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アイスまんじゅうのことを考える

子どもたちが夏に食べるアイスといえば、ガリガリ君とか、アイスボックスとか、アイスの実とかが定番で、思春期になると、セブンティーンアイスに手を伸ばすようになったり、パピコを一人で食べることがなんだか悔しく思われるようになったりしがちです。そうした悶々とした日々から幾星霜、初めてのアルバイト、そう、こんにゃくいも農家での収穫作業で稼いだお金でハーゲンダッツを買うことで、人間のアイス道(あいすみち)における一定のゴールラインに到達する、というのが、ほとんどの人がまず間違いなく通る道なのではないかと推察します。

しかし、ガキの頃から熱血硬派さんしくんとしてやらせてもらっていたおれとしては、やはりそういう定番からは少し距離を取りたい、食べるアイスでも個性を演出したいという、いがぐり頭の野球部が最大限オシャレをするために眉毛に手を加えるノリで、このような定番のアイス道ルートを取らずに、一貫してアイスまんじゅうを食べていました。おれは突っ張ることが男のたった一つの勲章だとこの胸に信じて生きておりましたから、ちっちゃい自転車で駄菓子屋に行って買うものはアイスまんじゅう、「アイスまんじゅうの柔らかさは女の子のくちびるのそれとだいたい同じ」と信じて食べていた思春期を経て、甲子園で逆転サヨナラ負けをして聖地を去る際に泣きながら袋に詰め込んだのも、またアイスまんじゅうでしたね。すなわち、アイスまんじゅうとはおれにとって元来反骨精神の象徴なのです。デストロイ!

デストロイ!

とまあアイスまんじゅうジョークはさておき、少年時代から何の疑いもなく、花形のアイスを見るとああアイスまんじゅうがあるな、食べちゃおうかな、と思ってパクついていたおれですが、いい大人になって思うのは、冷静になって考えると、アイスまんじゅうってなんなんだ?ということです。

すなわち、ほんのり柔らかいバニラ地のアイスの中につぶあんがみっちりと詰まっているあれを「まんじゅう」と表現するのは無理があるんじゃないか?ということです。いや中にあんこが入ってるのは分かりますよ。おまんじゅうというのはたいていはあんこが入っているものですから。でもあの表面のバニラ、あれをまんじゅうの皮と捉えて本当に良いのだろうかということです。

あとまんじゅうと名乗っておきながらあの形はなんだということです。まんじゅうを5~6回殴って顔変わっちゃってるじゃんもう、夜通しオールいけるか疑問っていうような形をしているじゃないですか。あれはなんなんでしょう。都会の夜風に吹かれて思うのは故郷のこととアイスまんじゅうの謎のことです。

その真相に迫るために、あるいは本当の自分に巡り合うために大学時代のおれは海を渡り、遠くインドの地で研究に励んだわけでありますが、結局答えは見つかりませんでした。本当の自分も見つからなかった。すなわち、バニラをまんじゅうの皮とすることには、花びらみたいな形のアレをまんじゅうとすることに対しては、今でもどこかモヤンとした気持ちを抱いているわけなのであります。そこで、今日はアイスまんじゅうについて思いを馳せたいと思っています。

アイスまんじゅうがあの形状に落ち着いたことを考える際、日本におけるまんじゅうの祖について知る必要があります。ここからはGoogle情報ですが、日本におけるまんじゅうの起源は室町時代。中国で生まれた林浄因という人によるものであるという説が有力ということです。

この人がつくったおまんじゅうというのが、白い皮で蒸した餡を包んだもの、ということで、その系譜を継ぐのが塩瀬総本家のおまんじゅうとのことです。ここで塩瀬総本家のおまんじゅうを見てみましょう。

あっ!白い!

塩瀬総本家のおまんじゅうは、伝統に則って白い皮に餡を詰めたもののようです。なんとなく、アイスまんじゅうと色味が似てきたような気がします。

アイスまんじゅうが、おまんじゅう文化をリスペクトして皮の白さをバニラで表現したと考えると、まあ納得ができます。次に気になるのは、あの形です。花びらのような独特な形をしたアイスまんじゅう、おまんじゅう文化をリスペクトするなら丸形でよくね?と思いますが、なぜあのような形にする必要があったのでしょうか。

ここで、一般にスーパーなどによく流通するアイスまんじゅうのメーカーについて調べてみます。これは、「丸永製菓」という福岡県の製菓会社のようです。福岡県といえば大宰府天満宮、菅原道真のシンボルマークである梅のアノ形を連想させます。言われてみると、あの独特な花形は梅の花の形のようにも見えてきます。


東大に受かりますように!


アイスまんじゅう

また、福岡県の県花は梅。このことから、福岡県をルーツに持つ丸永製菓のアイスまんじゅうが、福岡県のシンボルともいえる梅を模した形になっているということにも頷けます。おれはインドではなくて福岡県に渡るべきだったのかもしれません。

えー以上アイスまんじゅうについて調べた結果ですが、こんな雑な根拠でなんとなく納得し始めている自分がいます。なんなら冷凍庫の中にはアイスまんじゅう入ってるから、2個も入ってるから、さっさと切り上げて食べたいんですよ。でもアイスは一日一本まで。おれは知っている。アイスを一日に二本も食べたらお腹を壊してしまうことをね!どんなに暑くて寝苦しい夜でも、アイスは一日に一本まで。また、寝るときはちゃんとおへそまで布団をかけて眠ることがたいせつです。これは時の始めからの世界の約束です。だれかに優しくできなかった日も、嘘をついちゃった日も、アイスは一日一本まで。そしてきちんとおへそまで布団をかければ、明日はまたいつもの僕なのであります。

つまりアイスまんじゅうのまんじゅうらしさがどうとか形がどうとか、アイスまんじゅうについてあれこれ御託を並べ倒したところでアイスまんじゅうを食べればすべて分かることなのです。フリッパーズギターも言ってました、「そしてすべて分かるはず」と。あれアイスまんじゅう食った後の歌ですからね。オザケン3秒でアイスまんじゅう食ってますから。幾千万の言葉を紡ぐよりもはるかに雄弁なのが、アイスまんじゅうの味なのでございます。

なんかおれは色んな方向に対してすごく申し訳ないことをしている気持ちがする。一旦そんな感じです。

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