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【9限目】 家庭科 : 白石先生

*ぴちゃんと先生 9限目*

ぴ『お〜い、しらいし〜』

ま『棒アニメみたいに、先生を呼び捨てにしないの』

白『あいかわらずだな』

ぴ『お前もな』

ま『コラ』

ぴ『へいへい。白石さん、今日の調理実習はなんですかい?』

白『今日は味噌汁だ』

ぴ『ぴ〜? マジかよ〜。白石さ〜ん、お味噌汁なんて買えばいいじゃないかよ〜』

白『味噌汁は意外と知られていない基本がある。その基本が各家庭の味となる』

ぴ『家庭の味ねぇ〜。ヒットマンみたいな見た目しといてよく言うぜ〜』

ま(その見た目を前にして、なおグイグイいけるコツを知りてぇよ。コッチは家庭科の授業は常に緊張感持ってんだよ)

ぴ『黒スーツにエプロンとか、極◯夫道のパクリかよ〜』

白『玉木には勝てない』

ま(あ、極◯夫道は観てたんだ)

ぴ『お味噌汁かぁ〜。ぴちゃんはじゃがいものお味噌汁が好きだよ。白石さんは?』

白『好きな具は、だしと味噌によって変わるな』

ぴ『ぴ? だし? 味噌は分かるで、赤味噌、白味噌、合わせ味噌、こうじ味噌とかやろ。ぴちゃん合わせ味噌派〜』

ま『ぴちゃん、もしかして、だしを知らないの?』

ぴ『だから、だしって何のこと? お味噌汁って、味噌をお湯で溶いて、そこに具を入れて煮込むんやろ?』

ま『うわー、見事に残念な作り方や』

白『実際に味噌汁を作ったことはあるのか?』

ぴ『ないで。言ったやん、お味噌汁は買ってきたのにお湯を入れたら出来るもん』

白『やはり知らないか。まず基本からだな』

ぴ『なんや、ちゃんと教えてくれよな』

ま(だから、なんでそんな上からいくんだよ)

白『まず、味噌汁の簡単な作り方だ。はじめに、鍋に水と昆布を入れ火にかける。弱火で20分ほどかけ、沸騰する前に昆布を取り出し、好きな具材を入れる。だしが沸騰し、具材に火が通ったら、ここで一度火を止める。沸騰がおさまったら、味噌を溶き入れる。最後に、煮立たせないように再度火をかける。これが手間も少ない作り方だろう』

ぴ『なんか、いきなりだしが出てきたんやけど。だしっていつ入れたん?』

白『水と昆布を弱火で20分火にかけただろ。これで出来上がったものを昆布だしという』

ぴ『あ〜、昆布だしね。なんか聞いたことあるぞ。もしかして、ラーメン屋さんがスープ作るときのアレもそうか?』

白『ラーメンだと、煮干しとか、鶏ガラとか、野菜とかでだしをとる』

ぴ『あ〜、なるほどね。でもラーメンなら分かるけど、お味噌汁の場合は、お味噌の味と合わさって、クドくなり過ぎるんじゃないの?』

白『味噌自体は香りと少々のコクが出るだけだ。味噌汁のベースは、だしで決まる。だしの種類も、昆布・かつお節・煮干し(いりこ)とかあるぞ』

ぴ『お〜。だしも味噌みたいに色々あるのか〜。ぴちゃんなんも知らずに飲んでたわ』

白『おめでたいやつだ』

ぴ『白石さんほどでもないよ』

ま(調子乗り過ぎると出汁にされるぞ)

ぴ『なんだ、じゃあお味噌汁も組み合わせが色々出来るんだね。昆布だし・赤味噌・じゃがいもとわかめ。みたいなことか』

白『だしを何でとるかは各家庭によるな。それに今だと「だし入り味噌」も売っているから、だしをとるという行為を見ない家庭もあるかもしれない』

ま『実家では、かつお節の「だしパック」みたいなやつを母親が使ってなぁ』

ぴ『お味噌汁作るのに、便利な物もあるんだね』

白『味噌汁は意外と時間と場所を使うからな。ぴちゃんの言う通りで、インスタント味噌汁の方が早いし、味も安定していて、具材も豊富だから、わざわざだしからとらない家庭の方が多いのかもしれない』

ま『共働き家庭が多くなった昨今では、味噌汁一品にそこまで時間を割けませんもんね』

白『しかし、人間が育つ時、何が必要だと思う?』

ぴ『まえくん、お金とちゃうで。守銭奴モード入らんでや』

ま『さすがにこの流れでそれは言わんよ。人間も「ベース」が大事ってことですね』

白『そうだ。いくら、豪勢な具材を使用したところで、基本のだしがとれていなければ味はしない。だしの種類は色々だとしても、基本的なだしのとり方は同じだ。味噌汁も人間も、それぞれ違いはあれど、最初に必要なものは同じで、それは身につけていなければならない。そいつにしっかりした味のベースが無ければ、何を付け足しても、評価されるモノにはなりはしない』

ぴ『見た目が豪華でも、飲んで「はにゃ?」ってなったら残念だもんね』

白『料理の基本は、今日紹介した「だしのとり方」のさらに手前だ。「道具の使い方・手入れの仕方」「食材の選別方法・調理方法・保存方法」「火の取り扱い」などだな。君たち未成年は、保護者や大人と一緒に料理をしなければならない。「いのちをいただき、いのちを育てる」これが基本だ。調理中に自分たちに危険が及んでもいけないし、食べてもらう人に危険が及んでもいけない。また、我々のために犠牲となる全てのいのちに感謝し、そのいのちを育ててくれた方にも感謝する。食材を流通してくれたり、販売してくれたり、検査してくれたりと、あらゆる人の働きで、いのちが育つのだ。だからこそ、料理をしっかり勉強することが大切なのだ。それが、すべてのいのちをベースにして生きるということなのだから』

ぴ『最初に「なんだ、お味噌汁か〜」って言ってごめんなさい』

白『もちろん、自分の好きな物や嫌いな物ができるのは仕方ないことだ。それは生体の個体差によるものだから、頭で分かっていても体が拒否反応を起こすこともあるからな。特に、食物アレルギーについては、しっかり把握しておくことが大切だ。いのちを守ることに変わることはないからな。それが、その人のベースなのだ、大切ないのちをつなごう』

ま『不安だったり、何か思い当たる節があるなら、病院でアレルギーの検査をした方がいいですよね』

ぴ『「子供の時は大丈夫だったけど、最近これ食べると痒くなるんだ〜」ってのとか、環境や成長したことで変わっちゃった可能性もゼロではないからね』

白『家庭科の授業は「衣・食・住」をベースに進めるのだが、これらは基本的生活を行う上での最低限の知識を付与する時間だ。甘く見てると、痛い目に合うぞ』

ぴ『心します』

白『では、味噌汁の調理実習を始める』

ぴ『まずは、だしからだね』

ま『先生、そういえば具材ってどこに?』

白『隣の部屋だ』

ぴ『ぴ! まえくん! めちゃくちゃ食材がある!』

ま『料理番組顔負けの高級食材の品揃え! どうしたんですかコレ?』

白『とあるルートで仕入れた』

ぴ『人死んでないよね?』

ま『コラ! そんなわけないでしょ!』

白『さぁ、どうだろうな』

ま『あの、先生、何ではぐらかすんですか?』

白『フッ、ベースがしっかりしてないやつは嫌いでな』


#3分間の暇つぶし  #ぴちゃんとおはなし  #ぴちゃんと先生  

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