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【自意識オーバードライブ】モテを意識したオセロ

最近オセロにハマっているという話をしたんですけれども、引き続き暇さえあればオセロばかりやっております。おれは「オセロクエスト」というアプリを使っているわけですけれど、これはオンライン上で全国に跋扈するオセロ・ファンたちと対戦ができるというものでして、時間帯によって強さにばらつきがあるといいますか、夕方帯は割合勝てるほうなのですが、深夜3時をまわったあたりになると、ちょっとどうかしてるくらい強い人たちで溢れかえるのです。この話も以前したと思いますがね。

オンライン対戦なので、当然顔の見えない・知らないユーザーと対戦をするわけなんですが、基本的には淡々と打ち進めていくので、なんだかリアルの盤面で感じるようなライヴ感というものがなかなか少ない。ただ、そんな中にもやはり人間的な一面といいますか、ああおれは人間と対峙しているんだなと思う場面も多々あります。

このゲームは持ち時間が一人5分与えられているんですが、オセロ慣れしている人が多いもので序盤はもうほぼノータイムで打ち合います。そして中盤あたりから少しずつ持ち時間を使いながらじっくりじっくり打っていく、というのがまあだいたいの感じなんですが、相手の手番でじっくり打ち始める瞬間というか、さっきまでノータイムで打ってきた人が、今の手に10秒ほど使っている!と思考の長さを実感できるあたりに温かみではないですが、人間味を感じます。

それから、これはあまり良いことではないんですが、大方勝敗が決したとき、相手が接続を切って撤退してしまうことがあるのです。つまり、だいたいおれの勝ちがほぼ見えている段になると、アプリを強制終了してしまうということなんですが、画面の右上には「投了」すなわち降参ボタンがあるにも関わらずそのような対応をする輩がいる。すると、1分ほど「再接続待ち」という画面になってしまい、相手を待たなくてはいけなくなります。当然、戻ってくるはずもありませんから、接続不良により不戦勝という形になるわけなのですが、勝ち方としてあまり後味がよろしくないと思う一方で、インターネットの波の向こう側に確かにいる生身の人間をありありと感じることができるということで、当然良いことではないんですけど、ああ人間と勝負をしていたのだな、と感じる瞬間です。

このアプリで対戦するユーザーのほとんどは「Othello1234」とか、「SevenStar2024」とか無機質なユーザーネーム、時には「Othello_BOT」のようなBOTまで紛れ込んでいるという空間になっております。当然このようなネームからは画面の向こう側にいる人の属性、年代とか、性別とか、また、どのような見た目をしているのかさえも分かりません。ただ、その中にも時折「Kaori0728」とか「marichandesu」というようないかにも女性らしいネームが見受けられることがあります。

さて、おれという人間は少々自意識過剰な面があるといいますか、基本的には素直でええ子なんやけど時折その自意識があらぬ方向にオーバードライブしてしまう傾向があるということは以前よりたびたび言及しております。

「おれごときが」「おれみたいなモンは」というネガティブな気持ちを抱えている分際で一丁前におしゃれ屋さんに行きたがり、ゴチャゴチャうるさいゴタクを並べてから満を持して馳せ参じる様子(※1)や、学生時代に異性への立ち振る舞い方を身に着けるハウツー本として『伊勢物語』を買い求めた結果、モテにはつながらなかったけど古文の成績がメキメキ向上した話(※2)など、枚挙に暇がありません。

(※1)

(※2)

「おれごときが」等と考えている癖に人から良く見られたい、言葉を選ばず申し上げると「モテたい」という気持ちを常に抱え、永久不滅の思春期マインドを背負って生きている僕ことおれですが、永久不滅なんて言葉プリクラの落書きかセゾンカードでしか使われませんよね。

なぜこのような話をしているかというと、先述のいかにも女性的な名前のユーザーと対戦をすることになった際、この人に良く見られたい、つまりただ勝つだけでなく「魅せる勝ち方」をしたい、という欲望がムクムクと湧き上がってくるということです。

あの、女性がよく仰る「頭のいい人が好き」っていう言葉がありますよね。あれは「オセロが強い人」という解釈で疑う余地はないかと思うんですけどね!頭の良い人、つまり自分の知らない知識や世界を持っている人、それを使いこなして大きな問題解決に取り組むことができる人、またはそういった新たな世界を衒いなく見せてくれる人に惹かれるわけでございましょう?

つまりそれって、オセロが強い人…ってコト!というわけで、おれは普段では打たないような奇抜な手を打ったりもしますよ。石の白と黒とをうまいこと使って盤面に一輪のバラの花を咲かせるなんて芸当だってやりたくなりますよね。なんか問題ありますか!?

そうやって粋な勝ち方をするとおれのことを好きになってくれるかもしれない、「あなたは頭の良い人だ」なんつってお食事に誘われるかもしれませんから?まあオセロクエストにはそういった機能はないのですが?それはそれとして接続切りを一手ごと小刻みに5回するのは「ア・イ・シ・テ・ル」のサインな可能性もゼロではありませんから?そんな風につい自意識がオーバードライブしてしまいます。

先日のことです。同じく仕事をしている40代のおじさんと雑談をしているとき、最近オセロにハマってるんですよ~という話をしたところ、おじさんもその昔、Yahoo!のオセロでレート3000オーバーの猛者だったという話をされました。このレートがいかほどのものか、おれにはちょっとよくわからなかったのですがものすごい自信です。これは勝ちたい。絶対に勝ちたい。勝っておじさんの自信をこそぎ取りたいという気持ちが湧きたってまいります。

それで、ぜひ一戦交えようということで仕事終わりに一局差すことになりました。前回にも申し上げましたがオセロの醍醐味が花開く瞬間は定石から外れる瞬間ですので、どこで定石を外した進行にシフトするかの駆け引きが楽しみの一つです。勝ちたい衝動に駆られていたおれは、早々に定石から外れる大胆な戦法を取ることにしました。おじさんの思考時間が明らかに長くなっていくのを感じます。考えているな、しめしめ…と思うわけなのですが、大胆な戦法と取るということは、それだけ隙も多くなります。その隙を寸分の狂いなく打っていくおじさん。打たれたくない場所に次々と打ち込まれます。これはたまりません。

その時、ふと今まで感じたことのない気持ちを感じました。それは怒りの感情です。オンライン対戦で戦っているときは嫌なところに打たれても「そうきたか!」と、「打って反省、打たれて感謝」といった武道の精神で取り組むことができたのですが、生身の人間をリアルに目の前にすると、嫌なところに打ち込まれたときになぜそこに打つのか、打たれたくないところに打てるのかといった気持ち、つまり「性格悪~~~!!!」という気持ちを感じたのです!

当然、勝負はおれの負けです。おじさんは誇らしげに「いや~さんしちゃんも強かったね!」とか言ってます。うるせえ聞きたくねえ!もう一回勝負じゃい!とリベンジを図るのですが、またも返り討ちに。すこしおじさんのことを嫌いになりながら帰路についたということです。

そこでおれは感じたわけです。

「もしかしてオセロ強い人って性格悪い・・・?」

自意識がオーバードライブし、頭の良い人というアピールがしたくて奇抜な勝ち方をしてきたこのわたし。しかし、ひょっとすると相手には「性格の悪い勝ち方をするヤツ」などと思われているのではないか?これはいけません!モテない男のトップ3は「性格が悪い」「息が臭い」「鳥をエアガンで撃つのが趣味」ですから逆効果です。そんな馬鹿な。


Yahoo!知恵袋

明確に否定してくれよ!そんな感じです。


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