃあ、全部白丸で棒がついてない「4つ伸ばすの」は1分音符?』

桃『それは「全音符」ね。ちなみに、ぴちゃんの言う「タッ」って表現の音符は「♪」こんな形してるやつかしら?』

ぴ『お〜、さすがももみちゃん! ぴちゃんと意思疎通出来てる!』

桃『「♪」は「8分音符」って言うのよ。ちなみに、この羽のようなところが2つになると「16分音符」で、3つになると「32分音符」になるわよ。拍の短さが、羽1枚増えるごとに半分になっていきますからね』

ぴ『なるほどねぇ』

桃『ちなみに「♩」と「♪」を足したものが「付点4分音符」と言って「♩」の右下に付点という小さな黒丸が付いているわ。この付点は、「その音符の半分の長さを足す」という意味があるのよ』

ぴ『あぁ、これ印刷ミスじゃ無いんか。通りでぴちゃんの楽譜いつもコピー荒いなぁって思ってたんよ』

ま『そんな偶然あるかい』

ぴ『あとは、音符たちが口元にセクシーボクロ描いてんのかと思ってた』

ま『誰得だよ』

桃『ちなみに、音を出さない方の「休符」ね。こっちも「4分休符」「全休符」「8分休符」「付点4分休符」のように、種類によって長さが異なるけど、ルール自体は音符と変わらないわ』

ま『「全休符」と「2分休符」が時々ごっちゃになるんすよねぇ』

桃『あっかんべーしてる方が「全休符」と覚えましょうね。漢字の「皿」に似ている方が「2分休符」ですよ。長さが2拍変わってくるので注意ですよ』

ぴ『ももみちゃん! これでぴちゃん大丈夫やな!』

桃『あら、じゃあ「♫」は分かるかしら?』

ぴ『あっ、それもよく見る! めっちゃ連なって長い時あるよね!』

ま『俺もこれの名前は知らんなぁ』

桃『まえくんも分かりませんか? 珍しいですねぇ』

ぴ『当てていい?「4分音符」が2つくっついてるから、4足す4で「8分音符!」』

ま『いや、それやと「♪」と一緒やで』

ぴ『ぴ!? 本当や。い、いや、知ってたで! まえくんを試しただけやから!』

ま『あー試されてましたかーいやー参った参ったー』

ぴ『棒読みやめてくれん? バカにしてます?』

桃『いや、ぴちゃんもまえくんも聞いて。実はその答え、とっても惜しいんですよ。「♫」の読み方は「連桁(れんこう)付き8分音符」って言うの。ただちょっと違うのは、名前の通りで「4分音符(♩)」じゃなくて「8分音符(♪)」が2つくっついた音符なの』

ぴ『え! 「♩+♩=♫」じゃなくて「♪+♪=♫」が正解なんだ!』

桃『ちなみに、「♬」は16分音符がくっついた「連桁付き16分音符」よ。この「連桁」と言うグループ化をすることで、途切れさせずに一体化して音をつなげることとなり、音の流れをより自然なものとする効果が生まれるわ』

ま『なるほど、そーゆーことだったんですね』

桃『音符の他にも記号はたくさんありますからね。「メゾフォルテ(ff)」とか「クレッシェンド(cresc.)」みたいな強弱に関する記号や、「スタッカート」「タイ」「スラー」「フェルマータ」のような演奏に関するアーティキュレーション記号、他にも「アレグロ」「アンダンテ」などの速度記号・「リピート」「ダ・カーポ」の反復記号・「シャープ」「フラット」の臨時記号・「ドルチェ」「カンタービレ」のような発想記号ってところかしら。一つ一つはよく見るけど、難しい名前にすると音楽も色々あるんですよ』

ぴ『ぴえ〜。いくつか名前は聞いたことはあるけど、ちゃんとした意味って答えられないと思うよ〜』

桃『音楽の授業の評価は、主に授業に取り組む姿勢と実技になりますからね。高校生になると、知識としてペーパーテストも出てきますが』

ぴ『ももみちゃん! なんとなくじゃあかんの? 感覚じゃあかんの?』

ま『あかんやろ』

桃『いえ、いいんですよ』

ま『え? いいんですか?』

桃『確かに、譜面通りに演奏していけば、作者の意図の通りに音を奏でることが出来るかもしれません。でもね、おそらく、作者の意図100%再現出来る演奏家なんていないんですよ。どんなに素晴らしい演奏家であっても』

ぴ『じゃあ、好きなように歌えばいいんや』

桃『それも違うわね。曲や歌には、意思があります。その意思を誰にどう届けるか、そのシチュエーションが大切なのです。例えば、先生がぴちゃんのために歌う「バースデーソング」と、世界的歌手が全世界の人に向けて歌う「バースデーソング」には違いが出来るはずよね。先生は、ぴちゃんに喜んで欲しいから「ぴちゃん誕生日おめでとう」って気持ちで歌います。でも歌手の人は「全世界の人に向けて、全世界の人の気持ちに代わって、誕生日おめでとう」という気持ちを込めて歌います。この違い、大きいと思わない?』

ぴ『うん。ちょっと違うかなぁ。たぶん、歌手の人の歌よりも、ももみちゃんの歌の方が嬉しいと思う』

桃『おそらく、歌手の人の方が譜面通りに歌うでしょうね。アレンジを加えても許容範囲の域のはずです。だから、譜面通りに音を出せばいいというものではありませんし、好きなように歌うだけでいいとも言えません。先生が好きなように歌っても、ぴちゃんに気持ちが届かなかったら意味がないですからね。大事なのは、相手のことを思いやることです。目の前に書いてある譜面と記号が全てではありませんよ。基本を知りつつも、自分がどう相手のことを思って、どうパフォーマンスするかが大事なのです。とはいえ、日本語で音楽は「音を楽しむ」と書きます。この意味は、「自分の音の楽しみ方」「相手への音の楽しませ方」「みんなで音を楽しむ方法」など、「音を楽しむ」ことにも、さまざまな目的や条件下で、あり方は変化していきます。知識をつけて、表現力もつけて、それで相手を思いやる心も身につける。そこで初めて、大人として音楽と向き合えるはずです。子供の頃は「純粋に音を楽しめば良い」と思うわ。でもね、やっぱり少しずつお兄さんお姉さんになっていくんだから、物事の「楽しみ方」や「楽しませ方」のバリエーションも、少しずつ増やしていった方が良いと思っちゃうのよね』

ぴ『お〜。ももみちゃん! ぴちゃんは、子供ちゃうから、少しずつ表現方法もお勉強して、立派なお姉さんになるからね!』

桃『あらあら、すっかりはりきって』

ぴ『よし、まえくん! 音楽記号の問題何か出して!』

ま『じゃあ「カンタービレ」の意味は?』

ぴ『「普段ダラダラしててヤバいのに、自分の力を発揮すると止まらない主人公のように!」』

ま『うん。完全に「のだめカンタービレ」の影響が強めに入った答えだね』

桃『新しい意味が生まれちゃったわね。正解は「歌うように」ですよ』

ぴ『そうなのかぁ! 10年後とかには「ぴちゃんのように!」って音楽記号が出来ると良いなぁ!』



#3分間の暇つぶし   #ぴちゃんとおはなし  #ぴちゃんと先生  


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