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【12限目】 道徳 : 黒谷先生

*ぴちゃんと先生 12限目*

ぴ『くろやん久しぶり〜』

黒『うぃ〜。2ヶ月ぶりだな〜』

ま『現実世界での時間換算やめてください。一応、時間感覚とかうやむやにしてるシリーズなんですから』

ぴ『国民的アニメ方式な。何十年経っても一歳も歳取らないやつ』

黒『まぁ〜、それはいいじゃねぇか〜。じゃあ、今日でとりあえずはラスト授業だな〜。え〜、「道徳」という授業だ』

ぴ『ぴちゃん「道徳」って授業の存在がいまいちよく分からないんやけど』

黒『「道徳」は、生徒の道徳心を育むことを目的としてるな。自立を促す授業といってもいい。自分だけを見つめず、周囲のことを考え、思いやり、行動することで、改めて自分という存在自身も形成され見えてくる』

ぴ『お〜、くろやん真面目に授業してる』

黒『10秒間しかこのテンション保てないけどな〜』

ま『だとしたら、もう終了じゃないですか』

ぴ『ちゃんとやるき出して』

黒『「優しさ」とは何だろうな〜?』

ま『いきなりですね』

黒『「優しい人」っているだろ〜、俺みたいに〜』

ぴ『なかなか自己申告する人はいないけど』

黒『「弱い者を守る」ってのも大事だな〜、俺みたいに〜』

ま『自分から好感度上げてこうとしてます?』

黒『「優しい」ってのはさ〜、損なんだよ。何でか分かるか〜?』

ぴ『なんで? 人に優しくしたら、また優しくしてもらえるから損じゃないじゃん?』

黒『理想だな〜。そうだろ、まえ〜』

ま『うーん。確かに、ぴちゃんの考えは、よく言われることではありますが、完全な理想形ではあります』

ぴ『え〜? なんでなんで?』

ま『優しくするってのは、時間単価に見合わないんだよ』

ぴ『時間単価?』

ま『人に優しくするってのは、自分の時間を提供するわけだろ。それで、さっきぴちゃんが言ったみたいに、優しさで返してもらえるなら良いけど。特に相手がそのあと何もして来なかったら、自分の時間をタダで消費したことに過ぎないんだ』

黒『しかも〜、それが仕事中とか〜家事中とか〜、自分のやらなきゃいけないことがある時なんてのは〜、タスクが進まないことになるからな〜。自分に不利益でしかないぞ〜』

ぴ『そんな。くろやん! それはひねくれた考え方だよ! 時間とかお金とか、数字で比較しやすいものを引っ張り出してるだけじゃん。もっと、損得じゃないところで考えないと!』

黒『そ。ぴちゃんの言う通り〜』

ぴ『ぴ?』

ま『だから、それが道徳心ってことですね』

黒『当ったり〜。「優しさ」とは自分を犠牲にして他者の力になること〜。「道徳」とは、善悪の判別をつけ行動すること〜。つまりは〜?』

ぴ『「つまりは?」え〜っと、つまりは〜。人に優しくすることが道徳であるってこと?』

黒『う〜ん。「道徳である」って言葉はイマイチだから〜、直すぞ〜。「道徳をわきまえてるやつは、人に優しくすることができる」って感じだな〜』

ま『決められた物事でないことを、状況と照らし合わせて善悪の判断をとる。その判断や選択の先に、人は優しさを提供することができるってことですもんね』

黒『は〜い、そうだな〜。道徳ってやつは、答えがないんだわ〜。「こうした方が人のためだよね〜」みたいに広域解釈できるからな〜。「俺の優しさはこうしてやることなんだ〜」っていっても、それが社会と比較した時にあまりにもかけ離れていたら、それは「道徳心があるとは言えない」ってことにもなるけどな〜』

ま『一概には言えないことですもんね』

ぴ『じゃあどうしたらいいんよ。道徳の授業では「空気を読め」ってことしか言えないの?「空気を読んで善悪の判断をし、人の助けになれ」ってこと?』

黒『そうだ〜。じゃあ「空気を読む」って、実際は「何を読んでる」んだ〜?』

ぴ『そりゃあ、相手の表情とか、周囲の状況とか、それまでの会話の流れとかだけど』

ま『「柔軟に対応する」「環境に適応する」って感じですかね』

黒『ふんふん。まぁ〜、そんなもんだよな〜。じゃあ、「空気を読んで」「善悪の判断をし」「自分の時間を犠牲に」「弱者に優しくして」「見返りは特になく」「それが当たり前の世界」なんだそうだわ、道徳的なことが備わっているとな〜』

ぴ『そ、それは、何というか、疲れるね』

ま『そればかりをしていたら、自分のことができませんね』

黒『そうだな。そうやって人は、他者に首を突っ込むことをやめる。でもそれじゃあ、イマイチなんだ。うざったいくらいのお節介よりも、全くの無関心の方がダメなんだよ。なぜなら「人は誰でも」「いつ何時でも」「何かしらのこと」で困っているのだから』

ぴ『う〜ん。とはいえ、う〜ん』

黒『まぁ、悩むよな〜。なぜなら、「道徳」ってのは〜、こう授業で取り扱ったからと言って出来るわけではないことだからな〜。単語や公式を覚えるのとはわけが違うし〜。とはいえ、「道徳心」を身につけるためには、この難題は避けて通れないんだが〜』

ま『道徳心は持たないといけないのでしょうか?』

黒『持った方が良いと思うぞ〜。俺は、いわゆる「人として当然の振る舞い」が出来るのは「神」しかいないと思っている。「人として当然の振る舞いは、人には出来ない」という矛盾が生じていると思っているんだ〜。なぜなら、「当然の振る舞い」ってのは、人によって感じ方が違うからな〜。だから、少しでも「道徳心」を持つことが〜、「神」になることはできなくとも、「人格的に素晴らしい人」になるんだからな〜』

ぴ『「他人にどう思われてもいいや」って考え方は?』

黒『それはアレだな〜。「他人にどう思われてもいいから自分のやりたいことをやろう」ってのと、「他人にどう思われてもいいから相手のやりたいことを助けてあげよう」ってので、だいぶ違うよな〜。他人にどう思われてもそりゃ別にいいんだろうけど、そこで「何をする」かが重要だと思うぞ〜。それで、他人が自分にどんな感情を抱くか変わってくるからな』

ま『この社会や世界で生きていく以上、持っていないといけない「常識」はあると思います。そこへ、さらに「道徳心」というものを持つことが、人間としてステップアップすることになると言うことですね』

黒『最初にちょろっと言ったけど〜、道徳心があるってのは人としての「理想」なんだわ〜。だから〜、世界中の人がみんな道徳心を持っているってのが〜「最大の理想」。誰も悪いことをしない、みんなが助け合いのできる「理想の世界」になれば〜、そのときは、きっと、俺は今よりも楽できるんだろうな〜♪』

ま『あ〜! いい感じのシメかと思ったのに! 最後ので台無しじゃないですか! 最後ので理想の世界になれないじゃないですか!』

ぴ『なるほどね。くろやんみたいな考えの人が常時いるから、理想の世界なのね』

黒『とりあえずアレだ〜。今日から始まる家庭訪問で〜、ちゃんと指示通りにメシ作っておいてくれよな〜』

ぴ『道徳心を1番持たないといけない教師が目の前に』

ま『最後の授業がコレで大丈夫だったのか?』

黒『は〜い、じゃあ今日の授業を終わりま〜す』

#3分間の暇つぶし  #ぴちゃんとおはなし #ぴちゃんと先生  

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